浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)

 浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)は、短時間強雨による浸水害発生の危険度の高まりを、地図上で1km四方の領域ごとに5段階で色分けして示す情報です。常時10分毎に更新しており、雨が強まってきたときや大雨警報(浸水害)等が発表されたときに、どこで危険度が高まっているのかを把握することができます。

「表面雨量指数」を用いた浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)

 気象庁では、短時間強雨による浸水害リスクの高まりを把握するため「表面雨量指数」を開発しました。降った雨が地中に浸み込みやすい山地や水はけのよい傾斜地では、雨水が地表面に溜まりにくいという特徴がある一方、地表面の多くがアスファルトで覆われている都市部では、雨水が地中に浸み込みにくく地表面に溜まりやすいという特徴があります。

 表面雨量指数は、こうした地面の被覆状況や地質、地形勾配など、その土地がもつ雨水の溜まりやすさの特徴を考慮して、降った雨が地表面にどれだけ溜まっているかを、タンクモデルを用いて数値化したものです。

 ただし、表面雨量指数は、降った雪が積雪として地表に蓄えられる過程やこれが融けて地表面に溜まったり地中に浸み込む過程は考慮していないため、降雪時・融雪時は浸水害リスクの高まりを正確に表現できていない場合があります。

 表面雨量指数は、値が大きいほど浸水害リスクが高まることを示す相対的な指標であり、重大な浸水害のおそれがあるかどうか等を判断するには、これだけでは十分ではありません。

 そこで、過去の浸水害発生時の表面雨量指数を約30年分にわたって網羅的に調査することで、「表面雨量指数がこの数値を超えると重大な浸水害がいつ発生してもおかしくない」という数値を大雨警報(浸水害)の基準として設定するなど、危険度を段階的に判断するための基準を設定しています。

 「浸水キキクル」(大雨警報(浸水害)の危険度分布)は、表面雨量指数の実況値や1時間先までの予測値を用いて5段階に色分け表示しています。

 浸水害発生に深く関係する下水道や排水ポンプ等のインフラの整備状況の違いは、浸水害の頻度や規模として現れますので、インフラ整備後の浸水害発生履歴データに基づき基準を設定することで、これらの違いも一定程度反映することができます。最新の浸水害発生履歴データを用いて基準の見直しを定期的に実施し、的確な大雨警報(浸水害)・大雨注意報の発表や「浸水キキクル」(大雨警報(浸水害)の危険度分布)の提供に努めています。

浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)の利活用

 住宅の地下室や道路のアンダーパスでは、雨水の溜まりうる体積が小さいため、浸水や冠水の深さが、周囲より早い段階から短時間のうちに急激に上昇する傾向があり、命を奪われる危険性があります。まず第一に、大雨の時にはこれらの場所に近づかないようにすることが大切です。

 また、周囲より低い場所にある家屋などでは、短時間強雨による床上浸水や床下浸水などの浸水害が発生する危険性があります。 こうした場合に対処するため、次のように、自治体の避難情報とともに「浸水キキクル」(大雨警報(浸水害)の危険度分布)も参考に、早めの安全確保行動を心がけることが大切です。

  • 自治体から避難指示等が発令された場合下水道管理者から氾濫危険情報等が発表された場合には、浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)に関わらず、速やかに避難行動をとってください。
  • 「浸水キキクル」(大雨警報(浸水害)の危険度分布)において「注意」(黄)が出現した場合には、周囲より低い場所で側溝や下水が溢れて道路が冠水し、住宅の地下室や道路のアンダーパスに水が流れ込むおそれがあります。各自の判断で、道路のアンダーパスには近づかないように注意し、住宅の地下室にいる人は地上に移動することが大変重要です。
  • 「警戒」(赤)が出現した場合には、側溝や下水が溢れて道路がいつ冠水してもおかしくない状況です。周囲より低い場所にある家屋などでは、屋内の浸水が及ばない階に移動するなどの安全確保行動をいつでもとることができるように準備をしておき、早めの行動を心がけてください。
  • さらに、「危険」(紫)が出現した場合は、重大な浸水害がいつ発生してもおかしくない非常に危険な状況です。周囲の状況を確認し、すでに浸水が発生している場合には、各自の判断で、屋内の浸水が及ばない階に移動してください。
  • 「災害切迫」(黒)が出現した場合、表面雨量指数の実況値が大雨特別警報(浸水害)の基準値に到達したことを示します。重大な浸水害が切迫しているか、すでに発生している可能性が高い状況です。浸水で命に危険が及ぶおそれがある場所大雨警報(浸水害)の危険度分布の色に応じた住民等の行動の例

浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)の利用上の留意点

  • 建物がなく定住者がいないため家屋の浸水害が発生しない領域では、大雨警報(浸水害)や大雨特別警報(浸水害)の判断基準は設定しておりませんので、これらを意味する「警戒」(赤)や「危険」(紫)、「災害切迫」(黒)の表示となることはありません。河川、建物、道路、農地のいずれも存在しない領域では、大雨注意報や大雨警報(浸水害)、大雨特別警報(浸水害)の判断基準は設定しておりませんので、これらを意味する「注意」(黄)や「警戒」(赤)、「危険」(紫)、「災害切迫」(黒)の表示となることはありません。これらのような場所で活動をする場合は、「雨雲の動き」等で最新の状況を確認するとともに、危険な場所から離れることが重要です。
  • 大雨特別警報(浸水害)の発表状況と浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)は、次の理由により整合しない場合があります。
    • 大雨特別警報(浸水害)は、過去の多大な被害をもたらした現象に相当する表面雨量指数の基準値に到達する1km格子が概ね30個以上まとまって出現すると予想され、かつ、激しい雨がさらに降り続くと予想される場合に発表します。
    • 浸水キキクル(大雨警報(浸水害)の危険度分布)は、過去の多大な被害をもたらした現象に相当する表面雨量指数の基準値に実況値が到達したときに「災害切迫」(黒)を表示します。
  • 防災対応の判断に役立てていただくために、危険度が頻繁に変化することがないよう、過去30分間の最大危険度を表示します。