「夫人の権力奪取許した」ジンバブエ与党、ムガベ大統領弾劾手続きへ

ムガベ大統領の与党は、ムガベ夫人に「政権を担う権利はない」と反発している。写真は2014年撮影

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画像説明, ムガベ大統領の与党は、ムガベ夫人に「政権を担う権利はない」と反発している。写真は2014年撮影

ジンバブエのロバート・ムガベ大統領が退陣要求を拒否していることをめぐり、与党のジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)は21日にムガベ氏の弾劾手続きを開始する構えをみせている。ムガベ氏が夫人のグレース・ムガベ氏に権力の奪取を許したことが、弾劾の理由だとしている。

弾劾動議は21日に議会に提出される予定。

ZANU-PFの幹部ポール・マングワナ氏は、手続きは2日で完了する可能性があり、ムガベ氏は23日にも解任されるかもしれないと語った。

ZANU-PFはムガベ氏に対し、20日正午までに辞任しなければ弾劾手続きを始めると警告していた。

一方、軍指導部はムガベ氏の今後に関する「計画」を策定したとし、2週間前に解任されたエマーソン・ムナンガグワ第1副大統領が近く帰国すると述べた。

グレース夫人とムナンガグワ氏は2人ともムガベ氏の後継者として有力視されていたが、ムナンガグワ氏はムガベ氏によって解任されたことから、ムガベ氏はグレース夫人を後継に据えたい意向だとみられるようになり、軍の介入を招いた。

コンスタンティノ・チウェンガ国軍司令官は、ムガベ氏はムナンガグワ氏と連絡を取っており、2人は近く面会すると明らかにした。

ムガベ氏に対する弾劾理由

ジンバブエ憲法は弾劾に当たる事例として、「重大な不正行為」、「憲法違反」、「憲法の順守、支持、擁護を怠る行為」、「不能」を挙げている。

与党の会合を終えたマングワナ氏は、「主な問責事由は、彼(ムガベ氏)が、妻が政権を支配する権限を持たないのに憲法に基づく権力を奪取するのを許したことだ。しかし、彼女(グレース氏)は公の集会で公務員や副大統領を罵った。彼らは軍を侮辱した。これらが問責事由だ」と語った。

マングワナ氏はさらに、「彼はジンバブエ憲法の適用を拒否した。特に、地方議会の選挙を行ったのに現在も任命されていない。彼は高齢で、政権運営に必要な身体能力を失っている」と述べた。

「彼は頑固な男だ。人々の声は聞こえているのに、耳を傾けようとしない」

今後の展開

弾劾手続きは21日に開始される予定で、上下両院で採決が取られる。両院は弾劾の事由を調べる合同委員会を指名する必要がある。

合同委員会は弾劾に相当すると判断し、上下院で3分の2以上の賛成票が得られれば、弾劾が成立する。

マングワナ氏は、「あした動議が提出される予定だ。(中略)問責事由はかなり明白なので、水曜日(22日)には議会で採決が行えるだろう」と語った。

野党「民主変革運動(MDC)」のツァンギライ派は過去にムガベ大統領を弾劾しようとしたことがあるが、失敗している。しかし今回は、上下両院で大幅な多数を占める与党が賛成する見通しで、大統領の弾劾が成立する可能性が高い。

弾劾が成立すれば、ムガベ氏は武力によってではなく合法的に退陣させられたと軍は主張することができる。ムガベ氏の後継には、現在副大統領のフェレケゼラ・ムフォコ氏が指名されることになる。

しかし、ムフォコ氏はグレース夫人の支持者として知られており、軍は20日にZANU-PFの党首に指名されたムナンガグワ氏が新大統領としてより望ましいと考えている。

なぜこのような状況になったのか

ムナンガグワ氏が2週間前に解任された際、ムガベ大統領が妻を後継に据えようとしていると判断した軍は強く反発した。

ジンバブエ経済が深刻な危機に直面するなか、ムガベ大統領への支持は弱まりつつあった。

軍の兵士たちは先週、国営放送局を占拠し、大統領を自宅軟禁したが、軍がクーデターを起こしたとの見方を否定していた。

ムガベ大統領は、首都ハラレ近くの「青い屋根」と呼ばれる自邸に軟禁されていた。

首都ハラレとその周辺
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