東芝がようやく決算発表 赤字9656億円

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東芝は10日、同日が期限となっていた2017年3月期の有価証券報告書を関東財務局に提出し、上場廃止の可能性が高まる事態を回避した。

経営危機に直面する東芝の前期の連結純損益は9656億円の赤字だった。

監査法人のPwCあらたは、決算内容はおおむね妥当だとする「限定付き適正」意見を有報に付けた。

東芝は、2015年に不正会計問題が発覚して以来、経営立て直しに取り組んできた。

問題の発端

不正会計問題では、7年間で累計2248億円の利益が水増しされていたことが明らかになり、最高経営責任者(CEO)を含む複数の経営幹部の辞任につながった。

2016年末には、米国の原子力発電子会社、ウエスチングハウス・エレクトリック(WH)での巨額の損失が明らかになった。同社は経営多角化を図る東芝が2006年に買収していた。

米国の2基の原子炉の建設の遅れや費用増に加えて、2011年の東日本大震災に伴う東京電力・福島第1原子力発電所の事故を受けた原子力発電への世界需要の低下で、東芝の財務状況は悪化していた。

今年3月には、経営破綻したWHが米連邦破産法11条の適用を申請している。

米国子会社ウェスチングハウスの損失は東芝の屋台骨を揺るがした

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監査法人の意見

決算内容をめぐる監査法人との協議がまとまらないなか、東芝は決算発表を数カ月にわたって遅らせてきた。

PwCあらたは10日に17年3月期と4-6月期について「限定付き適正」との意見を出し、一部に問題はあるものの、おおむね適正との判断を示した。

上場廃止は回避できるのか

監査法人から「限定付き適正」意見を得たことで、東京証券取引所から上場廃止となる目の前の危険は遠ざかった。

東芝が債務超過になったことを受けて、東証は東芝を8月1日付で1部から2部に降格させた。

東芝が2年連続で債務超過となった場合には上場廃止となる可能性が高い。上場維持できるかどうかは東証の判断次第だ。

東海東京証券のマーケットアナリスト、仙石誠氏は、「上場廃止という目前にあったリスクの回避に向けて東芝は一歩前進した」と指摘した上で、「だがこれは始まりに過ぎない」と述べた。

東芝は回復できるのか

東芝は米国での巨額損失を埋め合わせるため、極めて重要な半導体部門を売却する必要があるが、売却交渉は難航している。

東芝は米韓日の投資家連合を優先交渉先としているが、これには同じく買収を目指し東芝の提携先でもあるウエスタンデジタル(WD)が反対し、訴訟を起こした。

東芝は半導体製造で世界第2位。同社製の半導体はデータセンターからiPhone、iPadを含む消費者向け製品まで世界中で使われている。