本書は教科書である。哲学書であり思想書でありバイブルでもある。
そして極めて秀逸な参考書でもある。
特に理系脳のクリエイターの場合、理屈から理解したい、理屈を知りたい場合が多いと思うが本書はその疑問を解くひとつの道筋を示している。
個人的に興味深いトピックは3つ。
・スターウォーズ(エピソード4)オープニングのスターデストロイヤーの撮影テクニック。
個人的に知るかぎりあのシークエンスの撮影技術をここまで理論的に技術的に詳しく推測解説した書は記憶になかったように思う。
・カラーチャートの流れからNASA火星探査機オポチュニティに搭載されたコケシ状のグレースケール(サンダイアル)の話。
この一章だけで、科学的に測定する「色」と広報用の「色」が何故ちがうのか、適切な色温度がいかに難しいか、豆知識としても非常に面白く興味深かった。
・人間の認識する画像はかなりいい加減だということ。
無限の情報、階調を持つ自然光景からいかに情報を間引き選別し効果的に記録媒体に写しとるのか、そして万能であると思われてた人間の視覚がいかにいいかげんで良い加減に自分に都合よく情報を切り取っているか 等々。思わずなるほどと唸る記述が多々ある。
VFX/CGカットというのは単に本物や本物らしい表現をそのまま再現することだけではなく、情報を操作して誇張し間引き捨取選択を行い効果的に見せる又は魅せる事である。
それを筆者は理論的に記述している。(いやこれは哲学かもしれない)
本物をそこにあるように表現するのではなく、本物らしく見せる為の手品でいうところのテクニックが必要だと繰り返し強調しているように感じた。
目で見ているものと脳が見ているものは違う
記憶や経験で見ている
例えるなら、写真と絵画の違い。
ありのまま写し取るのが最善で最高であるなら、何故我々は絵画に魅了されるのだろうか?
筆のタッチは悪くパースも寸法も完璧ではないのに?
マンガあるいはアニメでもいい。実写よりマンガ絵のほうが好ましく感じる場合も多いがこれは人間が自分の脳内で勝手に妄想変換しそれを心地よいと感じるからではないだろうか?
行間からは「VFXの絵作りにはそんな裏付けや心理が必要なのではないか?」というような筆者の問いかけが繰り返し述べられる。
VFX関係の解説書、メイキング本といえば古くは中子真治氏の『SFX映画の世界』やあるいは米国のシネフェックス等があるが本書はそれに匹敵するほどの優れた参考書専門書かもしれない。
『かもしれない』、というのは本書がまだ基礎編の第1作目でありそれほど多くの実際例実践例は書かれてないからである。
にしても前述した2誌は制作現場にはやや遠い立場にいる方が筆者であるので、実際的な実践的実戦的手法を「知りたい!」と思う場合、ややピントの外れた記述が少なくない。
本書の執筆者である古賀氏は長年日本のVFX業界に身を置き、その手法や問題点を微に入り細を穿つように記述しており、VFX分野でないキャメラマンや照明マン、美術や制作側にも特撮あるいは合成、CG等の一見複雑怪奇な作業の流れ、仕組みを解説している。
さて、本シリーズは第1弾であり今後第2弾、第3弾と続く予定であるらしい。
今後どのような展開になるか大いに楽しみである。
次回次々回で目からウロコが落ちるような「そうだったのか!」と思わず唸るテクニックが理屈で理解できるような、そんな期待が高まる。
本書は映像を志す全ての者の技術的構造的心理的理論的な解決方に、必読書に成りうる、と確信する。

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アナログ基礎講座(?) 単行本 – 2012/1/15
- 本の長さ208ページ
- 言語日本語
- 発売日2012/1/15
- ISBN-104990511719
- ISBN-13978-4990511715
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登録情報
- 発売日 : 2012/1/15
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 208ページ
- ISBN-10 : 4990511719
- ISBN-13 : 978-4990511715
- Amazon 売れ筋ランキング: - 527,493位本 (本の売れ筋ランキングを見る)
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上位レビュー、対象国: 日本
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2012年2月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
2013年7月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
仕事でテレビ用CGを制作しています。
学校で勉強をした事はなく、
技術的な部分から美的・感覚的な部分まで、ほぼ独学です。
8mmフィルムで自主映画を制作していましたが、
最近は専らAVCHD収録です。
そのような状況における私にとっては、
撮影機材やフィルム・記録方式などの基礎知識が網羅されており、
初めて知る知識も多く、大変勉強になる事も多くありました。
英語の使い方に気を使われているようですが、
「カメラ」と「キャメラ」の使い分けや、
「boom」を「ブーム」と表記されるあたり(経験上、ネイティブの方に通じるのは「ブーン」が近いかと)、
日本映画界における英語の難しさを感じたりもしました。
学校で勉強をした事はなく、
技術的な部分から美的・感覚的な部分まで、ほぼ独学です。
8mmフィルムで自主映画を制作していましたが、
