WHO、新型コロナの緊急事態宣言を終了 脅威は消えずと警告

People wearing protective masks wait in line to board a bus amidst the spread of the coronavirus disease (COVID-19) in Mumbai, India, October, 6, 2020

画像提供, Reuters

画像説明, 新型ウイルス感染症がまん延する中、マスクを着けてバスを待つ人々(2020年10月6日、インド・ムンバイ)

世界保健機関(WHO)は5日、新型コロナウイルス感染症に関する「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)の宣言を終了すると発表した。ただし、新型ウイルスは依然として大きな脅威だと警告した。今後は、各国が最善と考える方法で新型ウイルスに対処していくことになる。

最高レベルの警戒にあたる緊急事態の宣言が2020年1月30日に出されてから、3年以上が経った。宣言の終了は、新型ウイルスのパンデミック終焉(しゅうえん)に向けた大きな一歩となる。

当局によると、新型ウイルスの死亡率は、2021年1月のピーク時の1週間あたり10万人以上から、3500人強(2023年4月24日)に減少している。

WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、これまでに少なくとも700万人が死亡したとしている。

ただ、実際の人数は公式発表の3倍近い2000万人に上る「可能性が高い」とし、新型ウイルスは依然として大きな脅威だと警告した。

「大きな希望」ながら危険は残る

テドロス事務局長は、「(4日に)緊急委員会は15回目の会合を開き、国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の終了を宣言するよう私に勧告した。私はそれを受け入れた。したがって、大きな希望を持って、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)に関する国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態の終了を宣言する」と述べた。

さらに今回の決定について、しばらくの間慎重に検討され、慎重なデータ分析に基づいてなされたものだと付け加えた。

一方で、最高レベルの警戒態勢の解除は、新型ウイルスによる危険が去ったことを意味するわけではないと警告。状況が変われば、緊急事態を復活させる可能性があるとした。

「いま、どの国でも起こり得る最悪な事態は、今回の知らせを理由に警戒を緩め、構築したシステムを解体、あるいは国民にCOVID-19を心配する必要はないというメッセージを発信することだ」と、事務局長は強調した。

今後は各国が判断

WHOは2020年1月に「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態」(PHEIC)を宣言した。

これは、新型ウイルスから人々を守るために、世界的に協調した行動が必要だと示すもの。

今後は、各国が最善と考える方法で新型ウイルスに対処していくことになる。

感染は続くと

パンデミックの大きな転換点の一つとなったのは、ワクチンだった。WHOによると、世界では130億回分のワクチンが投与され、多くの人の重症化を防ぎ、命を救ったとされる。

しかし多くの国では、ワクチンを必要とする人の大半にワクチンが届いていない。

世界中ではこれまでに7億6500万人以上の感染が確認されている。

アメリカとイギリスはほかの多くの国と同様、「新型ウイルスとの共存」していくとし、検査や社会的交流のルールを緩和した。

WHOの緊急対応責任者マイク・ライアン博士は、緊急事態は終わったかもしれないが、脅威は消えていないと話す。

「我々は、当然このウイルスが今後も人に感染し続けていくと予想している。これがパンデミックの歴史というものだ」

「1918年に発生したパンデミック・ウイルスの場合、その最後の苦しみが消えるまでに何十年もかかった」

「ほとんどの場合、パンデミックが本当の終わりを告げるのは、次のパンデミックが始まったときだ」