■「RINNE」はレリクスシリーズの最新作か!?
ゲーム序盤の目的は写真のヴァルキリーの体を取り戻すこと |
事前情報でそんな話を聞いていて,筆者の脳裏にボーステックの"レリクスシリーズ"がよぎったのだが,それは本作を見た瞬間に確信へと変わった。本作はファルコムブランドの商品ではあるが,画面のレイアウト,キャラクターデザイン,世界観などはレリクスシリーズそのもの。レリクスシリーズの最新作と呼んでも過言ではないだろう。
レリクスというと,古くからPCで遊んできたプレイヤーにとってはなじみ深いタイトルだが,実はそういうファンをニヤリとさせる要素も多い。登場するウサギの名前が"チマチマ"や"ジップ"である点などはボーステックの「妖怪探偵ちまちま」や「トップルジップ」を彷彿とさせるし,"魂の訓練場"というエリアでは初代レリクスを模したマップが楽しめるようになっている。
ほかにも,隠しキャラとして日本ファルコムのキャラクターである"ドーラ・ドロン"や"アレス"が登場したり,終盤で戦うドラゴンの名前が"ガルシス"なんてところは,古いゲーマーならピンとくることだろう。このように本作の随所には,日本ファルコム&ボーステック作品のさまざまなモチーフが詰まっているのだ。これは余談だがゲームの途中で登場した暗証番号が,なんだか見覚えのある数字だと思ったら,ボーステックの電話番号だった。これにはイチ業界人としてニヤリとしてしまった。
少々マニアックな話になってしまったが,だからといってエントリーユーザーが遊べないわけではないし,ちゃんと本作だけで完結するように作られているので安心してほしい。本記事では,そんなRINNEの魅力に迫っていくとしよう。
ゲーム中には,自分が今なにをすべきか表示してくれる機能もある。便利! | ムービーによるチュートリアルも。映像による操作の紹介は分かりやすくてよい | ウサギのような姿をしたチマチマ。やっぱり「妖怪探偵ちまちま」が元ネタ? |
MARXによって作られた精神体は,ボディスナッチという憑依能力を持つ | NPCを味方にできたり,偶像を使って特定のモンスターを仲間として召喚したりできる | これはとあるシーンでの画像。そこには「FALCOM&BOTHTECH」との表記が! |
■オマケだと思っている人は認識を改めよう!
一度BSすれば空欄が埋まっていく。コンプリートを目指してプレイしたい |
本作は「ディアブロ」ライクなアクションRPGで,プレイヤーはMARXという組織が生み出した精神体となり,仮想世界の探索を進めていくことになる。操作はオーソドックスで,地面をクリックするとその場所に移動し,敵を右クリックすれば攻撃,左クリックやCtrl+左クリックで特殊能力を発動する。また,キャラクターによってはタイミングよくマウスボタンを連打すると,連続技を繰り出すこともできる。
戦闘に勝利すると,倒した敵が"ボディスナッチ"(以下,BS)できる死体になることがあり,BSすればその体を使ってプレイできる。体によって空を飛べたり,同種族と会話できたり,あるいは魔法が使えたりといった特性が利用できるほか,BS中は死んでしまっても精神体に戻るだけでゲームは続行可能。精神体のみでは戦えないが,制限時間内に死体を見つけてBSすればゲームオーバーにはならない。
ただしこれには例外があり,"ヴァルキリー"系(正式な体)のキャラクターにBSしている状態で死んだ場合は即ゲームオーバー。なんだか不利な気がしなくもないが,ヴァルキリー系のキャラクターにBSしているときは,これまでに憑依したことのある体に変身する"トランスフォーム"(以下TF)や,(ゲーム中盤以降では)鎧をまとう"アイアンクラッド"(以下IC)が行えるというメリットがある。
なんだかBS/FT/ICなどややこしいなと思うかもしれないが,基本はヴァルキリーでゲームを進めて,BSでボディのデータ回収。あとは登場する敵に合わせてTFやICを使って攻略することになるだろう。
