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静岡県の人口 360万人割る 減少に歯止めかからず

 静岡県が1月21日に発表した2月1日現在の静岡県の推計人口は前月から3412人減の359万6643人。1986年11月以来、35年3カ月ぶりに360万人を割り込みました。少子高齢化による自然減と若者の県外流出に歯止めがかからず、2007年から減少が続いています。背景や関連する動きについて1ページにまとめました。
 〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・松本直之〉

最大要因は「出生数-死亡数」 「転入者数-転出者数」も減

 静岡県の人口は07年12月の379万7333人をピークに、14年7月には370万人を割り込み、その後も減り続けている。最大の要因は出生数から死亡数を引いた自然動態のマイナス。今月7日に県が公表した1年間(20年10月~21年9月)の推移では、出生数が2万2282人なのに対し、死亡者数は4万3180人。自然動態だけで1年間に2万898人減少した。

静岡県推計人口の過去10年間の推移
静岡県推計人口の過去10年間の推移
 転入者数から転出者数を引いた社会動態も追い打ちを掛ける。外国人の移住者増などで19年にはプラスとなったが、新型コロナウイルスの影響による外国人の流入減と若者の県外流出などで、21年は社会動態も5824人減少した。
 地域別にみると、全域で減少傾向が見られる。21年9月までの1年間に全市町で人口が減少し、22年1月中に人口が増加したのは2人増の湖西市のみだった。
 川勝平太知事は360万人割れを受け、新型コロナウイルス禍で暮らし方や働き方、人の流れが変化し、地方回帰の動きが加速しているとし「今こそ東京一極集中の時代から地方活躍の静岡時代へと転換を図るチャンスと捉え、魅力あふれる地域を創生し、人口減少の克服に向けて全力で取り組む」とコメントした。

 ■県施策、有効打にならず 新年度も独自性なし
 21日に公表された静岡県推計人口の360万人割れ。県はさまざまな人口減少対策を展開するが、減少を止める有効打になっていない。「地方創生」が叫ばれた2015年に策定した人口減少対策の総合戦略では、20年に転出入が均衡する目標を掲げたものの、県の施策だけでは達成不可能だと18年に数値目標を取り下げた経緯もある。
 県が10日に発表した22年度当初予算案では、移住・定住促進策に2億1200万円を計上した。移住者に支給する支援金や移住相談センターの運営に充てるが、県の独自性は見られない。
 21日に開かれた県の総合計画を審査する県議会常任委員会でも、人口減少対策はやり玉に挙がった。委員が指摘したのは目標の低さ。22年度から4年間の成果指標を掲げる同計画で「移住相談窓口等を利用した県外からの移住者数」を20年度の1398人から1650人に増やすとした。年間2万6千人以上が減少する現状からすれば、低すぎるとの指摘はうなずける。
 委員は「もっと高い目標を掲げてもいい。県を挙げてやるべきテーマだ」と指摘した。

民間にも危機感 「静岡移住」促進へ事業本格化

 新型コロナウイルス禍で地方移住への関心が高まる中で、静岡鉄道(静岡市葵区)が県内への呼び込みに向けた事業を本格化させている。空き家改修を手掛ける不動産業者と連携して物件を提案し、移住相談会で商業施設を紹介するなど、市街地の魅力をPRしながら住宅や小売などの既存事業活性化を狙う。

空き家買取専科のメンバーらとのミーティングの様子。静岡移住計画では他業種との連携を進めている=21年12月、静岡市葵区
空き家買取専科のメンバーらとのミーティングの様子。静岡移住計画では他業種との連携を進めている=21年12月、静岡市葵区
 事業の中核を担うのは、2020年に始動した都市部からの勤労世帯呼び込みを図るプロジェクト「静岡移住計画」。専用ウェブサイトを設けて住まいや働き方などに関する最新情報を掲載し、移住相談を受け付ける。県内で働く移住者の事例も紹介する。
 21年にはリモートの相談会などを10回ほど開き計約200人が参加し、静岡市内への移住を決めた世帯があった。
 移住後の住居の選択肢を広げるため、他業種との連携も進める。春以降には、空き家買い取り・リノベーション事業の「空き家買取専科」を運営するスイーツインベストメント(同市駿河区)とともに、JR静岡駅周辺で「移住体験ツアー」を開く。
 首都圏などから参加を募り、駅周辺を散策する。商業施設や改修した住居の見学をコースに盛り込み、移住後の生活感を体験してもらう内容だ。
 県によると、県内移住の相談件数は増加傾向にあり、20年度は1万1604件と過去最高を記録。移住者数は前年度比8・9%増の1398人だった。
 静岡鉄道沿線以外の伊豆、藤枝、焼津などの県内各市でも相談会などを開催していく。同社が移住事業に本腰を入れる背景には、県内人口の減少が鉄道や小売、自動車販売といった事業の屋台骨を揺るがしかねないという危機感がある。
 不動産ソリューション事業部の大橋美咲さんは「生活に密着したサービスを展開する企業として、方策を考えていきたい」と話す。

明るい兆し? 移住希望、2年連続全国1位

 首都圏から地方への移住支援に取り組む認定NPO法人ふるさと回帰支援センター(東京)は25日、移住相談者を対象に調べた2021年の都道府県別移住希望地ランキングを発表し、静岡県が2年連続で1位になった。

ふるさと回帰支援センターの移住希望地ランキング
ふるさと回帰支援センターの移住希望地ランキング
 静岡県は20~60代の各年代でトップ、70代以上でも2位だった。同センターの稲垣文彦副事務局長によると、新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及し、首都圏から近距離への移住ニーズが増えたことが、本県の人気の要因だという。市町と連携して移住フェアやセミナー、出張相談会を積極的に開催した効果も大きかったとみられる。さらに、稲垣副事務局長は本県の人気について、相談窓口の対応が非常に丁寧で、移住希望者に安心感を与えているためと分析。「決して距離が近いだけが人気の理由ではない」と指摘した。
 同センターへの21年の相談件数は前年比29%増で、過去最多の4万9514件だった。新型コロナで一時的に移住の検討を控えていた人たちが再び動き始めたことも反映しているという。
 稲垣副事務局長は「ライフスタイルを変え、地域とのつながりを持って生きたいと希望する人にも魅力的」と話し、今後も本県への移住希望者が増えるとの見方を示した。その上で「市町だけでなく住民も一体となって、移住者を迎える態勢を整えることが大事」と強調した。

唯一 100年間人口増続く都道府県は・・・埼玉

 総務省が3日に確定値を公表した2020年10月1日時点の人口推計で、埼玉県は前年同期比3千人増の734万5千人となった。調査月などが異なり比較できない終戦前後を除けば、47都道府県で唯一、1920年の統計開始から100年にわたり人口増が続いている。都心のベッドタウンとしての人気が要因だ。

埼玉県庁
埼玉県庁
 経済産業省のホームページに「知る人ぞ知る?埼玉県」と題したコラムでデータを紹介した同省経済解析室の鈴木博史係長は「長年住んでいるが、街が発展し続けている」と話す。首都圏の中で同県の持ち家比率が高いことなどを挙げ「東京に隣接して便利だし土地も安い」と住みやすさを評価した。
地域再生大賞