作者は西太后を大伯母にもつほどの高貴な生まれ、その一家が、時代の流れの中で急激に没落して行く。たくさんの兄たち、姉たちは高貴な生まれゆえに辛い目にもあい、家族間も関係も悪化して行く。没落した一家を書いた自伝的小説というと、悲しく暗い物語を想像してしまう。
しかしながら、この小説は、決して悲しいだけの物語ではない。感情に溺れない淡々とした筆致で書かれており、随所にユーモアさえも感じられる。一つのエピソードで一つの章という形になっているので、長編としてだけではなく連作短編としても楽しめる作品である。上巻には9つのエピソードのうち5つのエピソードが収載されている。
それぞれのエピソードには一つの品物がとても印象深く登場する。胡琴、春餅、帽子飾り、満!州語で書き付けたノート、ライラックといった品々だ。この品々は、悲しいエピソードの中でも優しく切なくきらりと光り輝いている存在のように思う。
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