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冤罪の根絶へ 再審法の見直しを急げ

2022年8月1日 05時05分 (8月1日 05時05分更新)
 冤罪(えんざい)は国家の犯罪だ。近年「再審無罪」判決が相次ぐ一方、再審開始はいまだ容易に認められない「開かずの扉」でもある。問題の多い「再審法」を大幅に見直し、人権侵害を防がねばならない。
 再審法とは刑事訴訟法にある再審規定を指す。五百超の条文がある同法のうち、再審規定はわずか十九にとどまり、七十年以上も改正されていない。あまりに不十分な規定ゆえに、再審開始の大きな妨げになっている。
 例えば今年六月に鹿児島地裁が再審開始を認めなかった「大崎事件」。一九七九年、鹿児島県大崎町で男性の遺体が発見され、殺人罪などで服役した原口アヤ子さんが無実を訴えている事件である。
 過去に弁護側が証拠開示を求めても裁判所は門前払いにしたり、裁判所が開示を勧告しても検察側は応じなかったりした。再審法には証拠開示の定めがなく、裁判所の勧告があっても検察側に応じる義務がないためだ。
 仮に裁判所が再審を認めても検察側が「抗告」すれば、再審の裁判は開かないままとなる。
 担当する裁判官の「さじ加減」が働く余地が大きいことから、「再審格差」として問題視される。同時に、検察の権限が強過ぎることも意味する。
 通常の刑事裁判とは違い、裁判で最も大事な手続きの公正さが制度的に担保されていないともいえる。いくら無実を訴えても、「法」でなく、「人」の裁量で再審の扉の開閉が決まりかねない。
 全面的な証拠開示の制度化と、再審開始決定に対する検察による不服申し立ての禁止については、優先的に実現する必要がある。
 冤罪被害者は高齢に達していることも多く、速やかな救済は時間との勝負でもある。
 東京電力女性社員殺害事件や足利事件、東住吉事件、湖東病院事件=写真=など、相次ぐ「再審無罪」の判決は、無実にもかかわらず罪を背負い、服役する人々が今も存在することをうかがわせる。
 適正手続きの保障を最優先にして再審法を見直さない限り、忌むべき冤罪は根絶できない。速やかな検討を求める。

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