【5月26日 AFP】米海軍は25日、特殊部隊「シールズ(SEALs)」隊員の育成訓練に重大な懸念があるとする調査報告書を公開した。調査は、2022年に候補生だった上級水兵のカイル・マレン(Kyle Mullen)さんが訓練中に死亡したことを受け行われた。

 調査の結果、訓練に「複数のシステム上の欠陥があり、これにより候補生が重傷を負うリスクが高い」ことが判明した。

 責任者の監督不十分、リスク評価の欠如、「継続的かつ効果的な医療観察や看護」を行うよう訓練も組織もされていない医療システム、運動能力向上薬の使用などの問題が浮き彫りになった。

 マレンさんは「地獄週間(ヘル・ウイーク)」と呼ばれる、候補生に十分な睡眠を取らせず、肉体の限界まで追い込む訓練期間を終えた後、死亡した。死因は最終的に肺炎と診断された。他にも、入院した候補生が複数いた。

 マレンさんら候補生の一部は、「地獄週間」期間中に呼吸器系疾患となり、治療を受けた。だが、「地獄週間」終了時の健康診断を担当した医師らに、この情報は知らされなかった。医師はマレンさんの健康状態に問題がないと判断し、兵舎で休むよう指示した。

 兵舎では、「医療や救急医療の訓練を受けていない」階級の低い兵士らがマレンさんの観察を続けた。

 軍医はマレンさんに「体調が悪ければ」病院に行くこともできるが、翌朝には候補生全員が診察を受けることになっていると伝えていた。また、マレンさんは繰り返し病院へ行くことを拒否したという。その後、体調が悪化し、救急車が呼ばれた。

 シールズは2011年5月にパキスタンで国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)指導者のウサマ・ビンラディン(Osama bin Laden)容疑者を殺害したことでも知られ、米国の最も危険な作戦を実行してきた。(c)AFP