G7広島サミットが閉幕 ゼレンスキー氏が討議に参加、岸田氏が成果を説明 

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画像説明, ウクライナのゼレンスキー大統領(中央奥)も加わってG7首脳らはウクライナ情勢について討議した(21日午前)

広島市で開かれている主要7カ国首脳会議(G7サミット)は最終日の21日、ウクライナ情勢などをテーマに討議が行われ、午後に3日間の日程を終えた。前日に来日したウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領も討議に加わった。議長を務めた岸田文雄首相は閉幕後、平和記念公園でサミットの成果を説明した。

岸田氏はサミット終了後、原爆死没者慰霊碑の前で記者会見に臨んだ。広島でサミットを開いたことへの意義を述べるとともに、ウクライナ情勢や中国への対応でG7首脳らが結束したことを説明した。

サミットの成果をまとめたG7広島首脳コミュニケ(声明)は、前日の20日に発表された。通常であれば首脳声明は最終日に出されるが、ゼレンスキー氏来日を受け、同氏を交えたウクライナ関連の討議に備えるために前倒しされたとみられる。

声明では、ウクライナ支援や、中国の経済的威圧への対応、核不拡散、人工知能(AI)などの問題にG7として取り組んでいく姿勢が示された。

ゼレンスキー氏が討議に参加

この日は午前10時40分ごろ、「ウクライナ」をテーマとした討議がサミット会場の広島市内のホテルで始まった。

ゼレンスキー氏もこれに出席。会議に先立ち、G7首脳らとゼレンスキー氏が並んで写真撮影に臨んだ。同氏は中央の岸田首相の隣に立った。

ウクライナ情勢の討議の前に撮影に臨んだG7首脳らとウクライナのゼレンスキー大統領(右から5人目、21日午前)

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画像説明, ウクライナ情勢の討議の前に撮影に臨んだG7首脳らとウクライナのゼレンスキー大統領(右から5人目、21日午前)
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討議では、議長の岸田氏がゼレンスキー氏の出席に改めて言及。ウクライナ情勢や平和と安定への脅威にG7としてどう対応しするか、議論を深めたいと述べた。

岸田氏はまた、ロシアの侵略に結束して対抗してきたウクライナ国民の勇気と忍耐強さに、心から敬意を表すると発言。ゼレンスキー氏が公正かつ永続的な平和に向けて努力し続けていることを、G7として支持すると述べた。

さらに、G7が一致してウクライナに、外交、財政、人道、軍事面での支援を必要な限り提供していく方針を確認した。 

この後、インドやブラジルなど招待国の首脳らも加わり、「平和で安定し、繁栄した世界に向けて」がテーマの討議が開かれた。ゼレンスキー氏はそこにも出席し、「グローバル・サウス」と呼ばれる新興国や途上国の首脳らと顔を合わせた。

各国首脳からは、ロシアのウクライナ侵攻によって、エネルギーと食料に対する不安の増大など、世界経済に影響が出ていることについて、深い懸念が表明された。

続いて、昼ごろに閉会セッションが開かれ、G7広島サミットは閉幕した。

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画像説明, G7首脳らと共に討議に臨んだゼレンスキー大統領(左から3人目)と招待国の首脳ら(21日)

岸田首相が議長として会見

議長を務めた岸田氏は、サミット閉幕を受けて平和記念公園で記者会見に臨んだ。

冒頭、ロシアによるウクライナ侵攻に言及し、国際秩序を揺るがす課題だと指摘。「厳しい安全保障環境だからこそ、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を堅持し、平和と繁栄を守り抜く決意を世界に示す。それが議長国である日本に課された使命と言える。そのような決意を発信するうえで、平和の誓いを象徴する広島の地ほどふさわしい場所はない」と、広島でG7サミットを開いた意義を強調した。

「力による現状変更のため、核兵器による威嚇や使用はあってはならない」とも述べた。

ウクライナ情勢についてはまた、「ゼレンスキー大統領を日本にお招きし、G7とウクライナの揺るぎない連帯を示す」ことができたと説明。「世界のどこであれ、力による一方的な現状変更の試みは決して認められない。G7として1日も早くウクライナに公正かつ永続的な平和をもたらすべく努力していく」と表明した。

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画像説明, G7サミットの閉幕を受けて記者会見に臨んだ岸田首相(21日午後)

核軍縮をめぐって

広島と密接に関わる核軍縮をめぐっては、今回のサミットでG7首脳らが「77年間の核兵器不使用の重要性について一致するとともに、核戦争に勝者はなく、核戦争は決して戦ってはならないことを確認した」と説明。