最近は専らAVCHD収録です。
そのような状況における私にとっては、
撮影機材やフィルム・記録方式などの基礎知識が網羅されており、
初めて知る知識も多く、大変勉強になる事も多くありました。
英語の使い方に気を使われているようですが、
「カメラ」と「キャメラ」の使い分けや、
「boom」を「ブーム」と表記されるあたり(経験上、ネイティブの方に通じるのは「ブーン」が近いかと)、
日本映画界における英語の難しさを感じたりもしました。
2015年3月29日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
著者の知識をまとめて教えてくれる感じの本でした。
若干思想の記述などで脱線(文章のまとまり上)している感じを受けましたが、
読み物として考えれば特に気にならないです。
若干思想の記述などで脱線(文章のまとまり上)している感じを受けましたが、
読み物として考えれば特に気にならないです。
2012年3月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
CG業界で20年以上働いてますが、読んでみると「おぉ、なるほど」と膝を打つこと数回、いや数十回
まだまだ勉強する事が沢山あるのものです
自分がこの業界に入って間もない頃、CGはまだ今ほど一般的な時代ではなく右も左も分からない状態でした
そんな時、経験豊富な会社の先輩達がアレやコレやとCG以外のアナログ的な事も含めて教えてくれたものです
CGの業界だからデジタルな事を知ってれば大丈夫、というのは間違いなんですね
CGだからこそ、映像制作に関する様々な事を知っておかなければ良い画作りは出来ない、と厳しく教えられました
ひとつ質問したら10は返ってくる、そんなちょっと面倒臭くて(笑)でも尊敬できて頼もしい
あの頃の先輩が本になったような、本当にもう誰も教えてくれない事が沢山書いてある貴重な本だと思います
CG業界で働く人ならぜひ一度手にされることを強くオススメします
読了後、あなたの作る作品がさらに深い輝きを放つ素晴らしいものになる事を願って
まだまだ勉強する事が沢山あるのものです
自分がこの業界に入って間もない頃、CGはまだ今ほど一般的な時代ではなく右も左も分からない状態でした
そんな時、経験豊富な会社の先輩達がアレやコレやとCG以外のアナログ的な事も含めて教えてくれたものです
CGの業界だからデジタルな事を知ってれば大丈夫、というのは間違いなんですね
CGだからこそ、映像制作に関する様々な事を知っておかなければ良い画作りは出来ない、と厳しく教えられました
ひとつ質問したら10は返ってくる、そんなちょっと面倒臭くて(笑)でも尊敬できて頼もしい
あの頃の先輩が本になったような、本当にもう誰も教えてくれない事が沢山書いてある貴重な本だと思います
CG業界で働く人ならぜひ一度手にされることを強くオススメします
読了後、あなたの作る作品がさらに深い輝きを放つ素晴らしいものになる事を願って
2012年3月5日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
感動しております。古賀さんをもってしかこのような名著は出来ません。
普段、結構ストレスになっていることがバッサリ、的確に表現されており、溜飲が下がる思いです。
自分自身にとっても、勉強であり、かけがえのない復習でもあります。
業界を志す方であれば、購入を勧めたいと思います。
包括的な、しかも、すっと内容が入ってくる丁寧な文章で
教科書としても、とてもよいと思いました。
「もう、だれも....」というところは心に響きますわ。
第2集、第3集と続くんでしょうか。
楽しみです。
普段、結構ストレスになっていることがバッサリ、的確に表現されており、溜飲が下がる思いです。
自分自身にとっても、勉強であり、かけがえのない復習でもあります。
業界を志す方であれば、購入を勧めたいと思います。
包括的な、しかも、すっと内容が入ってくる丁寧な文章で
教科書としても、とてもよいと思いました。
「もう、だれも....」というところは心に響きますわ。
第2集、第3集と続くんでしょうか。
楽しみです。
2012年2月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
本書はVFXの教科書です。が、「アナログ感」たっぷりの読み物でもあります。
企画書、絵コンテ、レイアウト画、撮影、CG制作、編集、等々の作業に行き詰まったら本書を一読されることをオススメします。
本書は「実写映像は何故こう見えるのか」の答えと原理が理解できるようにまとめられています。
「技術は現場で盗め」といわれていた時代の「虎の巻」が本書です。良い時代になったものです。
読後に制作された映像には、ひと艶なにかがプラスされていることでしょう。
続刊が非常に楽しみです。
企画書、絵コンテ、レイアウト画、撮影、CG制作、編集、等々の作業に行き詰まったら本書を一読されることをオススメします。
本書は「実写映像は何故こう見えるのか」の答えと原理が理解できるようにまとめられています。
「技術は現場で盗め」といわれていた時代の「虎の巻」が本書です。良い時代になったものです。
読後に制作された映像には、ひと艶なにかがプラスされていることでしょう。
続刊が非常に楽しみです。
2012年11月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本、古賀さんの自主出版のような本なので、おそらくほかの
方法だとスペシャルエファックススタジオに直接連絡を取る以外
入手方法がなかったかも
方法だとスペシャルエファックススタジオに直接連絡を取る以外
入手方法がなかったかも