飯森盛良のふきカエ考古学

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今度はベン・スティラー『LIFE!』の番だぜ!ザ・シネマ新録吹き替え計画、この場にて堂々発表!の巻

何を隠そう、ベン・スティラーの『LIFE!』ってワタクシ、商売抜きで大っ好きな映画なんですよねぇ。

飯森盛良のふきカエ考古学

主役ベン・スティラーは、とある会社で、わりかし目立たない仕事を長年やってきた42歳の男。しかしその企業がIT化の波で人件費削減の大量解雇を強行することに。リストラされてしまう主人公だが、ある職人が作った自称最高傑作という重要製品が、最後の最後になっても届かない。それを受領し検品し管理し製造部門に納品することが彼の責任なのだ。行方不明になった傑作製品はどこへ行ったのか?地味で平凡で臆病な彼は、その道ウン十年のプロの意地をかけ、行方不明製品捜索のため、人生初の大冒険に飛び込むことに。

あえて、どんな会社でどんな仕事なのかは明記しないでおきましょう。これは誰の身にも起こりうる物語ですので。地味で平凡で臆病って、それも我々のことでしょ?

2013年(日本公開は翌年)の映画ですが、この頃はまだ、本気でAIに仕事奪われるかも、なんてSFじゃあるまいし全然思えませんでしたね。去年危機感一気に増大した気がしません?あと10年で消える職業なんてのがリスト化されて報道され、じゃあその人たち生活どうすんの!?→そうだベーシックインカムだ!! などと、SF的な話が急に現実味を持って議論されるようになった昨年でした。こいつはマジでヤバそうだ!

目立たない仕事を真面目にコツコツして慎ましい生活を営んできた人が、ある日突然クビになる、その仕事、人件費の無駄だからと。お前の代わりは機械でいいんだよと。それは他人事では全くない!という寒い時代に、わずか本作公開から5年で突入してしまいました。幸か不幸か(不幸だな)5年前より今年見ることに意義のある作品なのです。

これ、最初に見た時ものすごく感動して、周囲に「良いぞぉ!?」とボランティア宣伝して回っていたところ、後日お誕生日プレゼントでブルーレイもらっちゃったんですけど、実はワタクシ、再見してないのですよ(家族の者が美味しく頂きました)。

というのも、本気で惚れた映画はワタクシ、あえて見返さないように我慢しているのです。10年間は大切にとっておこうと。じゃないと早々に“味のしなくなったガム”状態になっちゃうのでね。映画って意外と消耗品ですから。子供の頃100回ぐらい見れてたのは、何だったんでしょね?あれ。

『サニー 永遠の仲間たち』も人生ベスト級の1本なので大事にとっておいたのですが、これは最近ウチの娘たちがハマり(小学校低学年とか幼稚園とかでも面白いらしい)、週一ぐらいのペースでふきカエ版(イムナミ高橋理恵子&壹岐紹未、ハッチュナ林佳代子&石田嘉代)で見まくっててBGV状態なせいで、恐れていた通り見事に味がしなくなっちゃいました。もったいねえなぁこんな見方…。

ちなみにワタクシが身を置くCS業界においても、視聴率って超大事なのですけれど、CSって映画を何度も再放送するじゃないですか。で一般論として、再放送を繰り返すたんびに、見事に“味のしなくなったガム”効果が出るんですな。つまり数字が下がってく!ま、当然っちゃ当然ですが。

しかしこのたび、仕事で、もう1本の人生ベスト級映画『LIFE!』も、この先50日間ぐらいの前に最低4~5回は見直さねばならなくなりそうなのです。これも1ヶ月後ぐらいにはワタクシにとっては“味のしなくなったガム”になってしまうことでしょう。少々寂しくはあります。しかし、今回はそうする価値がある!

オレがやらねば誰がやる!?(えっキャシャーン?)

そう、新録ふきカエ版、また制作するのです!!

