海洋研究開発機構

9)スマトラ島沖地震・津波Q&A


Q1. 普通の波と津波は違うのですか?なぜ何km も海岸から離れている陸地でも被害が出るのですか?

A1. 台風などで発生する高波は、海のごく表面が運動するものです。従ってその波長は、数m-十m程度です。一方津波は、数十km-数百kmにおよぶ海底の急激な上下変動によって海底から海面までの海水全体が揺らされ、大きな潮の流れとなって押し寄せてくるものです。津波の波長は、断層の長さによっても異なりますが、だいたい数十kmです。従って、台風などの気象の影響によって生ずる波とは、持っているエネルギーが全く異なります。



Q2. 地震が起こると必ず津波が発生するのですか?

A2. 必ず起こるわけではありません。海域に震源があり、マグニチュードが大体7以上で、しかも震源が比較的浅いといった条件が重なった場合に、津波が起こる可能性が高くなります。また地震断層が横方向よりも上下方向にずれる場合に、津波は起こりやすいです。



Q3. 地震以外でも津波は発生しますか?

A3. 地震以外でも、火山体の崩壊などによって、過去に大きな津波が起こった記録があります。例えば、1792年に雲仙島原の眉山が崩壊して土砂が大量に有明海に流れ込み、対岸の熊本市付近が津波におそわれたことは、日本の歴史上大変有名です。また、北海道駒ヶ岳、渡島大島などでも山体崩壊によって津波が発生し、大きな被害をもたらしました。有史以前では、ハワイ諸島のオアフ島やモロカイ島で、100-200万年前に非常に大規模な山体崩壊が起こり、数十m にも及ぶ津波を引き起こしたことが、海底地形調査などから明らかになりました。



Q4. 津波の速さはどのくらいでしょうか?

A4. 水深の大きい大洋では一般にジェット機と同じ速度(800-1000km/h)で伝搬します。但し、水深が浅くなるとその速度は減速していきます。また今回の津波では海岸を越えた陸地でも、自動車の速度(40-60km/h)で進んだことが目撃されています。



Q5. 日本でも今回のスマトラ島沖地震と同様の地震、津波は起こりますか?

A5. 「海溝型地震」と呼ばれる今回のスマトラ島沖地震と同様のメカニズムで起こる地震は、宮城県沖でM7.5以上の地震が高い確率で起こるとされています。次いで東海、東南海、南海などでも大きな地震が起こる確率が高いとされています。従って、今回のスマトラ島沖地震と同様のメカニズムの海溝型地震、津波被害が起こる可能性があります。



Q6. 海溝型地震とは何ですか?

A6.海溝では海洋プレートが陸側の大陸プレートの下に潜り込んでいます。海溝の地下深部では、もぐり込む海洋プレートに引きずられ、上盤の大陸プレートの端は大きく曲げられます。しかし、この曲げが強度の限界まで進むと、大陸プレートは逆に反発し、プレートの境界面に沿って跳ね上がります。この時に大きな地震が起こると考えられます。 このように海洋プレートがもぐり込み、上盤側のプレートの端を引きずりこみ、それが反発して大きく変形するときにできる地震を「プレート境界地震」もしくは「海溝型地震」と呼んでいます。「海溝型地震」の震源域は一般に海域にあるため、海底地形が大きく変化し、しばしば津波を引き起こします。今回のスマトラ島沖地震は、このような「海溝型地震」でした。



Q7. 今回の津波を引き起こしたスマトラ島沖地震の震源は海の中のようですが、これまでの調査でどのような事が分かっているのでしょうか?

A7. 今回のスマトラ島沖地震の震源周辺の海域は、海賊が頻繁に現れる治安の極めて悪い海域で、調査はほとんど行われていません。JAMSTECでは2002年度に、今回の震源から南東に1000km程度離れた、同じスンダ海溝沿いの海域で調査を行いました。その調査結果の一部を本ホームページ内で公開しています。



Q8. どうして今回の津波は東西へ伝わって、南北へは広がらなかったのでしょうか?バングラデシュなどベンガル湾北部での被害が比較的少ないのはなぜでしょうか?

A8. これは本ホームページの中で説明していますので、ご参照ください。


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