リビア統一政府の暫定首相がトリポリ到着 反対勢力の抵抗続く

トリポリの海軍基地に到着したサラジ暫定首相(30日)

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内戦状態にあるリビアで、新たな統一政府の樹立を目指す大統領評議会の執行部が30日、首都トリポリに到着した。しかし、反対勢力の抵抗が続いており、空路が封鎖されるなどしたため、隣国チュニジアに拠点を置いていた大統領評議会は、船を使ってトリポリ入りした。

トリポリの海軍基地に到着した暫定首相のファイエズ・サラジ氏は、和解し新たなページを刻む時が来たと述べ、政府機関の構築と停戦の意向を表明した。AP通信によると同氏は、「復讐や疎外、嫌悪、憎しみによって国造りはできない」と語った。

国連の仲介による新政府に反対し、トリポリの支配を続ける勢力を率いるハリファ・グウェイル氏はテレビ放映された演説で、新政府の執行部を侵入者と呼び、「非合法のよそ者は、降伏して我々の支配の下で安全を得るか、元の場所に戻るかだ」と述べた。

国連のマーティン・コブラー特別代表は、大統領評議会の到着はリビアの民主化や、平和と安全、繁栄の道筋の「重要な一歩になった」と述べ歓迎した。コブラー特別代表は声明で、「公的金融機関を含む公の組織が、即時に平和的で秩序立った権限移譲を手助けすべきだ」と述べた。

ケリー米国務長官は、「進歩を止めようと妨害する時ではない」と語った。

リビアでは、2011年に北大西洋条約機構(NATO)の支援を受けた反体制派が長年独裁者だったカダフィ大佐の政権を倒して以来、内戦が続いている。

2014年以降は、トリポリを支配する勢力と、約1000キロ東にある港町トブルクに拠点を置く勢力がそれぞれ政府を樹立して対立してきた。

リビア国内の勢力図(青緑が国際的に認められた政府が掌握した地域)
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昨年12月には、双方の一部政治家らが国連の仲介による統一政府の樹立に合意したが、カダフィ政権打倒への動きが始まったに後に多数生まれた武装勢力の全てが同意するには至っていない。

合意によって、9人のメンバーからなる大統領評議会が形成された。これには暫定首相のファイエズ・サラジ氏も含まれる。

現地で取材するBBC記者は、サラジ氏らが政府機関を掌握できるかどうか不明だと指摘する。反対勢力との激しい対立が続くほか、提案された閣僚メンバーの所在がリビア各地に散らばっているためだ。

リビアで生じた政治・安全保障の空白は、過激派組織「イスラム国」(IS)が同国内に足がかりを築くきっかけとなった。

国連が後押しする統一政府に反対するデモ(今月25日、トリポリ)

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