敵の数が多いところでは敵にBSしながら連戦(TFでは体力はそのままだが,BSだと体力はその体のものになるため)という作戦もできるが,基本はヴァルキリー/TF/ICで攻略できる。
少々不満があったのがTFからBSするにはいったんヴァルキリーに戻らないといけない点や,TF中はBSできる死体が分からない点。続編を制作するときには,ゲームのテンポを良くするためにも,このあたりは改善してもらいたい。
BSやTF時の各種ボディは使い続けることで成長し,さらには進化するものもあるので,ボディを育てていく楽しみもある。なお,BSしてボディのデータを収集したり,進化をすると"Latency"や"Infomation"などボディの空欄が埋まっていくので,コレクション的な楽しみもある。ぜひともコンプリートを目指してほしい。
BSしたボディの情報を確認。弱点なども分かるので戦術の参考になる | 最初のボス「ドラグーン」。火炎と体当たりによる攻撃を行ってくる | パズルのような場所も。ここでは,魔方陣を時計に見立てて時間をセットするとワープする |
敵は新たに沸くようなことはなく,配置されているもののみ。一部例外もあり,のんびり育成もできる | Latencyに登録されないが,ボディスナッチ可能なモンスターもいる | この世界には,HEAVEN / ALIEN / BEAST / IRONCLAD / HELL / MARXなど6種族が生息している |
■何度も繰り返して遊べる! とは言い難いが……
終盤戦は敵の数が半端じゃない! アクションRPGのツワモノでも苦戦は必至 |
といっても一周めからつらく苦しかったわけではなく,一周めはこの先がプレイしたい! という気持で一気に駆け抜けるように遊んでしまったことは間違いない。ダレる事なく遊べたという点は評価してもいいだろう。
筆者と同様に二周めにチャレンジするのはちょっと……という人であっても,途中からのやり直しはオススメしたい。というのは本作のシナリオには分岐が用意されており,選んだルートによってエンディングが変わるからだ。しかもルートによってはより多くのボスキャラと対決できる場合もある。ちなみにセーブデータは100か所も記録できるので,プレイ途中からのやり直しは楽だった。
最新のCGを駆使したゲームと比較すると,スクリーンショットのファーストインプレッションが弱く,世界観にも癖があるので少々プレイヤーを選んでしまうだろう。しかし,BSしてスロットを埋めていく楽しさやシナリオ分岐によるゲーム展開の変化などはかなり楽しいし,とくに後半で多くなるデカキャラとの対戦シーンでは,手に汗握る興奮を味わうことができた。また,そうしたシーンを盛り上げるBGMや演出なども,十二分にアベレージはクリアしていると思う。演出面では日本ファルコム節が見える部分もあり,ちゃんとボーステックと日本ファルコムがコラボレーションしているんだなと感じられた。
これまでのPCゲーム業界において,続編ブーム,リバイバルブームなどさまざまなブームがあったが,本作品がコラボレーションブームのきっかけになってくれればと……思うのは期待しすぎだろうか?
厳しいことを書いてしまった部分もあるが,これも「RINNE」への愛ゆえと思ってもらいたい。そして本レビューで「RINNE」に興味を持ってもらえたら幸いである。
シナリオ分岐の一つ。制限時間内を逃げ回るか? それとも戦うか? | 寄り道や隠し部屋などを探し当てると,ちょっとしたサブストーリーが楽しめる | 仲間になるNPCは,基本的に戦闘で死ぬことはない。このあたりは賛否両論だろう |
ボスキャラの一体,セーレ。左右の腕を破壊しないと倒せない | 終盤で登場するパルヴァティ。剣とレーザーによる攻撃は強力 | ゲーム中盤から名前が登場するフォボス。背中からはレーザー,口からはブレスを吹く |