ノルド・ストリーム爆破、親ウクライナ勢力が実行かと米報道 ウクライナは否定

A gas leak from Nord stream 1 is seen in the Swedish economic zone in the Baltic Sea

画像提供, Reuters

画像説明, バルト海のスウェーデンの排他的経済水域で、ノルド・ストリーム1からのガス漏れが確認された

ロシアからヨーロッパにガスを送る海底パイプライン「ノルド・ストリーム」で昨年9月に確認された破壊について、米紙ニューヨーク・タイムズは7日、親ウクライナのグループによるものだとする匿名の米情報当局者らの話を報じた。ウクライナは関与を否定している。

ノルド・ストリームは昨年9月26日に爆発があった。正確な原因は不明だが、攻撃されたとの見方が強い。

この破壊をめぐっては、ドイツ紙ディ・ツァイトも7日、爆発物を仕掛けるために使われた小型船を捜査当局が特定したもようだと伝えた。

ロシアはパイプラインの爆発は西側によるものだと非難。国連の安全保障理事会に独立調査を求めている。

ニューヨーク・タイムズの報道

ニューヨーク・タイムズの記事は、複数の匿名の米当局者の話を引用。ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領や側近らが、破壊工作に関わっていたことを示す証拠はないとされると報じた。

また、米当局者らが得た情報の性質や入手方法、証拠の信頼性について、当局者らは明らかにすることを避けたと伝えた。

そのうえで、「情報を確認した当局者は破壊工作員について、ウクライナ人かロシア人、またはその両方の可能性が高いとみていると述べた」と書いた。

ウクライナは強く否定

ウクライナのミハイロ・ポドリャク大統領顧問は、報道を受けて声明を発表。同国政府は破壊工作に「絶対に関与していない」とした。また、同国政府は何が起きたのか情報を得ていないとした。

一方、ロシアのドミトリー・ポリャンスキー国連次席大使は報道について、「国連事務総長の下で国際調査を開始するという私たちの構想が非常にタイムリーであることを証明するものだ」と述べた。

ドイツ紙の報道

独紙ディ・ツァイトは、ドイツの他の報道機関との共同調査によって、爆発物を仕掛けるのに使われた小型船はポーランドの会社が貸したヨットだと分かったと報じた。所有者は2人のウクライナ人だったという。破壊を実行した人物の国籍は不明だとした。

同紙によると、ドイツ捜査当局はまだ、誰が破壊を命じたのかの証拠を発見していない。また、ウクライナに責任をなすりつける偽旗作戦の可能性も残されているという。

ノルドストリームとガス流出地点

ロシアとドイツをつなぐ海底パイプラインは2本ある。ノルド・ストリーム1は昨年9月の爆発で、少なくとも50メートルが破壊されたとみられている。

デンマークの警察は「強力な爆発」により、ノルド・ストリーム1と、より新しいノルド・ストリーム2に計4つの穴が開いたとしている。

ドイツ、デンマーク、スウェーデンの当局が、この件について調べを進めている。

ロシアは何十年にもわたり、大量の天然ガスをヨーロッパに供給してきた。しかし、昨年2月にウクライナでの戦争が始まって以降、ほとんどの欧州諸国はロシアへのエネルギー依存を大幅に弱めた。

爆発が起こる前から、パイプラインによるガスの供給は停止していた。

ロシアは昨年8月、メンテナンスが必要だとして、ノルド・ストリーム1の稼働を停止。ノルド・ストリーム2は未稼働だった。

北大西洋条約機構(NATO)と西側諸国の指導者は、ロシアを直接非難するのは避けている。欧州連合(EU)は以前、ロシアがパイプラインを西側諸国に対する武器として使っているとしていた。

動画説明, ノルド・ストリーム1の破壊部分とされる映像。ノルウェーのロボット会社とスウェーデンの新聞社が共同で撮影した