また、サミットで「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」が発表されたことについて、「被爆地を訪れ、被爆者の声を聞き、被爆の実相や平和を願う人々の思いに直接触れたG7首脳がこのような声明を発出することに、歴史的な意義を感じる」とした。

そして、「核兵器のない地球」は夢想ではなく理想であり、「理想には手が届く」と主張。「ここ広島から、今日から一人ひとりが広島の市民として一歩一歩現実的な歩みを進めて行きましょう」と訴えかけた。

記者から、日本は核抑止力への依存を続けており、広島が願う核廃絶とは相いれないとの声があるとして考えを問われると、「厳しい現実を理想にどう結び付けていくのかの道筋をしっかり示して行動することこそ、外交や政治に求められる責任だ」と答えた。

中国・北朝鮮については

中国に関しては、「率直な対話を行って懸念を直接伝える重要性や、グローバルな課題などについて協働する必要性について一致するとともに、中国は国際社会で責任ある一員として行動すべきこと、対話を通じて建設的かつ安定的な関係を構築する用意があることなどについてG7で認識を共有した」と説明。

「台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、両岸問題の平和的解決を促した」とした。

また、北朝鮮について、「核ミサイル問題や拉致問題について引き続き連携していくことを確認し、G7として拉致問題の即時解決を強く求めた」と述べた。

ゼレンスキー氏が米首脳らと会談

ゼレンスキー氏はこの日、G7首脳らとの討議の前に、カナダのジャスティン・トルドー首相と個別会談。トルドー氏はウクライナへの支援継続を約束し、ゼレンスキー氏はそれに感謝した。

サミット閉幕後には、アメリカのジョー・バイデン大統領と会談した。アントニー・ブリンケン米国務長官など、両政府の高官らも同席した。

バイデン氏は、ウクライナに対する最大3億7500万ドル(約517億円)規模の新たな軍事支援を表明。ウクライナの防衛力強化のため、アメリカはできる限りのことをしているとゼレンスキー氏に伝えた。新たな支援には、弾薬、大砲、装甲車、訓練が含まれるとした。

ゼレンスキー氏はツイッターで、「我々は私たちの国の防衛力強化のためのさらなる協力と、ウクライナの平和の実現、復興プロジェクトについて話し合った」と説明した。

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画像説明, 首脳会談に臨んだゼレンスキー氏とバイデン氏(21日午後)
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ゼレンスキー氏は前日の広島入りの直後には、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、イギリスのリシ・スーナク首相、インドのナレンドラ・モディ首相、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、シャルル・ミシェル欧州理事会議長、ドイツのオラフ・ショルツ首相と個別に相次ぎ会談した。

原爆慰霊碑に献花し岸田氏とも会談

ゼレンスキー氏は午後5時すぎ、厳重な警備態勢の中、ホテルを出て平和記念資料館を視察。その後、岸田氏と共に原爆死没者慰霊碑まで歩き、献花して祈りをささげた。

続いて、両首脳は広島国際会議場で会談した。

冒頭、岸田氏は3月のウクライナ訪問について、「戦下にもかかわらず温かく迎えていただいた」、「ウクライナの美しい大地に平和を取り戻すため、ウクライナと共に歩んでいく決意を新たにした」とふり返った。

そして、「G7広島サミットの成果とウォロディミル(ゼレンスキー氏)の外交努力による成果をふまえて、今後の連携について意見交換をしたい」と呼びかけた。

ゼレンスキー氏は、「岸田首相の招待を受け、G7サミットに初めて対面参加できて大変うれしく思っている。これだけのウクライナへの注目と、ウクライナの主権、領土の一体性、ウクライナの人たちに対する支持の表明をいただいたことは一生忘れない」と述べた。

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画像説明, 首脳会談に臨んだ岸田首相とゼレンスキー大統領(21日夕)
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ゼレンスキー氏とバイデン氏が会見

ゼレンスキー氏は、午後7時過ぎに広島市内で演説。「人類の歴史から戦争をなくさなくてはならない」となどと訴えた。

バイデン氏も午後7時ごろに広島市内で記者会見を開いた。

原爆戦没者慰霊碑を訪れたことについてバイデン氏は、「核戦争の悲惨な現実」と、平和に向けて努力する必要を「強く想起させられた」と説明。

G7として「核兵器の脅威のない」世界を求めていく決意を強めたと述べた。

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画像説明, G7サミット終了後に記者会見したバイデン米大統領(21日夜)
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ウクライナについては、G7首脳らが「ウクライナの勇敢な人々を支持するという、共有された揺るぎないコミットメント」を確認したとした。

