ハリポタ作者、プーチン大統領に擁護され反発 「キャンセル・カルチャー」めぐり

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画像説明, J・K・ローリング氏

「ハリー・ポッター」シリーズの作者J・K・ローリング氏は25日、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が演説の中で「キャンセル・カルチャー(特定の対象を全否定する風潮)」を批判する際に、自分を引き合いに出したことに反発した。

反論の中でローリング氏はロシアのウクライナ侵攻を批判し、ロシアが「市民を虐殺している」と指摘した。

ローリング氏をめぐっては、トランスジェンダー(出生時の身体的性別と性自認が異なる人)に関する発言が議論の的になっている。

「抵抗の罪で市民を今まさに虐殺している人たち、反体制派を収監したり毒を盛ったりする人たちが、西側のキャンセル・カルチャーを論評するのは、あまり適切ではない」と、ローリング氏はツイートした。

「ジェンダーの自由の支持者のお気に召さなかった」

文化勲章授与式での長い演説でプーチン大統領は、ロシアの作曲家や作家が差別されていると語った。

「(西側諸国は)1000年の歴史を持つ国をキャンセルしようとしている」とプーチン氏は述べた。

ロシアが2月下旬にウクライナに侵攻して以来、親ロ派の人物が携わるイベントなどが中止になっている。また、ごく少数ながら、ロシアの作曲家による楽曲を使ったイベントも一部中止となった。

しかしプーチン氏は、「多くの西側諸国で(中略)ロシアと関連するものすべてが、徐々に差別の対象になっている」と、証拠を示さずに主張した。

「ロシアの作家や本を禁止し始めている。ちまたに言う『キャンセル・カルチャー』が、文字通り文化の否定となっている」

プーチン氏はその後、トランスジェンダーをめぐる発言で批判を受けているローリング氏を擁護。

「世界中で何百万部も売り上げた本の作家であるJ・K・ローリング氏は、いわゆる『ジェンダーの自由』支持者のお気に召されなかったがために、キャンセルされている」と述べた。

ローリング氏は、トランスジェンダーの人々を差別しているとの批判を否定している。また、トランスジェンダーをめぐる問題への関心は、自身が暴力の被害者であることや、性別によって分けられた場所をめぐる懸念があるからだと説明している。

こうしたローリング氏の視点は、トランスジェンダーの人々のアイデンティティーを軽視しているとの批判が出ている。

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ロシア人指揮者ワレリー・ゲルギエフ氏は、ウクライナ侵攻を非難しなかったとして、音楽フェスティバルやコンサートホールなどから降板、解雇を言い渡されている。ゲルギエフ氏は25日、プーチン氏の式典に参加している。

英ウェールズのカーディフ交響楽団は3月初めに、戦争を理由にチャイコフスキー作曲の大序曲「1812年」を演目から外した。

同交響楽団は、「軍隊がテーマの作品が2つあり(中略)現時点では非常に不適切だと感じた」と説明。「人道危機が終われば、『ウォーク(woke、社会問題への認識が高いこと)』や『キャンセル・カルチャー』に関する議論もできるだろう」と説明した。

ウクライナではロシアの侵攻開始から1カ月がたった現在、1000万人以上が家を追われるなど、深刻な人道危機が発生している。