イギリス経済、G7で唯一のマイナス成長見通し=IMF

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国際通貨基金(IMF)は31日に発表した世界経済の改訂見通しの中で、イギリス経済が先進国の中で唯一、マイナス成長となるとの見方を示した。生活費危機が引き続き家計を圧迫するとみている。

IMFによると、イギリスの国内総生産(GDP)は今年、0.6%縮小する見込み。前回見通しで示していた、0.3%のプラス成長からマイナスに転じた。

IMFはその他の主要7カ国(G7)については、今年の経済成長見通しは、アメリカは1.4%、ドイツは0.1%、フランスは0.7%、イタリアは0.6%、日本は1.8%、カナダは1.5%だとしている。

IMFのピエール・オリヴィエ・グランシャ調査局長はBBCの取材に対し、イギリスは2022年に4.1%という「欧州でも高水準」の「かなり力強い」成長を見せたと指摘。

しかし、今回の見通しはエネルギー価格の高騰や「液化天然ガスへの依存度が高い」ことなどから、「イギリスが非常に厳しい環境にある」ことが反映されていると説明した。

さらに、インフレ高騰や、それを受けた利上げによる住宅ローンへの影響、雇用がパンデミック以前の水準に戻っていないことなどを理由に挙げた。

その上で、英財務省が秋季財政報告書の発表以降、数カ月間でまとめた財政計画は、イギリスが「さまざまな課題を慎重に乗り越えようとしていることを示しており、正しい方向に向かっていると、IMFとしては考えている」と述べた。

IMFは2024年について、イギリスは前回見通しより0.3パーセントポイント高い0.9%の成長となるとみている。

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予想上回る成長=英財務相

イギリスのジェレミー・ハント財務相は、イギリス経済は昨年、多くの予想を上回る成長を見せたと指摘している。

ハント財務相は先に、春季予算案では「大きな」減税を行う余地が「ない可能性がある」と警告していた。

ハント氏はかねて、経済刺激策として減税を行うよう、与党・保守党内から圧力をかけられている。そうした中で同氏は、インフレ率を半減させるという公約が、「現時点で最高の減税」だと語っていた。

イギリスでは、昨年12月までの12カ月間のインフレ率が10.5%となり、過去40年間で最高水準となっている。

リシ・スーナク首相は、年末までにインフレを半減させると公約しているが、商品価格や輸送コストの低下により、政府の政策がなくても物価上昇は鈍化するだろうと指摘するエコノミストもいる。

イングランド銀行(中央銀行)のアンドリュー・ベイリー総裁も、インフレ率は今年、エネルギー価格の低下に伴って急激に落ちる可能性が高いとしているが、なおイギリスの景気後退入りもあり得ると警告している。

イングランド銀は今週中にも経済見通しとともに、さらなる利上げを発表するとみられている。

「ドイツや日本よりも大きな成長」

ハント財務相は、ベイリー総裁がイギリスの景気後退について「これまでの予測より浅くなる可能性が高い」と述べたことを強調。また、IMFの見通しは「イギリスが、ほぼすべての先進国経済を襲う圧力と無縁ではないことの証拠だ」と付け加えた。

「短期の困難によって長期見通しが暗くなってはいけない。イギリスは昨年、多くの予想を上回る成長を見せた。インフレ率を半減するという計画を続ければ、向こう数年でドイツや日本よりも大きな成長を遂げられるとみている」

英財務省によると、イギリス経済は2010年以降、フランスと日本、イタリアよりも早く成長しているという。また、欧州連合(EU)離脱を決めた2016年の国民投票以降は、「ドイツと同等」の成長を見せていると述べている。

「2022年から2024年にかけての累積成長は、ドイツや日本より大きくなり、アメリカと同等になると予測されている」と、財務省の報道官は説明した。

利上げやウクライナでの戦争、コロナ対策が影響

31日は、ブレグジット(イギリスのEU離脱)から3周年に当たる。IMFは今回、イギリス経済の不調の要因としてブレグジットを挙げなかった。

一方で、各国中銀がインフレ抑制のために金利を引き上げていることや、ウクライナでの戦争が引き続き「経済活動の重荷」になっていると述べた。

また、中国が新型コロナウイルス対策の制限を解除し、経済を解放したことが、世界的に「予想よりも早い経済回復への道」につながったとした。

IMFは、世界のインフレ率は今年にピークを迎え、昨年の8.8%から今年は6.6%に、2024年は4.3%まで下がるとみている。