レバノンで反政府デモ、治安部隊と衝突 爆発で不満高まる

Protests in Beirut

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画像説明, ベイルートの国会近くでデモ参加者と治安部隊が衝突した

大規模爆発で多数の死傷者が出たレバノンの首都ベイルートで6日、反政府のデモがあり、参加者らと治安部隊が衝突した。

デモは国会近くで行われていた。治安部隊は参加者らに向け催涙ガスを使用した。

4日に発生した爆発による死者は137人超、負傷者は約5000人に上っている。さらに、多数が行方不明となっている。

多くのレバノン市民は、政府の腐敗や怠慢、管理のまずさが爆発を引き起こしたと訴えている。

Lebanese security forces at the protest

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画像説明, 治安部隊が出動した
Protests in Beirut

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画像説明, デモ参加者に向けて催涙ガスが使用された
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レバノン政府は2週間の非常事態を宣言している。

マクロン仏大統領が視察

フランスのエマニュエル・マクロン大統領はこの日、ベイルートを訪問。レバノン指導層に「大きな変化」が必要だと述べた。

外国首脳が被災したレバノンを訪れるのは初めて。フランスはかつてレバノンを委任統治していた。

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マクロン氏は、被災状況を「現在のレバノンの危機の象徴」と表現。支援を表明したが、まずレバノン指導層が改革を実行する必要があるとし、「新たな政治秩序」が求められていると述べた。

また、「隠ぺいや疑惑を防ぐため」として、爆発に関して国際的な調査を求めた。

ミシェル・アウン大統領はこれまでに、2750トンの硝酸アンモニウムが倉庫内に危険な状態で保管されていたことが爆発の原因だと述べている。

動画説明, ベイルートの大爆発、BBC支局を爆風が直撃 女性記者が吹き飛ばされる
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国営報道機関は、捜査の一環として、当局が16人を拘束したと伝えた。

軍事裁判所の政府代表を務めるファディ・アキキ判事は、港湾関税当局者や倉庫の保守担当従業員など18人以上に、事情を聴いていると述べた。

マクロン大統領の発言

マクロン氏はベイルートで、近日中にレバノン支援の会議が召集されるとの見通しを表明。

フランス政府は、支援が現場の救援組織に直接届くようにすると述べた。

また、「中央銀行に監査がないままなら、数カ月のうちに輸入がなくなり、燃料や食料品の不足が生じるだろう」として、監査の必要性を強調した。

macron in beirut

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画像説明, マクロン仏大統領はベイルートの路上で市民らに囲まれた
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ベイルート市内の状況を徒歩で視察した際には、マクロン氏は多くの市民に囲まれた。

市民らは、「助けてください。あなただけが望みだ」、「腐敗した政府にはお金を送らないでください」、「もう限界だ」などとマクロン氏に訴えた。

フランスはすでに、航空機3機でレバノンに支援物資を送っており、4機目がまもなく到着する。来週にはフランスの調査団と追加支援物資が、軍の輸送用ヘリコプターでレバノンに運ばれる予定。

フランスの救助隊はベイルートで活動しており、爆発から2日たった今も、生存者が見つかる可能性は十分あるとしている。

動画説明, ベイルートの空撮。港湾地区は壊滅的な被害を受けた
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ハマド・ハサン保健相は、負傷者の治療に必要な病院のベッドや医療機器が不足していると述べた。

ベイルートのマルワン・アブド県知事は、爆発で多くの建物が倒壊し、30万人もの人々が住む家を失ったとしている。

アブド氏はBBCに、「ベイルートは食べ物を、衣服を、家を、建材を必要としている。ベイルートは避難者、市民の居場所を必要としている」と述べた。

一方、ラウル・ネーメ経済相は復興について、少なくとも一部は外国からの支援に頼らざるを得ないと話した。

Site of the explosion in Beirut

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画像説明, 爆発の影響はベイルートの広い範囲に及んだ
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レバノンでは新型コロナウイルスの感染者が増加している。爆発前、病院はその対応に追われていた。

1975~1990年の内戦以降で最悪の経済危機にも見舞われており、反政府デモが繰り広げられるなど、政治的な緊張が高まっていた。市民は停電が日々発生し、安全な飲み水や公的医療が不足する中、困難な生活を強いられてきた。

レバノンは食料の大部分を輸入に頼っている。大量の穀物はベイルート港湾地区に保管されていたが、今回の爆発で倉庫が壊滅。今後の食料不足が懸念されている。

Interactive See extent of damage at Beirut blast site

5 August 2020

Beirut port in August 2020 after explosion

25 January 2020

Beirut port in January 2020

ベイルート港湾地区の状況。左が爆発前の今年1月25日、右は爆発後の8月5日。写真内の円を左右に移動すると変化を見ることができる。爆発地点ではクレーターができた(Location of blast and crater)

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爆発のきっかけは?

爆発したとされる硝酸アンモニウムは、農業用の肥料や爆薬として利用される。

ベイルート港湾の倉庫には、没収した船舶から降ろされた硝酸アンモニアが、2013年から約6年間保管されていたとされる。

船舶関連の法的事案を扱うウェブサイトShiparrested.comによると、没収されたのはモルドバ国旗を掲げた船名「ロサス」という船。ジョージアからモザンビークに向けて航行中、機械に問題が発生しベイルート湾に入った。

同船は検査の後、出港が禁止された。所有者は法的な争いの末、同船を放棄。安全のため、積み荷は倉庫に保管されたという。

Smoke is seen after an explosion in Beirut, Lebanon August 4, 2020

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画像説明, 爆発時には大きな煙が立ち上った(8月4日)
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港湾当局と税関当局のトップは地元メディアに対し、安全確保のために硝酸アンモニアを輸出するよう、司法当局に数回にわたって文書で要請していたと話した。

港湾当局トップのハサン・コレイテム氏は地元放送局OTVに、裁判所から硝酸アンモニウムの保管を命じられた時点で、危険性は認識していたと説明。「だが、これほどとは思わなかった」と述べた。

動画説明, 「ガラスが粉々、床には血が流れ……」 レバノン・ベイルートの大規模爆発