【欧州議会選】 中道左右両派が過半数失う リベラル派、ナショナリスト党が台頭

Supporters of National Rally react to EU election results

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画像説明, 出口調査での勝利を受けてフランス国旗を振る、極右・国民連合の支持者たち

欧州連合(EU)加盟28カ国で投票が行われた欧州議会選挙の開票が進められ、最大勢力だった中道左右両派が過半数を失う見込みとなった。一方、リベラル派や環境保護を訴える緑の党も大きく躍進。また、イタリアとフランス、イギリスでは極右のナショナリスト政党が最も多くの票を獲得した。

欧州議会の第1党の座を確実にしたのは、中道右派の欧州人民党(EPP)だが、議席は216議席から179議席へと大きく減少すると見込まれている。連立を組んでいた中道左派の社会民主進歩同盟も191議席から150議席へと議席を減らす模様で、両党合わせても過半数を割り込む情勢だ。

EPPは今後、親EU派で連立を組むとみられている。

投票率は全加盟国で51%弱と、過去20年で最も高かった。

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親EU派で連立

欧州議会(定数751)はEUの立法府に当たるほか、欧州委員会やその他のEU機関の要職任命にも大きな影響を与える。EUの予算もここで承認される。

加盟国には人口に応じた議席が割り当てられている。各国は5年ごとの選挙でそれぞれ欧州議会議員を選出し、議員はその主義主張に応じて、議会内で会派を形成している。

今回の投票は23~26日に行われ、26日夜に開票と結果の中間発表が始まった。

アナリストは、EPPは社会民主進歩同盟のほか、リベラル派や緑の党など親EU派の協力を得て「大連立」を組むとみている。

リベラル派の欧州自由民主同盟(ALDE)はフランスのエマニュエル・マクロン大統領が率いる「共和国前進」が参加することが決まり、107議席を確保した。

ALDEを率いるヒー・フェルホフスタット氏(ベルギー)は、「過去40年で初めて、保守党と社会党という伝統的な政党が過半数を割った。欧州議会に新しいバランスが生まれることになる。歴史的な夜になることは明らかだ」と述べている。

出口調査によると、緑の党も50議席から67議席へと議席を増やす見込み。

Marine Le Pen, leader of France's National Rally

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画像説明, マリーヌ・ル・ペン氏率いる国民連合は、エマニュエル・マクロン大統領の共和国前進を抜いてフランスの第1党となった

一方、フランスやイタリアなどでは極右のナショナリスト政党が躍進し、EU懐疑派も勢力を伸ばした。

イタリアの極右与党・同盟を率いるマッテオ・サルヴィーニ副首相は、各国の少なくとも12党をまとめて会派を作るとみられている。

ポピュリスト政党もいくつかの国で票を伸ばしたものの、予想されていたほどの躍進には至らなかった。

主要国の結果は?

イギリスでは、ナイジェル・ファラージ氏率いるブレグジット党が開票序盤での得票率を32%としており、第1党となる見通し。自由民主党も票を伸ばした一方、2大政党の保守党と労働党は議席を大きく減らすとみられている。

ドイツでは、中道政党が生き延びた。しかしアンゲラ・メルケル首相のキリスト教民主同盟(CDU、中道右派)は得票率を前回の35%から28%に下げ、中道左派の社会民主党(SPD)も27%から15.5%に落ち込んだ。

極右ポピュリスト政党の「ドイツのための選択肢(AfD)」も予想ほど票を伸ばさず、出口調査では得票率10.5%との結果が出た。ただ、初めて欧州議会選挙に出馬した2014年からは上昇している。

Nigel Farage, leader of the Brexit Party

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画像説明, イギリスでは、ナイジェル・ファラージ氏率いるブレグジット党が第1党となる見通し

極右政党は各国で明暗が分かれた。

フランスではマリーヌ・ル・ペン氏が率いる国民連合(RN)が得票率24%で、マクロン大統領の共和国前進(22.5%)を破って第1党となった。

また、イタリアではサルヴィーニ氏の極右政党・同盟が30%の得票率を確保している。

ハンガリーでは、反移民を掲げる与党の右派フィデス・ハンガリー市民連盟が52%と大勝し、ハンガリーに割り当てられた21議席中13議席を獲得した。

オルバン・ビクトル首相は「ハンガリーは小さい国だが、欧州を変えたい」と述べ、今回の選挙は「反移民の新しい時代の始まりだ」と語った。

スペインでは与党スペイン社会労働党(PSOE)が得票率32.8%で第1党。極右のVOXは6.2%と5位だったが、3議席を獲得している。

Matteo Salvini, leader of League Party

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画像説明, イタリアの与党・同盟を率いるマッテオ・サルヴィーニ党首は、極右会派を作るとみられている

投票率が高かったのは?

今回の欧州議会選の投票率は51%弱と、1979年の初めての議会選以来の数字を記録した。前回2014年の43%から大きく伸びている。

特に高かったのはデンマークで63%。ハンガリーとポーランドでは前回から投票率が2倍に上昇した。

アナリストは、気候変動への意識が高くなったことや、ポピュリスト政党の台頭が高い投票率につながったとみている。

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<分析>現状の否定 ――カティヤ・アドラー欧州編集長

今回の欧州議会選挙の結果は、すでに欧州各国の総選挙で明らかになっていた傾向を反映している――現状の否定だ。

フランスで中道右派と左派が敗れ、ドイツではメルケル首相率いるCDUと連立相手のSPDが敗れ、イギリスでは2大政党の保守党と労働党が敗れた。

欧州の有権者は、他のところに答えを求めている。自分達の価値や優先事項を代表してくれていると思えるような政党や政治家のところに流れてしまった。

極右のナショナリスト政党は移民問題を解決し、EUよりも本国の議会に権力を戻そうとしている。イタリアのサルヴィーニ副首相やハンガリーのオルバン首相は良い成功例だ。

緑の党やリベラル派は、親EU派の別の選択肢として台頭した。彼らもまた、今回選挙で議席数を伸ばしている。

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