静岡銀行と山梨中央銀行、業務提携 提携効果100億円

和田翔太
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 静岡銀行山梨中央銀行は28日、店舗や事務部門の共同化などを盛り込んだ包括的な業務提携で合意した。提携効果は両行合わせて今後5年で100億円を見込む。両行にとって営業エリアの拡大や経費削減にもつながり、収益基盤の強化策になるという。

 両行の頭取は同日午後、東京都内で記者会見した。静銀の柴田久頭取は提携した理由について、「(業務の)効率化が期待でき、両行の成長戦略になりうる」と説明した。山梨中央銀行関光良頭取は「抜本的な策を打っていかなければならず、理想的なパートナーと手を組むことが最善と考えてきた」と述べた。

 具体的な提携内容として両行は、①重複エリアの店舗共同化や相手方店舗を活用した営業エリアの拡大②融資先など互いの取引先に対し、販路拡大など営業面で支援する③山梨銀の店舗でグループ会社の静銀ティーエム証券が金融商品仲介業務を行うなどグループ会社を相互に活用するなどの施策を挙げた。

 提携の具体的進め方として、両校の頭取をトップとするプロジェクトチームを設置し個々の協業案件を具体化する。

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 両行は現時点で相互の株式は持っていないが、提携効果を高めるために一定数、相互に取得するという。時期や取得する株数については今後、協議する予定だ。

 両行は2年前から接近。2018年に「富士・箱根・伊豆地域の観光振興に係る連携に関する協定」、昨年7月にはNEXCO中日本を加えた3社による連携協定を締結するなど地方創生に向けて協業を進めてきた。

 21年度には中部横断自動車道の全面開通が予定されている。また、コロナ禍もあって、静岡、山梨両県は「フジノミクス」として経済的結びつきを強めようとしていた。静銀の柴田頭取は「成果を目に見える形でやっていき、これを一つの地方銀行のモデルケースになるようにやっていきたい」と意気込みを語った。

 ただ、現地時点で両行は経営統合には否定的だ。今回の提携について発表資料の中で「互いに独立経営を堅持し」との一文を入れ、「地域で築き上げた顧客基盤やブランドを維持し」と強調している。

 提携の背景には、日本銀行の異次元緩和策で超低金利が常態化し、利ざやなどの収益が悪化していることがある。さらに新型コロナウイルスが拍車をかけ、銀行経営には不透明感が漂っている。菅義偉首相はこれまで地銀の再編の必要性に言及し、肝いりの政策とも言われている。10月には十八銀行長崎市)と親和銀行(佐世保市)が合併し、新たに十八親和銀行が誕生した。今後も地銀同士の業務提携などの動きが活発になりそうだ。(和田翔太)

 〈静岡銀行〉 1943年創立。本店は静岡市。今年3月末の貸出金残高は8兆9695億円で、全国地方銀行協会加盟行の中で4番目。拠点数は静岡県内173店を含む国内204店、海外5店。最近は不動産分析会社や食品商社と資本提携するなど異業種参入にも力を入れる。

 〈山梨中央銀行〉 1941年創立。山梨県甲府市に本店を置く山梨県内唯一の地方銀行。3月末の貸出金残高は1兆8082億円で、県内のシェアは4割超。拠点数は国内92店のほか、香港に駐在事務所もある。東京でも、多摩地域を中心に店舗展開している。

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