フランス料理のスター、ロブション氏死去 ミシュラン星30以上

Joel Robuchon (L) stars poses with the tyre company's mascot during the Michelin Guides Award ceremony in Singapore on 21 July 2016

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仏紙フィガロなどによると、フランスの有名シェフ、ジョエル・ロブション氏が6日、スイスのジュネーブで死去した。73歳だった。がんを患っていたという。その業績を振り返る。

ロブション氏は多くの功績を残した。ミシュランの「星」を30個以上獲得した。世界最高のマッシュポテトを生み出した。「気難しい」若きゴードン・ラムゼイ(後の有名シェフ)に皿を投げつけた。

ロブション氏は後に、世界中でレストランを開いた数十年のキャリアで、皿を投げたのはこの1度だけだと明かしている。

しかしその人生は、大きく違うものだったかもしれない。

ロブション氏が最初に志したのは神職だった。

世界各地の食通には幸いなことに、神学生として修道女と共に働く中で料理への情熱を見出したロブション氏は、15歳の時に見習いとして最初の調理場に入った。

それから先は、よく言われるように、歴史の一部となった。

「世紀のシェフ」

フィガロによると、ロブション氏は6日、がんのためスイスで亡くなった。膵臓(すいぞう)がんの治療を1年以上受けていたという。

ロブション氏は1945年、仏西部ポワティエで、石工の父と主婦の母の間に生まれた。

アカザエビとトリュフのラビオリ、フォアグラと共にじっくり火を通したハト。ロブション氏が後に創作した豪華な料理には、そのつつましい出自の兆しも見られない。

しかし、ロブション氏考案の中で最も有名で、愛されているレシピの1つは、ポム・ピュレと呼ばれる素朴なマッシュポテトだ。噂によればこのマッシュポテトは、ジャガイモとバターを1:1の割合で混ぜたものという。

ロブション氏は1980年代初めに名声を確立した

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世界最高のマッシュポテト作りに、ロブション氏は献身的に取り組んだ。その熱意は、驚きではないかもしれない。完璧主義者として有名で、材料を使いすぎず、下ごしらえもシンプルに、極端なヌーベル・キュイジーヌ(健康志向なフランス料理の調理法)から距離をおいた姿勢でも名声を得た。

ロブション氏は2014年、米メディアのビジネス・インサイダーに対し、「年をとればとるほど、何が真実か気づくようになった。食べ物はシンプルであればあるほど、特別なものになる」と語っている。

「3種類以上の味を1つの皿で合わせようとは、決してしない。調理場に入れば、どういう料理で、使われているのがどういう材料か、すぐに分かるのが好きだ」

ロブション氏は1981年、36歳で自分のレストラン「ジャマン」を開き、1980年代初めに名声を確立した。オープンから1年もしないうちに、ジャマンはレストランガイドブック「ミシュラン・ガイド」で1つ星を獲得した。そのキャリアを通じて、ロブション氏はミシュランで31の星を集めた。1人のシェフとして、過去最多の星の数だ。

「ジャマン」開店から10年足らずの1989年、ロブション氏はミシュランと並ぶレストランガイド「ゴー・ミヨー」に「世紀のシェフ」と紹介された。

意欲的なスコットランド人シェフ、ラムゼイ氏がロブション氏の調理場に加わったのがこの頃だ。

ゴードン・ラムゼイ氏について、ロブション氏は後に英紙テレグラフに対し、才能あるシェフだったが「気難しい」態度があったとも語っている。ラムゼイ氏がアカザエビのラビオリを正しく作らなかったと指摘されると、素直に受け入れないように見えたと。

「私がそう言うと、ゴードンは非常に横柄な態度で反応してきた」とロブション氏は回想した。「この時は、とてもいらついたので、皿を投げつけたんだ」。

キャリアを通じて皿を投げたのは、この時一度きりだったと、ロブション氏は付け加えた。

ラムゼイ氏はかつて指導を受けたロブション氏の死を知ると、インスタグラムに追悼文を投稿した。「ミシュランのゴッドファーザー、世界で最も多くの勲章を受けたシェフを失った。僕たちは決して気が抜けなかった! 寝ているときも! メルシー、シェフ。神のご加護がありますように」と書き、ロブション氏と共に写った写真を投稿に添えた。ラムゼイ氏の側に、皿を投げられたことによるわだかまりは見られなかった。

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ロブション氏は1995年、50歳のときに引退を決めた。だからと言って、のんびり過ごすつもりはなかったようだ。調理場を引退した代わりに、ロブション氏はテレビに関心を向け、仏テレビ局でいくつかの料理番組の司会を務めた。

しかしロブション氏は、調理場から離れてはいられなかった。引退から数年後、ロブション氏は日本のカウンター寿司から発想を得た、より手ごろな飲食店を開く計画を披露した。

時間と共に、流行は変化する。ロブション氏は2018年6月、ミシュラン・ガイドに対し、より健康的な料理を作るようになったと語った。ロブション氏は昨年、高コレステロール、高血圧、高血糖に対策するため食事からバターと油をなくし、27キロ以上も体重を落としたと明かしていた

「世紀のシェフ」は、アジア料理、特に日本料理の影響を受けた

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ロブション氏が財産を残したのは、ロンドン、東京、ラスベガス、北京などに現在12店舗を構える「ラトリエ・ドゥ・ジョエル・ロブション」といったレストランにだけではない。ロブション氏は生まれた町の近くに、料理学校も建てた。

ロブション氏はミシュラン・ガイドに、料理学校は自分にとって非常に重要だと話した。

「『老人が死ぬのは、図書館が焼け落ちるのと同じだ』というとても有名なことわざと同じようなことだ」とロブション氏は述べた。「私は、有名無名を問わず、実に大勢のシェフを見てきた。1人が姿を消すと、それと共に知識や伝統の一部が失われた。誰もそれを取り戻すことはできない」。

訃報を知った大勢が、ロブション氏の功績に思いを寄せた。6日にはたくさんの人が同氏を追悼した。

世界のレストランを紹介するサイト「ラ・リスト」はツイッターに、「一世を風靡(ふうび)した伝説的なフランス料理人、シェフ・ジョエル・ロブションが73歳で亡くなった。美食の世界に対する足跡と貢献は、今後も常に称賛され、記憶される。安らかに、ムッシュ・ジョエル・ロブション」と投稿した。

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英国の食に関するサイト「グレート・ブリティッシュ・シェフス」は、「伝説的な人物、ジョエル・ロブション氏が73歳で亡くなったとの報は大きな悲しみだ。ゴードン・ラムゼイ氏の師匠で、世界で最も多くミシュランの星を獲得したシェフの喪失は、料理界に衝撃を与えるだろう。私たちの思いはロブション氏の家族や友人と共にある」とツイートした。

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英国の有名シェフ、ミシェル・ルー・ジュニア氏はロブション氏の写真と共に、「この人が作る料理の一口一口が何もかも大好きだった。悲しい喪失だ。安らかに、シェフ」とツイッターに書いた。

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仏政府のバンジャマン・グリボー報道官はツイッターで、ロブション氏を「先見の明がある指導者」で、今後も「若い世代のシェフを刺激し続けただろう」人と表現した。

料理界はこの1年で、米有名シェフのアンソニー・ボーデイン氏や米料理評論家のジョナサン・ゴールド氏など、何人もの大物を失っている。

フランスでは1月にも、仏料理界の「法王」として知られたポール・ボキューズ氏が亡くなった。ロブション氏は仏南東部リヨンであったボキューズ氏の葬式に出席する姿が見られた。