台風7号が近畿地方を縦断して一夜明けた16日、道路の陥没や土砂崩れなどの被害が明らかになった。線状降水帯が発生し、大雨特別警報や緊急安全確保が出された鳥取市内では、複数の集落が孤立した。

 鳥取県と鳥取市によると、午前9時半時点で人的被害は確認されず、鳥取市の佐治川周辺や鹿野町などで592世帯、1233人が孤立状態になっているという。

 道路の冠水や土砂の流出が相次ぎ、県が管理する道路17カ所が全面通行止めに。倉吉市や三朝(みささ)町では床上浸水4件、床下浸水16件が確認された。

 河川の護岸や橋が崩落した影響で、鳥取市や八頭町の一部で断水が発生し、給水車を派遣するなどして対応している。平井伸治知事は災害対策本部合同会議で「孤立の解消を急ぎ、寸断した道路の仮復旧を急いでほしい」と指示。緊急の補正予算を計上し、復旧にあたる考えを示した。

 鳥取市用瀬(もちがせ)町では、国道482号が大きく崩れ落ちていた。現場は15日の大雨や上流の佐治川ダムの放流により増水した佐治川沿い。16日朝に様子を見に来た同町内の森田訓浩(のりひろ)さん(50)と娘の楓さん(14)によると、15日午後8時ごろには崩落していたという。

 楓さんは同日、現場のそばに住む同級生から「今から避難する」とLINEで連絡を受け、「とにかく心配だった」と話した。

 鳥取市内では15日から、各地で避難所が開設。佐治町コミュニティセンターでも住民たちが不安な夜を過ごした。

 林業の谷口和正さん(44)は15日午後3時半ごろ、佐治川に面した自宅の玄関に水が押し寄せたため、「このままでは危ない」と母の鈴美さん(77)を連れ、着の身着のままで身を寄せた。

 施設前の佐治川沿いの道路が崩落し、その様子を2階から見ていた谷口さんは「信じられない光景だった」と振り返る。その後、座布団を枕に横になったが、ほとんど眠れなかったという。

 一夜明けた午前9時ごろ、自宅の様子が心配で見に行った。浸水はまぬがれたが、断水状態だといい、「今後の生活再建には時間がかかりそうです」と話した。

 京都府綾部市篠田町では、山から土砂や倒木が流れ出て民家に押し寄せた。市によると、15日午前0時半ごろ、住民から「家の前に木が流れ込んでいる」と消防に通報があった。倉庫や家屋が損壊したが、けが人はいなかったという。

 交通機関やインフラへの影響も続いた。JR西日本によると、岡山と鳥取を結ぶ因美線と伯備線のほか、岡山や奈良、滋賀県内の路線などでも運転を見合わせた。