国が2013~15年に生活保護基準額を引き下げた決定について、名古屋高裁は30日、控訴審判決で初めて違法と認定した。決定をめぐる一連の訴訟で国側は「11勝13敗」。さらに敗訴が続く可能性がある。生活保護の基準額は国だけでも47の制度と連動し、基準見直しとなれば多方面への影響が避けられない。
「判決を精査し関係省庁や自治体と協議し、適切な対応をとりたい」。同日の判決後、厚生労働省幹部はこう述べた。4月の大阪高裁で国側が勝訴していることも踏まえ、最高裁に上告するとみられる。
13年度の生活保護世帯は約159万世帯(約216万人)。政府は基準額を3年間で平均6・5%、最大10%引き下げ、計約670億円の保護費を削減した。都市部の夫婦と子ども1人世帯の場合、月1万6千円の減額だった。
今回の判決を受け、原告代理人の森弘典弁護士は「全ての生活保護利用者への謝罪と、13年より前の基準に戻した上で、未払い分をさかのぼって支給することを求める」と強調。仮に利用者全員の基準額を見直せば、対象は210万人以上になる。森弁護士は「処分取り消し訴訟でこれほどの規模は前例がない」とみる。ただ、すでに亡くなっている利用者もいるなど、難しい対応となりそうだ。
低所得者支援の47制度、基準は生活保護
基準額はほかの制度にも影響…
- 【視点】
画期的な内容となった名古屋高裁判決。争点となった大幅な生活保護基準額引き下げは、どのような過程で決まったのでしょうか。記事の一節。 〈12年にはお笑い芸人の母親の生活保護受給が明らかになり、「生活保護バッシング」が激化。自民党が同年の衆院
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