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【地球コラム】かみ合わぬ隣国~韓国の「人権攻勢」と「日本軽視」~

長年の努力「ちゃぶ台返し」

 日韓関係が険悪化している。韓国最高裁で日本企業に元徴用工への賠償を命じる判決が確定し、韓国政府は日韓合意に基づく慰安婦財団の解散を決定。追い打ちをかけるように韓国艦による自衛隊機へのレーダー照射問題も起きた。韓国はいったいどうなってしまったのか。韓国政府の対日姿勢と今後の出方、日本が進むべき道について考えてみたい。(時事通信社外信部編集委員・前ソウル支局長 吉田健一)

◇ ◇ ◇

 これらの中でも最も深刻なのが徴用工問題だ。韓国最高裁で昨年10月30日、戦時中に日本に徴用された韓国人4人の個人請求権を認め、新日鉄住金に賠償を命じる判決が確定した。

 1965年の日韓国交正常化の際に結ばれた請求権協定では、日本が経済協力資金を支払い、両国と国民間の請求権問題が「完全かつ最終的に解決された」ことを明記している。判決は両国関係の根幹を否定する内容だ。

 日本政府は猛反発し、韓国政府に両国関係を損なわないよう対応を要求。韓国政府は検討に着手したものの、「日本政府が過剰に反応している」(外務省報道官)と批判を強め、具体的な対応策をなかなか示さなかった。そうこうしている間、韓国の裁判所は国内の新日鉄住金の資産を差し押さえた。最高裁判決に沿い、別の日本企業が敗訴する判決も相次いでいる。

 日本が韓国を併合し、支配したのは紛れもない歴史的事実だ。しかし戦後、国交正常化に向け、日韓が十数年間の長い時間をかけて知恵を絞り合い、請求権協定を結び、請求権問題を解決させたのも、また歴史的事実なのだ。

 これまでも日韓は歴史問題をめぐって対立することがあったが、元徴用工の請求権問題は韓国政府も「解決済み」との見解を貫いてきた。それでは韓国政府はなぜ日韓の長年の努力を「ちゃぶ台返し」する判決に沈黙しているのか。

 背景には日本に対する韓国の姿勢の変化があると考えられる。それがよく出ているのが左派系新聞・ハンギョレのパク・ビョンス論説委員のコラムだ。一部を引用する。

 「韓日間の65年体制を可能にした環境と条件は、とっくに変わった。普遍的人権意識が高まり、過去の日帝による野蛮な暴力は、普遍的人権の脈絡で再び照明を当てられている。一方、両国を緊密に縛ってきた経済・安保協力は、韓国の経済成長と南北関係改善などにより、その重要性が大幅に低下した」

 つまり①日本との歴史問題は、請求権協定などの約束よりも韓国、そして国際的な現在の価値判断を優先させる②経済的な格差が縮まり、安保協力の必要性も低下した日本との関係は重視しない-という姿勢だ。

 こうした考え方は左派・右派を問わず韓国の政治家や知識人に広く見られる。ただ、一般的には、日米韓の安保協力に重きを置く右派は「ソフト」、南北融和路線の左派が「ハード」路線と言える。

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