【精神症状,消化器症状などの非運動症状に対する効果が期待できる】
パーキンソン病(PD)に対する漢方薬の役割として,非運動症状に対する効果が期待できる。
PDに伴う幻覚等の精神症状は頻度の高い症状であるが,抑肝散が時に有効である。2014年の多施設臨床試験の結果では,抑肝散を投与した25例のPD患者で運動症状の悪化を認めず,精神症状の評価であるNPIスコアは14.7から8.8と有意に改善した1)。
PDでの胃排出能低下はL-ドパの吸収を遅延させ運動症状を悪化させる。これに対しては六君子湯が推奨される。PD患者20例に対する六君子湯の3カ月連続投与での検討では,67%の症例で改善を認めている2)。
排便障害もPDにおける代表的な非運動症状である。多系統萎縮症およびPDの計10症例に対して大建中湯を用いた報告では,大建中湯は大腸通過時間を短縮させることが示された3)。また,麻子仁丸でもPD患者の便秘に対する報告があり,便秘のあるPD患者23例に対する1カ月後の評価では,有効率は78.8%であった4)。
このように,漢方薬はPDの支持療法の一翼を担う可能性がある。
【文献】
1) Hatano T, et al:J Neural Transm(Vienna). 2014; 121(3):275-81.
2) Doi H, et al:Eur Neurol. 2014;71(3-4):193-5.
3) Sakakibara R, et al:Mov Disord. 2005;20(2): 261-2.
4) 中江啓晴, 他:日東洋医誌. 2016;67(2):131-6.
【解説】
馬場孝輔,望月秀樹* 大阪大学神経内科 *教授