第4回ゴルゴ13唯一の女性脚本家が託されたラブロマンス 想像した母の愛

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 小説家・漫画原作者の夏緑さんは20年以上、「ゴルゴ13」唯一の女性脚本家としてシナリオを執筆してきました。大学院で生命科学を学び、テレビドラマ「らせんの迷宮~DNA科学捜査」の原作を手がけた夏さんが「ゴルゴ」を徹底的に読み込んで解き明かした「ゴルゴというキャラクターの方程式」とは? 熱烈なゴルゴファンでもある夏さんならではの、愛にあふれた分析をお楽しみください!

【連載】今こそ学ぶゴルゴ13 デューク東郷の教え(全6回)

2021年9月に亡くなったさいとう・たかをさんが残した巨大な遺産にして、現代の古典である「ゴルゴ13」。ゴルゴとはいったい何者なのか。なぜ、私たちは彼に魅了されるのか。半世紀以上ぶれない彼の生き方から、今学べることは何か。プロデューサーの鈴木敏夫さん、作家の佐藤優さん、漫画家の竹宮惠子さん、「ゴルゴ13」唯一の女性脚本家・夏緑さん、最多のゴルゴ脚本を執筆してきたよこみぞ邦彦さん、「最強のゴルゴ通ライター」成田智志さんと考えます。

 ――夏さんは、ゴルゴをどのような人物として捉えているのですか。

 私が「ゴルゴ13」の脚本を書き始めた時点で、すでに単行本は100巻以上出ていました。それを読み込むことで見えてきたのが、劇画「子連れ狼(おおかみ)」(小池一夫原作・小島剛夕作画)の主人公・拝一刀との共通性です。「ゴルゴ」の初期作品も、実は小池先生が脚本を担当されている。どちらも寡黙で、職業は殺し屋。女性に対して基本的にはやさしいが、仕事の時には女性も善人も容赦なく殺す。拝一刀の行動原理を分析することで、「ゴルゴの動き方の方程式」も見みえてきます。

 さらに、小池先生が脚本を手がけなくなった後で、ゴルゴのキャラクターがどう変遷していったか、私が書いた脚本に対してさいとう・たかを先生がどのように手を加えられたか、などの要素を方程式に入れていくことで、自分の中のゴルゴ像を整えていきました。

 ――夏さんが脚本を担当し、2020年に「ビッグコミック」に掲載された第600話「銀翼の花嫁」(単行本未収録)では、ゴルゴのデートシーンが登場します。「女が自分でブティックのドアを開けるものではない」と自ら扉を開いたり、食事の席では「野性的な印象に似合わない何て繊細なテーブルマナーだろう…まるで精密機械のよう…」と相手に思わせたり。女性の目を通したゴルゴの魅力が描かれていて新鮮でした。

 さいとう先生からは「ラブロマンスを描いてみたい」というリクエストがあり、ヒロインとなる女性ミシェルが、ゴルゴを好きになるきっかけが欲しいと考えました。「銃を扱う時には女性を抱くように優しく繊細に」と言われますが、ゴルゴはどちらも「超A級」の達人ですし、狙撃の依頼者の本音を見通すなど、実はコミュ力もある。パーティーに潜入することもあるので、テーブルマナーも当然すばらしいだろうな、と。

 ――この作品のラストシーンでは、ゴルゴがなんとも言えない複雑な表情をしていて、驚きました。さいとうさんも大変苦労して描かれたと聞いています。

夏さんが女性視点から描いた脚本を、さらに優しくロマンチックにアレンジしたというさいとう・たかをさん。記事後半では製作の過程のほか、冷酷無比に見えるゴルゴが女性に対して様々な感情を見せた名作の数々を読み解きます。

 あの場面は脚本にはなく、さ…

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