横浜の自動運転車両逆走事故、ケーブル断線で制御できず

贄川俊
[PR]

 横浜市新交通システムシーサイドライン」で2019年6月に無人の自動運転車両が逆走した事故で、国の運輸安全委員会が18日、調査報告書を公表した。ケーブルの断線で方向転換の指示が車両の制御装置に伝わらず、逆走が起きたと考えられるとした。直前の進行方向を記憶するメモリー機能も逆走に影響していたが、運輸安全委はこれが不必要だったとも指摘した。

 事故が起きたのは、折り返し駅の新杉田駅構内。逆走した車両は時速25キロで24メートル先の車止めに衝突し、17人がけがをした。報告書によると、車両は駅側が出す進行方向の指示を受けて進む仕組みだった。事故当時、新杉田駅に到着した列車に対し、駅側から方向転換の指示が出たが、1両目の車両後部で断線がおきており、車内制御装置に伝わっていなかった。

 一方、この車両には、進行方向の指示がない場合に直前の方向を記憶して進むメモリー機能がついていた。そのため、その後に出された出発の指示で逆走したという。シーサイドラインには、断線や逆走を検知する仕組みがなかった。

 運輸安全委は、メモリー機能は不必要な機能で、なくても正常な運行ができたはずだったと指摘。設計の経緯を調べると、この機能は、2010年に導入された車両の制御装置から採用された。無人運転の鉄道に初めて納入した装置メーカーがつくっていたが、シーサイドラインや車両メーカーはこの機能があることを十分認識していなかったという。

 ほかの無人自動運転の鉄道で、こうした機能がある車両はなかった。

 このため運輸安全委は、無人の自動運転システムの設計・製造をする際は、全体像を把握する主体を決めて、危険を取り除く体制をつくることも必要だとした。国土交通相に、鉄道会社を指導するよう勧告した。安全委が鉄道事故で国交相に勧告するのは初めてという。贄川俊

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

※無料期間中に解約した場合、料金はかかりません