麻薬探知犬メキメキ成長4カ月 成田の訓練センター

福田祥史
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 空港や海の港に着く貨物や旅客の手荷物に隠された大麻や覚醒剤、麻薬のにおいをかぎつけ、密輸入を水際で阻止する麻薬探知犬。新型コロナウイルス感染拡大で入国者は激減しているが、厳重な警戒は変わらない。その探知犬を育成するのが、全国でただ一カ所、成田空港近くの千葉県成田市三里塚にある東京税関麻薬探知犬訓練センターだ。

 「Find it(ファインドイット、捜せ)」。かけ声に促され、大型のラブラドルレトリバー犬が勢いよくベルトコンベヤーに並ぶスーツケースを探る。ほどなく、麻薬を隠したケースをかぎ分け、その前でお座りした。「Good boy(グッドボーイ、よくやった)」。褒められた犬はうれしそうに尾を振る。

 空港の手荷物エリアを模した施設。4カ月の訓練を終え、麻薬探知犬に認定されるのを翌日に控えたゾロ号(オス、1歳)と、名古屋税関職員で犬を扱うハンドラー研修生の渡辺隆弘さん(23)のペアだ。「いつもより緊張していたが、ちゃんと反応できた」。担当したインストラクターの加藤健さん(39)が評した。

 センターには年2回、公募された探知犬候補と各地の税関が派遣するハンドラー研修生が集まる。候補犬の資質を見極めて育成訓練に入る犬を選び、訓練するのがインストラクターだ。各訓練犬を担当するハンドラー研修生に犬の扱いや捜査方法も指導する。

 加藤さんは2002年に東京税関職員になり、その年の暮れから、ハンドラーとして成田空港で探知犬と取り締まりにあたった。途中、別の部署にも配属されたが、10年以上、犬とともに仕事をしてきた。

 千葉県芝山町の自宅から午前7時ごろに出勤。餌やりや犬舎の掃除、グルーミング(ブラッシングなどの手入れ)をしながら犬の状態を確認し、午前と午後に分けて訓練するのが主な日課だ。

 麻薬探知犬育成訓練は、ダミーと呼ばれる巻きタオルを投げて取ってくる遊びから始める。ダミーを取ってきてハンドラーに褒められるうちに、犬にはもっと遊びたいとダミー獲得欲が湧く。ダミーに麻薬のにおいをつけると、においのするところにダミーがあると覚えて、麻薬のにおいを捜すようになるという。

 犬もハンドラーも性格や特徴は様々で、あるペアに合った指導が他のペアにも合うとは限らない。それぞれに適した訓練や指導が求められる。そして何より、「ハンドラーは犬から信頼される存在にならなければいけない」と加藤さん。

 「褒められたり励まされたりした時、それが本心からかどうか、声のかけ方で犬はわかる。犬が『この人といると楽しい』『この人が一緒なら怖い場所も大丈夫』と思えれば、難しい場面も乗り切れる」

 麻薬探知犬は現在約130頭が全国の税関で活動している。合格率は平均3割と厳しいが、昨年12月に修了した今年度後半の訓練でも新たに7頭が認定され、ペアを組むハンドラーに連れられて各地に赴いた。

 加藤さんは「4カ月の訓練でめざましい成長を遂げる犬にいつも驚かされ、誇らしい気持ちになる。研修生も犬を励まし、寄り添って、犬と一緒に本当に頑張った」とねぎらった。(福田祥史)

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