28年の谷本県政に幕「文化の集積に磨きをかけた」
【石川】現職最多の7期28年を務め、今月26日で任期満了を迎える谷本正憲知事(76)は25日、最終登庁日を迎えた。後任の馳浩新知事(60)に事務を引き継いだあと、職員から花束を受け取り、拍手に包まれて県庁を去った。
朝5時すぎ、谷本知事は日課の散歩のため自宅を出た。待ち構えた報道陣には「いつもと変わらんよ」と笑みを見せた。1時間10分ほどの散歩では「ようやく公人という意識から解放される」と安堵(あんど)の言葉も漏れた。
25日は能登半島地震から15年の日でもある。一報を受けてすぐに防災服に着替えて県庁に向かったことも回想した。「もう地震で跳び起きることもなくなるんやね」と語って自宅に引きあげた。
午前は金沢市内であいさつ回りを済ませ、午前11時半ごろ県庁に。午後からは馳氏に県の予算概要や長期構想などを引き継いだ。谷本知事は当面の課題に新型コロナウイルス対策をあげ、「感染状況は落ち着いてきたが、急速に減ってはいない」と健康福祉部と密に連携するよう助言した。
馳氏は谷本知事に、「まだまだ県政のために協力してほしい」と語り、県公立大学法人理事長への就任を打診。谷本知事は「前向きに検討したい」と応じた。
その後、最後の知事会見に臨んだ。
初当選した1994年は、「バブル崩壊後、デフレ経済が始まる時期だった」と回想。一方で、「国民の価値観が、規模の大きさから質の高さに変わったことは、石川県にとって追い風になった」とも語った。金沢城の復元や、国立工芸館の誘致などには、「県の文化の集積に磨きをかけた」と胸を張った。
また、能登空港の整備や、のと里山海道の無料化、北陸新幹線の金沢開業などを列挙し、「遠隔の地とのイメージを払拭(ふっしょく)できた」と誇った。
会見後は県庁1階のロビーで退任セレモニーが開かれた。県職員から花束を受け取り、右手を大きく振り上げた。谷本知事は「石川県は伸び盛りだ。特徴を捉えてさらに伸ばしてほしい」と同僚に向けてエールを送った。
職員の拍手の中、公用車のトヨタ・センチュリーにゆっくりと乗り込み、県庁を去っていった。(川辺真改)
主な出来事
1期目
1994年3月
谷本知事初当選
97年1月
ロシアタンカー「ナホトカ号」の重油流出事故が発生
2期目
99年10月
いしかわ動物園開園
2000年4月
森喜朗内閣発足
同年12月
県民栄誉賞を創設し、第一号として松井秀喜氏に授与
3期目
03年1月
移転した新県庁が始動
同年7月
能登空港が開港
4期目
07年3月
能登半島地震が発生
5期目
13年3月
能登有料道路が無料化し、「のと里山海道」に名称を変更
6期目
15年3月
金沢城公園の橋爪門と玉泉院丸庭園の一般公開が開始
同月
北陸新幹線金沢開業
7期目
20年4月
新型コロナウイルスが県内で流行
同年10月
国立工芸館が開館
21年11月
知事選への不出馬と今期限りでの退任を発表
22年3月
任期満了で退任
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