WHO、中国シノファーム製ワクチンの緊急使用を承認 欧米以外で初
世界保健機関(WHO)は7日、中国国営企業シノファーム(医薬集団総公司)が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。欧米以外で開発された新型ウイルスワクチンの承認は初めて。
シノファーム製ワクチンはすでに、中国内外で数百万人に投与されている。
WHOがこれまでに緊急使用を承認したのは、アメリカのファイザー製やジョンソン・エンド・ジョンソン製、モデルナ製、イギリスのアストラゼネカ製だけだった。
しかし、特にアフリカやラテンアメリカ、アジアの貧困国など、様々な国の規制当局がシノファーム製ワクチンの緊急使用を認めてきた。
初期段階では国際的に発表されたデータはほとんどなかった。そのため、複数の中国製ワクチンの有効性については長らく、はっきりしたことは分かっていなかった。
しかしWHOは7日になって、シノファーム製ワクチンの「安全性、有効性、品質」を確認したと発表した。
WHOはシノファーム製が緊急使用が可能なワクチンに追加されたことで、「医療従事者や危険にさらされている人を保護しようとしている国にとって、新型ウイルス感染症Covid-19ワクチンへのアクセスが急速に促進される可能性がある」とした。
シノファーム製ワクチンは18歳以上を対象に、2回接種するようWHOは推奨している。
中国の科興控股生物技術(シノヴァク・バイオテック)が開発した別のワクチンについても、数日中に緊急使用の可否が決まる見込み。また、ロシア製ワクチンについては現在、評価作業が進められている。
なぜWHOの後押しが重要なのか
世界的な保健機関であるWHOからの承認は、各国の規制当局にとってワクチンが安全で効果的だと示すガイドラインとなる。
WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、WHOが承認することで「各国が自国規制当局の承認を推進するための自信」の根拠になるだろうと述べた。
また、昨年にWHOなどが立ち上げた、新型ウイルスワクチンの公平な配分を目指す国際的な枠組み「COVAX」でも、シノファーム製が使用できるようになる。
COVAXは富裕国と貧困国のワクチン格差を縮めることを目的としている。COVAXはワクチン供給で苦戦を強いられており、シノファーム製の追加が大きな後押しになることが期待されている。
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WHOの承認に先立ち、シノファーム製はすでに、アラブ首長国連邦(UAE)やパキスタン、ハンガリーなど、中国内外で広く使用されてきた。推定6500万回分の接種が行われたと報じられている。
WHOの技術諮問グループがシノファーム製ワクチンに関する最新の臨床データと製造基準を検討し、7日に緊急使用を承認した。有効性は79%と推定している。
臨床試験には60歳以上の人がほとんど含まれていないことから、60歳以上への有効性は推定できないとしつつ、高齢者に他と異なる効果が出ると考える理由はないと説明している。
中国製ワクチンの主な利点の1つは、アストラゼネカ製と同様に、摂氏2~8度の標準的な冷蔵庫での保管が可能なことだ。
WHOはシノファーム製は容易に保存できるため、「リソースが乏しい環境に非常に適している」とした。
中国製ワクチンの効果は
中国のシノファーム製とシノヴァク製ワクチンは、特にファイザー製やモデルナ製とは大きく異なる。
中国製ワクチンは、死んだウイルスの一部を使って体の免疫系を刺激する不活化ワクチンで、接種しても深刻な症状が現れることはまずない。
これに対して独ビオンテック/米ファイザー製やモデルナ製は、mRNAというウイルスの遺伝子コードの一部を注射することで人間の免疫システムを訓練するというもの。
英アストラゼネカ製はチンパンジーがかかる風邪ウイルスを遺伝子操作したもの。「スパイクたんぱく質」と呼ばれる、新型コロナウイルスの一部の「設計図」が含まれ、体内に接種することでスパイクたんぱく質を生成し始める。人体の免疫系がこれを攻撃することを学習し、やがて実際に新型コロナウイルスが体内に入ったときには、同じようにこれを攻撃できるようになる。
ビオンテック/ファイザー製とモデルナ製はいずれも約90%前後の有効性を示している。アストラゼネカ製は約76%有効とされる。
中国疾病対策センター(CCDC)トップの高福氏は4月、中国で開発された新型ウイルスワクチンの効果は小さいとの見方を示したが、その後、自分の発言が誤解されたとして発言を修正した。