これ、昨年『プロメテウス』新録を作った時と状況が似ていて、劇場公開時にタレントさんのふきカエ版が作られているのですな。『LIFE!』はベン・スティラーがナイナイ岡村さんでした。で当時、岡村さんがプロモーションで大活躍されたのです。なんとベン・スティラー来日時にジャパンプレミアで2人一緒に登壇し、ベン・スティラーその人から「次回作ふきカエも頼んだ!」とお墨付きをもらってガッチリ握手、という大成果を上げたのでした。これまだYouTubeとかに上がってますので、各自「岡村 ベン・スティラー」でググってみてください。

普通にやってたのでは『LIFE!』を知らない、ベン・スティラーもわからない、滅多に映画なんて見ない、という人(人口の圧倒的大多数)が、間違いなく相当な数、これのおかげで知った、そのうちの一部はさらに映画館まで実際に足を運んだはずです。

プロモーションとしては文句なしに大成功ですわコレ!ワタクシもその係ではないにせよプロモーションは仕事でわりかしイッチョ噛みする立場ですが、これが実現できたら超大成功!

しか~し!ちょっと待ったーッ!ワタクシの中にはもう1人の、仕事抜きの、ふきカエ馬鹿一代としての困った人格も存在しているのである。

そして、コメディのベン・スティラーの時はナイナイ岡村さんでいいんだけれど、上質な人間ドラマ『LIFE!』は、これは賢雄さんバージョンも見てみたいなぁ、と、またしてもワガママを不意に思いついてしまったのであります。まぁ、自分の中では10年封印しようと思ってた作品ですが、いざ放送するとなったら是非ともそれで放送したい!

ってことで、作ろうじゃないですか!! 堀内賢雄さんバージョンを!

プロモーションはもういいじゃないですか。これがいかに素晴らしい、上質な、感動的な、そして雇用の不安定な(完全雇用が実現したとかしないとか言われてもねぇ…)プレカリアートな今のご時世きわめてタイムリーな必見作であるかは、映画にちょっとでも関心のある人なら、すでによおくご存知でしょう。そして、ワタクシの商売は洋画専門チャンネルということで、“映画にちょっとでも関心のある人”だけをターゲットにしてりゃいいのですよ。これは配給会社さんや民放さんなんかからみたらズルいと見えるだろうなぁ。あちらさんは、広くあまねく世間一般全員に向かって宣伝しないといけないので。

放送は2月24日の日曜よる9時。まだ賢雄さん以外のキャストも決まってない状況ではありますが、映画にちょっとでも関心のある皆さんへのお年玉として、この場を借りて発表させていただきました。続報はこのサイト、ウチの公式などで五月雨式に出していきますね。

最後にワタクシからのお願いです。これは是非とも見てください!なんだったら今回のウチじゃなく、字幕でもレンタルでも配信でもいいので、この映画は見てください。いつもだったら「見たい人だけ見てね」でそれ以上ゴリ押しはしない主義です(ゴリ押しは良くないです)。映画なんて個人の好き不好きなんで。でも、これだけは見てください!そして不幸にして万が一にも、仕事をAIに奪われ解雇される日がやってきたなら、その時にはこの映画を思い出していただきたい。あなたのしてきた仕事は無駄ではないと確信できる映画なので。

AIが絶品料理を作った。AIがベストセラー小説や大ヒット曲・映画を作った。物言わぬ無人運転車に送ってもらった。…そこには感動や感謝なんて、あるんでしょうかねぇ。人は、客を感動させる喜びや、やり甲斐や達成感といった古き良き感情を、いつまで保っていけるのか…。その時、人は何のために生きるのか…。いやはや、寒い時代だとは思わんか…。

© 2013 Twentieth Century Fox Film Corporation. All rights reserved.

ザ・シネマ
『(吹)LIFE!/ライフ[ザ・シネマ新録版]』
⇒番組ホームページ
放送予定日:
7/08(月)夜11:45~
7/21(日)昼12時~、深夜4時~
7/26(金)朝8:30~、深夜12:30~

放送済み:
4/08(月)昼1時~
4/17(水)夜11時~
4/29(月)夜7時~
2/24(日)夜9時~
2/28(木)朝10:45~

⇒『LIFE!/ライフ [ザ・シネマ新録版]』演出家・清水洋史さん&翻訳家・埜畑みづきさん&主人公を吹替えした堀内賢雄さんのインタビュー!
⇒清水洋史さん&埜畑みづきさんのお話しをさらに楽しみたい方はインタビュー番外編もどうぞ!
⇒『LIFE!/ライフ [ザ・シネマ新録版]』スタッフ・キャスト一覧