また、西側諸国のウクライナ支援が揺らぐことはないとゼレンスキー氏に伝えたとし、「プーチンが私たちの決意を砕くことはない」と述べた。

バイデン氏はさらに、ロシアはこの戦争を始めたが、今日終わらせることもできると訴えた。

ウクライナに欧州同盟国から米国製F-16戦闘機への供与が見込まれていることについて、戦争を激化させるのではないかと記者に問われると、ロシア領土への攻撃には使用しないとの「きっぱりとした保証」をゼレンスキー氏から得ていると、バイデン氏は答えた。

一方、中国をめぐっては、「私たちが目指しているのはデカップリング(切り離し)ではなく、デリスキング(リスク軽減)と多様化だ」と説明。中国のサプライチェーンに頼り切らず、経済的威圧に抵抗し、「私たちの労働者に悪影響を及ぼす害のある行為」に対抗していくことが重要だと強調した。

台湾に関しては、アメリカが引き続き、台湾の自衛を支援していくと表明。アメリカと同盟国の間には、もし中国が台湾に対して一方的な行動に出れば、「対応することになる」との「明確な理解」があるとした。

ただ、紛争が起こるという考えに「必然性」があるとは思わないとした。

スーナク英首相が日本に感謝

中国については、イギリスのリシ・スーナク首相もサミット閉幕後の記者会見で言及した。

前日の首脳声明では、G7として経済的威圧に対抗するとした部分で、中国のこととはされていなかったが、スーナク氏は会見で中国を名指し。「イギリスは同盟国と完全に連携している。これは、デカップリングではなくデリスクキングだ」と述べた。

そして、G7が一体となれば、「中国が経済的威圧を使って他国の主権問題に干渉するのを防ぐ」ことができるとした。

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画像説明, 閉幕したG7サミットについて記者会見で話すスーナク英首相
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スーナク氏はまた、議長を務めた岸田氏がゼレンスキー氏とグローバル・サウスの首脳たちを日本に呼んだことについて、「多大な称賛」を贈ると表明。G7が「より多くの国や地域と関わり、その声に耳を傾けている」ことを示したとし、こう続けた。

「日本は、私たちの安全保障が、住む場所に関係なく分かちがたいものだと示した。私たちがもつ価値観は普遍的なものだ」

スーナク氏はさらに、広島のお好み焼きも気に入ったと述べた。

ロシアは反発

G7サミット閉会後、ロシアは今回のサミットを、反ロシア、反中国的な声明を出す「政治化された」イベントだとし、世界の安定を損なうものだと非難した。ロシアはサミットが主要8カ国(G8)によって開かれていた当時のメンバーだったが、2014年のウクライナ・クリミア併合を機に除外された。

ロイター通信によると、ロシア外務省は通信アプリ「テレグラム」で、G7サミットが反ロシア、反中国の「ヒステリー」を扇動していると非難。G7は「不可逆的に悪化」しており、「アングロサクソンの先導で、世界の安定を損なう破壊的な動きを育むもの」になっていると述べた。

また、G7が非西側諸国に「言い寄って」、ロシアと中国の関係の発展を妨げようとしているとした。

日韓首脳が会談

この日の朝には、岸田氏と韓国の尹錫烈(ユン・ソンニョル)大統領がそろって韓国人原爆犠牲者慰霊碑を訪れ、献花した。

その後、両首脳は会談に臨んだ。日韓首脳会談は3月以降で3度目。双方の連携強化などを確認したとされる。

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画像説明, 韓国人原爆犠牲者慰霊碑に献花し祈りをささげる岸田首相夫妻と韓国の尹大統領夫妻(21日午前、広島市の平和記念公園)
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日韓両首脳はさらに午後、バイデン米大統領も交えて短時間、意見交換をした。3首脳は、北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイム共有を含む日米韓安全保障協力や、インド太平洋に関する協議の強化などで、連携を前進させることで一致した。 

バイデン氏はこの際、年内に3カ国首脳会談を開きたいとし、岸田氏と尹氏をアメリカに招待した。

インド、ブラジルなど8カ国の招待国の首脳と、国連、世界保健機関(WHO)など7つの招待国際機関の代表らも午前、岸田氏と共に平和記念資料館を視察。原爆死没者慰霊碑に献花し、祈りをささげた。

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画像説明, 原爆死没者慰霊碑を訪れた招待国の首脳と招待国際機関の代表ら(21日午前、広島市の平和記念公園)

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