新設ラッシュ「データサイエンス学部」なにを学ぶの? 卒業後の進路は

2023/04/20

■親のための学部・学科講座

まさにいま「トレンド学部」と言われるデータサイエンス学部。さまざまな大学でデータサイエンス学部が新設が続いていますが、どんな教育が行われているのでしょうか。そして、気になる卒業後の進路は?(写真提供=滋賀大学)

データサイエンスとは?

インターネットなどを通じて大量に集められ、蓄積された多様なデータ(ビッグデータ)を分析し、ビジネスや社会の課題解決に役立てるための学問です。データサイエンスが世の中のために活用された最近の例としては、コロナ禍での人の流れの可視化や感染者数の予測などがあります。

データサイエンスの知識と技術の専門家である「データサイエンティスト」は、近年需要が高まっている職業の代表例です。厚生労働省が2022年にリニューアルオープンした職業情報提供サイト「job tag」では、データサイエンティストがビッグデータを解析した情報を活用することにより、「これまで経験や勘で行われてきた仕事の効率性、競争力を高めたり、いままでできなかったことが可能になる」と説明しています。経済産業省は、AI/IT人材が30年までに最大約79万人不足すると試算しています。

国内初開設はどこの大学?

データサイエンス学部は、データサイエンスに関連する知識、技術を幅広く学習する学部で、17年に滋賀大学が開設したのを皮切りに、18年に横浜市立大学、19年に武蔵野大学、21年に立正大学に開設され、理工学部や情報学部などにデータサイエンス学科やコースを設ける大学が相次ぎました。

23年はさらに新設ラッシュで、一橋大学が72年ぶりの新学部としてソーシャル・データサイエンス学部を開設するほか、名古屋市立大学、京都女子大学、大阪成蹊大学がデータサイエンス学部を、順天堂大学は健康データサイエンス学部を開設します。

文系・理系ともに受験可能

文系・理系いずれの生徒も受験できる文理融合系の学部になっており、23年度募集要項を見ると、一般選抜ではほとんどで数学が必須科目ですが、出題範囲は大学入学共通テストと同じく「数学I・数学A」「数学Ⅱ・数学B」が大半で、主に理系の生徒が学ぶ「数学Ⅲ」は一橋大学や滋賀大学、大阪成蹊大学など一部の大学で選択問題として出題されるのみとなっています。

数学の配点は、一橋大学、横浜市立大学、名古屋市立大学では他の科目より高くなっており、その他の大学は、日程によっては国語や外国語と同じか、外国語より低い場合もあります。武蔵野大学、立正大学では、外国語と国語、地歴公民など文系科目のみで受験できる日程も設けています。

滋賀大学は、17年に日本初となるデータサイエンス学部を設置しました。

「設立した背景には、アメリカをはじめ、世界中でデータサイエンスのプロフェッショナルを求める動きが高まっていたこと、以前から経済学部では計量経済学やデータ分析などデータサイエンスと親和性が高い分野を扱っており、学部設立の条件が備わっていたことがありました」

そう話すのは、データサイエンス学部の佐藤正昭教授です。

「あらゆる種類のデータを取り扱うという学問の性質上、データサイエンスは非常に汎用性が高く、応用できる分野が経済、医療、教育、気象など多岐にわたるのが特徴です。当学部の学生は1年生と2年生で数学、データ分析、AI、プログラミングなどデータサイエンスの基礎を学び、3、4年生ではさまざまな専門分野の教員のもと、実践的なデータ分析や演習に取り組みます」(佐藤教授)

文系出身でも大丈夫?

佐藤教授によると、学生の内訳は「理系出身者のほうが、やや多め」とのこと。データサイエンスの学習には、数学をはじめ理系科目の知識は欠かせませんが、実際に社会へ出て仕事をする際には、データ分析の結果や課題解決の方法を他者に伝える場面で、コミュニケーション力や語学力なども必要になります。

「当学部の統計学の授業は、高校の数学Ⅲの内容から始めるので、文系出身で高校時代に数学Ⅱ・Bの範囲までしか学習していない学生でも問題ありません。高校では文系に進んだものの、数学やコンピューターを扱うことに抵抗がない人にとっても、データサイエンス学部はいい選択肢でしょう」と佐藤教授は語り、こう続けます。

「データサイエンスを学ぶうえで必要なのは、社会の課題に目を向け、それらを解決するために立ち向かおうと思えるチャレンジ精神です。将来やりたいことが具体的に見つかっていない人でも、チャレンジ精神と学ぶ意欲があれば、この分野への適性はあると思います」

学ぶうえで重要な「独創性」

武蔵野大学は、19年にデータサイエンス学部を開設。その年に入学した第1期生が、23年3月に卒業を迎えます。

データサイエンス学部長の清木康教授が、同学部の特徴的な授業として挙げるのは、「未来創造プロジェクト(PJ)」と呼ばれる研究連動型学習です。

「学生は、1年次の後期から学部の教員が行う研究や、企業との共同研究に参加し、チーム内における自分の研究課題を設定します。授業で学んだ知識やスキルをその課題解決のために活用したり、年1度の発表会で自身の研究成果をプレゼンテーションしたりする経験を通じて、実践力を養うことが目的です」(清木教授)

同学部では、有明キャンパスに設置したアジアAI研究所が提携する、タイやインドネシアなどの大学との共同研究や国際プロジェクトにも積極的に参加しています。国際学会で論文を発表し、賞を受賞する学生もいるそうです。

学部が求める学生像について、清木教授は「理系科目への興味は、あるほうが望ましい」としつつ、データサイエンスを学ぶうえで重要なのは、独創性だと語ります。

「聞き手をひきつけるプレゼンテーションができるとか、プログラムを組んで何かを作ったことがあるとか、自分で考え、創造できる力を持っている人にこそ、データサイエンスを学んでほしいですね。本来持ち合わせている独創性に、大学で学ぶ技能と知識が加われば、素晴らしいデータサイエンティストが誕生すると思います」

「世界のどこでも働ける」

データサイエンス学部の卒業生の就職先は、IT系、金融系、製造業、シンクタンク、コンサルティング会社など、幅広い業種にわたっています。

「データサイエンティストという職名では募集していなくても、データを活用した課題解決は、どの企業でも求められています」(滋賀大学の佐藤教授)

「データサイエンスの知識と技術があって、さらにビジネスの現場でコミュニケーションをとれる英語力があれば、世界中のどこでも仕事を見つけられるでしょう。今の世の中、データサイエンティストは、それだけ需要の高い職業です」(武蔵野大学の清木教授)

前述の職業情報提供サイト「job tag」では、データサイエンティストについて「人材不足は顕著であり、好条件を提示する会社が出てきている」と書いています。社会の高いニーズに対応すべく、データサイエンス学部は今後も人気を集めそうです。

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