米極右指導者に有罪評決 議会襲撃事件の扇動共謀罪で
米ワシントンの連邦地裁の陪審は29日、2021年1月に米議会を襲撃し、ジョー・バイデン氏の大統領選勝利の認定を妨げようとしたとして、極右武装グループの創設者に有罪評決を言い渡した。
極右団体「オース・キーパーズ」のスチュアート・ローズ被告は2カ月の審理の末、扇動共謀罪で有罪となった。最長で禁錮20年の刑を受ける可能性がある。
ローズ被告はこのほか、文書・手続き改ざんでも有罪とされた。他の2件の共謀罪では無罪となった。
検察側は、ローズ被告がドナルド・トランプ前大統領からバイデン氏への権力移譲を阻止するために武装蜂起を計画していたと指摘した。
また、ローズ被告は襲撃時に「戦場の司令官」として動いていたと述べた。
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共和党のトランプ氏の支持者たちは昨年1月6日、バイデン氏が大統領選に勝利したと連邦議会が認定するのを阻止しようと、大挙して議事堂を襲撃した。
襲撃に参加したとして、これまでにアメリカのほぼ全ての州で約900人が逮捕されている。
当局は、ローズ被告はワシントンからポトマック川を渡ったところにあるヴァージニア州のホテルの部屋に数十点の武器を隠し、大規模な市民暴動が起きたときに、ワシントンに持ち込む計画だったと主張した。
一方、被告人の弁護団は、武器が実際には使われず、ワシントンにすら持ち込まれなかったことが、「オース・キーパーズ」が純粋に防衛的な任務についており、抗議者を保護し、議事堂の内外の平和を守るつもりだったという被告側の主張を補強するものだと述べた。
イェール大学卒で弁護士資格のあるローズ被告は、米軍のパラシュート部隊にいた経験もある。被告が創設した「オース・キーパーズ」は、米軍や司法当局の関係者を取り込もうとしていたという。
「オース・キーパーズ」のメンバーは、ここ10年にわたってアメリカ各地の抗議運動などに参加している。
この裁判ではローズ被告に加え、4人が議会襲撃に絡んで起訴されている。このうちジェシカ・ワトキンス被告、ケリー・メグス被告、ケネス・ハレルソン被告の3人は、襲撃時に建物内に侵入した。
この中で、ローズ被告と共に扇動共謀罪で有罪となったのはメグス被告だけだった。同被告も最長で禁錮20年の刑を受ける可能性がある。また、トーマス・キャルドウェル被告を含む5人全員が、公務執行妨害で有罪となった。
ローズ被告の弁護団は評決後、結果に不満があるものの、検察側の明確な勝利というわけでもないと述べた。
エドワード・タープリー弁護士は、陪審員がいくつかの罪状について被告人らを無罪としたことはありがたいと話した。
扇動共謀罪とは
アメリカで扇動共謀罪が適用されることは珍しく、1995年にイスラム過激派組織がニューヨークの高層ビル爆破を計画した罪で有罪となった時以来だという。
南北戦争時代に制定されたこの刑法は当初、南部州の住民が政府と戦うのを阻止するためのものだった。
扇動共謀罪を成立させるためには、検察は複数の人物がアメリカ政府を「武力で転覆、無力化、あるいは破壊」するために共謀したか、米当局に反抗するために武力を使うことを計画したことを立証する必要がある。
元米司法省の弁護士で現在はミネソタ大学で教えるアラン・ローゼンスティーン教授(法学)は、ローズ被告に対する有罪評決は重大だと指摘。扇動共謀罪が「最も深刻な反民主主義的行為を罰するための、実行可能かつ合法的な方法」だと示したと述べた。
その上で、無罪も含まれている評決は、陪審員が責任を持って有罪を適用できることの証だと付け加えた。
また、今回の評決は、議会襲撃に絡んだ裁判を多く抱える司法省を後押しするものだと述べた。