輪島朝市 戻らぬにぎわい 存続危ぶむ声も 石川

川辺真改
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 平安時代に始まり、千年を超える歴史があるとされる奥能登の輪島朝市(石川県輪島市)が、コロナ禍であえいでいる。主力だった県外観光客が激減。出店数はコロナ前から半減し、存続を危ぶむ声もあがる。

 「オマケしてあげる!」「見るだけでいいから!」

 高齢の女性の切実な声が通りに響いていた。

 6月中旬の朝。輪島市の通称「朝市通り」に観光客の姿はまばらで、約300メートル先が見通せた。

 出店して30年以上という女性(70)は「今までで一番ひどい」と嘆いた。商品台に置いたノドグロやカマスの干物は、一向に減らない。普段は午前8時から正午ごろまで営業するが、最近は1時間ほど店じまいを早くしているという。

 フグやカレイの干物を並べていた女性(74)は、「コロナが収まっても10人の客が20人になるだけやろ」と諦め顔だ。奥能登でも感染が拡大した5月は1カ月間休んだ。6月に再開したが、仕入れる魚を半分に減らしたという。昨年2月以降、拡大と収束を繰り返す状況に、「難しい世の中ですね」とつぶやいた。

     ◇

 コロナ禍で、県内の観光地は軒並み打撃を受けているが、輪島朝市は特に深刻だ。

 2015年にNHKの連続テレビ小説「まれ」の舞台として脚光を浴びた後、年50万~80万人ほどが訪れてにぎわっていたが、昨年は約15万人にとどまった。

 「ツアー客の落ち込みが痛い」と話すのは、朝市の組合長の冨水長毅さん(52)。朝市を訪れていた客の8~9割は、県外から。さらに、その多くは自家用車ではなく、県内や隣県の名所も一緒に巡る観光バスのツアー客だという。

 北陸新幹線の恩恵をダイレクトに受ける金沢市などは、観光振興策で一定の回復が期待できるが、「金沢からさらに車で2時間かかる輪島まで来てくれる人は少ない」と冨水さん。

 組合によれば、新鮮な地魚や野菜から輪島塗の箸など伝統工芸品まで並ぶ輪島朝市は、平安時代、神社の祭礼日などに住民が生産物を持ち寄って物々交換をしたのが起源とされる。

 フグやフキノトウなど、地元ならではの食材が購入できることに加え、朝市の魅力は売り手との会話だ。だが、「まん延防止等重点措置」が明けて1週間以上過ぎた今も客足は鈍く、冨水さんは「お客さんがいないと会話も生まれない」と嘆く。

 店数はコロナ禍前の約200店から100店舗ほどに。売り手の高齢化も進んでおり、「今休んでいる店が今後出てきてくれるか分からない。このままでは文化を存続していくのも厳しい」。(川辺真改)

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