【8月15日 AFP】米軍の全部門の現役・退役兵15万人を対象にした研究で、近年、米軍内で起こっている自殺者数の増加は、戦闘経験や戦場への派兵のせいではなく、兵士の間で以前からある精神衛生上の問題が指摘されるとする結果が「米国医師会雑誌(Journal of the American Medical AssociationJAMA)」に発表された。

 2001年から08年の間に自殺した83人の質問票データを分析した結果、自殺の増加に関わる危険因子として、男性であること、うつ病または双極性障害(そううつ病)があること、深酒または大量飲酒癖、アルコール関連の問題が挙げられた。

 しかし自殺リスクの増加と、戦闘経験や戦場への派兵回数・累積日数には関連性が見出せなかった。

 カリフォルニア(California)州サンディエゴ(San Diego)にある米海軍健康研究センター(Naval Health Research CenterNHRC)のシンシア・ラードマン(Cynthia LeardMann)氏が率いた同研究は、米軍内の自殺の増加は「軍要員における精神疾患の有病率が高まっている結果だろう」としている。

 米軍ではイラク、アフガニスタンへの派兵と並行して2005年以来、自殺が増加していることが指摘されているが、正確な原因は明らかになっていない。2008年には268人だった米軍の年間自殺者数は2011年には301人に増えている。また自殺を試みた兵士の64%には行動障害の病歴があった。

 論文に付随してJAMAに掲載された論説で、米軍衛生保健大学(Uniformed Services University of the Health SciencesUSUHS)のチャールズ・エンジェル(Charles Engel)氏は「気分障害とアルコール乱用という、効果的な治療法が存在する代表的な精神疾患が米軍内の自殺の先行要因だという発見は、自殺率を減らす方法に希望をもたせるものだ」と述べている。(c)AFP