スウェーデンのNATO加盟、トルコが支持 NATO事務総長が発表
スウェーデンの北大西洋条約機構(NATO)加盟について、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領が支持に同意したと、NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長が10日、発表した。
トルコとスウェーデンの両首脳はこの日、リトアニアの首都ヴィリニュスで会談した。同地では11日からNATO首脳会議が開かれる。
会談終了後、ストルテンベルグ氏は記者会見し、スウェーデンの加盟申請をエルドアン氏がトルコ議会に諮り、「批准を確実にする」だろうと述べた。
ストルテンベルグ氏はこの進展を「歴史的な一歩」と評価。ただ、スウェーデンの加盟の「明確な日程」については、トルコの議会次第であり、提示できないと強調した。
スウェーデンのウルフ・クリステション首相は「とても幸せだ。スウェーデンにとって良い日だ」とコメントした。
トルコはこれまで数カ月間、スウェーデンの加盟申請に難色を示していた。トルコがテロ組織に指定するクルド人武装勢力を受け入れているとして、スウェーデンを非難してきた。
トルコはNATO加盟国として、新規加盟に関して拒否権をもっている。
スウェーデンは隣国フィンランドと共に、長く軍事的中立を保ってきた。しかし、ロシアがウクライナに本格侵攻を開始して数カ月後の昨年5月、NATOに加盟する意向を表明。フィンランドは今年4月に正式加盟を果たした。
英米独などが歓迎
アメリカのジョー・バイデン大統領は、エルドアン氏が「迅速な批准」を進めるとしたことを歓迎すると述べた。
米政府は声明で、「私はエルドアン大統領とトルコと共に、欧州大西洋地域における防衛と抑止力を強化させる用意がある。クリステション首相とスウェーデンをNATOの32番目の同盟国として迎え入れるのを心待ちにしている」とした。
ドイツのアンナレーナ・ベアボック外相は、「32カ国となることで、私たちは共に、より安全だ」とツイート。イギリスのリシ・スーナク首相も、スウェーデンの加盟が「私たちすべてを、さらに安全にする」だろうと述べた。
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ストルテンベルグ氏は、トルコとスウェーデンの双方が「トルコの正当な安全保障上の懸念」に対処してきたと説明。スウェーデンについては、憲法と法律を改正し、クルド人武装組織「クルド労働者党」(PKK)(トルコでは活動禁止)への対テロ作戦を拡大し、トルコへの武器輸出を再開したと述べた。
スウェーデンの加盟申請は、トルコとハンガリーだけが、NATO加盟国でまだ国内批准をしていない。
ストルテンベルグ氏は、ハンガリーの反対について尋ねられると、「ハンガリーは最後に批准する国にはならないと明言している」、「問題は解決されると思う」と述べた。
トルコのEU加盟との関係
エルドアン氏はこの日、スウェーデンのNATO加盟への支持と、凍結されているトルコの欧州連合(EU)加盟交渉の再開を、関連付けているようにもみえた。
これに対しEU当局は、それらは異なる二つの問題だとして、即座にエルドアン氏の求めをはねつけた。
しかし、NATOはその後の声明で、スウェーデンが「トルコのEU加盟プロセスを再び活性化させる」努力を積極的に支援すると説明。これには「EUとトルコの関税同盟の近代化と査証(ビザ)の自由化」が含まれるとした。
トルコは1987年に最初のEU加盟申請をした。だが、エルドアン政権になって権威主義の傾向を強めており、加盟プロセスは停滞した。
そうしたなか、ロシアがウクライナを侵攻すると、エルドアン氏はロシア政府に影響力をもつNATO指導者というユニークな役割を果たすようになった。
昨年には、ウクライナによる自国港からの農産物輸出を可能にした「黒海穀物イニシアティブ」を仲介した。
ロシアがたびたびこの枠組みからの離脱をちらつかせるなか、トルコはその存続に努めている。
一方で、トルコはウクライナに武装無人機(ドローン)を提供しており、ロシア政府の怒りも買っている。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は先週末、トルコを訪問した。その終わりにトルコは、ウクライナ東部マリウポリの防衛でロシア側と戦った元司令官5人を、ウクライナに帰国させるという驚くべき行動に出た。ロシア当局はこれにも激怒した。
昨年の捕虜交換の条件では、ロシアは元司令官らについて、戦争終結まではトルコにとどまることを期待するとしていた。
NATOがウクライナ加盟を協議へ
ヴィリニュスで11日から2日間にわたって開かれるNATO首脳会議では、ウクライナのNATO加盟が大きな議題となる。
すべての加盟国は、ウクライナの戦争中の加盟は不可能という考えで一致している。加盟を認めれば、核保有国のロシアとの直接的な紛争につながるという懸念もある。
ゼレンスキー氏は、戦争が終わるまで加盟できるとは思っていないとしている。しかし、今回の首脳会議でウクライナの加盟に関して「明確なシグナル」が出されることを望んでいる。
東欧の加盟国のいくつかは、近隣国のウクライナの早期加盟を強く求めている。一方で、アメリカやドイツなどは消極的とみられている。
ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は10日、ウクライナのNATO加盟は「ヨーロッパで半分破壊状態の安全保障の構造全体に悪影響を及ぼす」と警告。
ウクライナの加盟は「私たちの国にとって絶対的な危険かつ脅威であり、断固とした明確な対応が必要となる」とした。