そごう・西武スト 展望見えず、苦渋の決断 「百貨店死ぬ」危機感も【大型サイド】

 百貨店そごう・西武の労働組合が、約900人の大規模ストライキという苦渋の決断を下した。米投資ファンドへの売却話で蚊帳の外に置かれ、会社や従業員の将来展望が示されない中で「伝家の宝刀」を抜かざるを得なくなった格好だ。顧客への影響を避けようと親会社と交渉したが、実りがないまま売却は決定。売却後、家電の店舗がフロアを占めるプランに対し「百貨店が死んでしまう」との危機感も背景にある。

西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
セブン&アイ・ホールディングス(左)と西武のロゴマーク
セブン&アイ・ホールディングス(左)と西武のロゴマーク
スト前日の営業を終えた西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区
スト前日の営業を終えた西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区
スト前日の営業を終える西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区
スト前日の営業を終える西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区
西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
西武池袋本店=30日午後、東京都豊島区
セブン&アイ・ホールディングス(左)と西武のロゴマーク
スト前日の営業を終えた西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区
スト前日の営業を終える西武池袋本店。31日は臨時休館する=30日夜、東京都豊島区

 売却計画で労組が最も懸念するのは、米ファンドと連携する家電量販店ヨドバシホールディングスの動向だ。ヨドバシは東京都内の主力店、西武池袋本店の不動産取得を予定しており、「テナントとして百貨店に入るのではなく、われわれが量販店のテナントとなる計画だ」と寺岡泰博委員長は批判する。
 もともとあった売り場の面積が減少し、百貨店の品質を象徴する高級ブランドなどの撤退につながりかねない。突出した収益を上げる池袋本店が傾けば、会社全体の経営が立ちゆかず、従業員の雇用が危ぶまれる。
 売却計画が発表された昨年11月以降、先行きへの不安が広がり、労組は百貨店の親会社、セブン&アイ・ホールディングスに説明を求めた。だが「直接の雇用者でない」と交渉を拒否され、今年7月にスト権を確立。徹底抗戦も辞さない姿勢を示した。
 セブン側はようやく交渉に応じたが、協議の期間は1カ月あまり。ストの事前通告を受け「適切な範囲で人員の受け入れを含め協力する」との声明を出したが、組合側の不信感を払拭することはできなかった。
 大手百貨店では61年ぶりのストを、高島屋や三越伊勢丹、大丸松坂屋といった同業他社の労組も支援。売却により、業界3位の売り上げを誇る西武池袋本店の姿が大きく変われば、業界全体の衰退傾向を助長しかねないとの懸念が広がる。
 ストを巡っては、戦後の労働運動が盛んな時代に頻発し、1970年代半ばにピークとなったが近年は減少している。厚生労働省によると、2009年以降、半日以上の実施は年間50件以下。今回のように、著名な大企業では極めて異例だ。
 日本労働弁護団元会長で、労使関係に詳しい徳住堅治弁護士は「セブン側は売却計画で株主の意向ばかり気にして、従業員を重要なステークホルダー(利害関係者)と認識していなかったように見える」と指摘。労組と十分に話し合わなかったのは「経営陣の判断ミスだ」と批判した。

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