月面探査機 JAXA 世界初の「ピンポイント着陸」に成功と発表

1月20日、月面への着陸に成功した日本の無人探査機「SLIM」についてJAXA=宇宙航空研究開発機構はこれまでに探査機から送られたデータなどから着陸目標地点との誤差を100メートル以内とする世界初の「ピンポイント着陸」に成功したことを発表しました。

日本の無人探査機「SLIM」は1月20日未明、世界で5か国目となる月面への着陸に成功しました。

25日、都内で開かれた会見でJAXAはこれまでに探査機から送られたデータなどを詳細に解析した結果探査機は着陸目標地点から東側に55メートルほどの地点に着陸したと推定されることがわかったと明らかにしました。

従来、誤差が数キロメートル単位とされてきた月面着陸で、誤差100メートル以内を目指す世界初の「ピンポイント着陸」に成功したと発表しました。

「SLIM」の機体の撮影に成功

また搭載していた2機の小型の探査ロボットも正常に機能したことが確認され、月面で撮影された画像にはメインエンジンが上を向き、ほぼ鉛直の状態になった「SLIM」の機体が写っています。

この画像では写っていない「SLIM」の画面右側を向いている面に太陽電池パネルが搭載されています。

また、手前にはゴツゴツとした月面の様子が捉えられているほか、両端に見える銀色の物体は「LEV-2」の左右の車輪だということです。

また画像の中央部分に見える灰色やピンクの線はデータが取得できなかった部分を示しているということで、原因を調査中としています。

画像の中央付近に円すい状の形をした物体

これまでの解析で、着陸直前の高度50メートル付近で2基のメインエンジンのうち、1基がなんらかの異常で失われたこともわかりました。

「SLIM」が高度50メートル付近から月面を撮影した画像の中央付近には、円すい状の形をした物体が写っています。

JAXAによりますと、着陸直前になんらかの理由で「SLIM」から落下したメインエンジンのノズル部分とみられるということで、今後、落下の原因については詳しく調査していくとしています。

この影響で想定とは異なる姿勢で月面に着陸したことから探査機に搭載された太陽電池に太陽光があたらず、現時点で発電できていませんが、今後、太陽光があたれば発電する可能性もあるということです。

開発責任者「ピンポイント着陸に関しては100点満点」

「SLIM」の開発責任者、JAXAの坂井真一郎プロジェクトマネージャは「ピンポイント着陸に関しては100点満点。限られた時間でやるべきことはやりきれた。引き続き復旧運用に向けて全力であたっていきたい」と話していました。

太陽電池パネル 西向きで着陸と考えられる

JAXAが公開した、探査機から送られてきたデータから考えられる、月面での姿勢のCGです。

「SLIM」の太陽電池パネルは着陸後は上を向く計画でしたが、画像では機体が傾いて太陽電池パネルは画像では右側にあたる西方向を向いていて、メインエンジンが上を向いた姿勢で最終的に着陸したと考えられるとしています。

月の日没 2/1ごろまでに太陽光当たれば

JAXAの担当者は月面は昼と夜が2週間ごとに繰り返しており、月の日没にあたる、2月1日ごろまでに太陽電池に太陽光が当たって電力が復旧すれば探査機が自動的に起動して運用を再開できる可能性があると説明しました。

電力が復旧すれば、当初、予定していた月面を撮影し、岩石の組成を調べて月の起源を探る観測を行う予定だということです。

SNSには 技術力の高さ 賞賛の投稿も

世界初の「ピンポイント着陸」に成功したとJAXAが発表したことを受け、SNSでは成功を祝う声や、月面に着陸した機体の姿を捉えた画像を見て技術力の高さを称賛する声が多く投稿されています。

「SLIMよかった!」
「着陸成功オメデト!」
「100m以内に着陸したんだ!すごいな!!」
「ほんとに月面着陸の話してる??ってレベルの精度だった…」

「日本のおもちゃの技術はすごい!」との声も

資料映像:砂の上を走行する様子

また、玩具メーカーの「タカラトミー」などがJAXAと共同開発した小型の探査ロボット「LEV-2」が撮影した、月面に着陸したSLIMの機体の画像についても投稿が相次ぎました。

「やべー、この写真は胸熱すぎる!」
「コロンっとひっくり返ってるSLIMの写真、可愛いな」
といった声のほか、「SORA-Q」とも呼ばれ市販もされている「LEV-2」について「日本のおもちゃの技術はすごい!」などと技術力の高さを称賛する声が出されていました。

SORA-Qは直径およそ8センチ、重さ250グラムほどのボールのような形をした小型で軽量なロボットです。

左右の車輪を動かし、砂の上も走行できます。

玩具メーカー「今回の偉業の一翼担えたこと 誇り」

「タカラトミー」は富山幹太郎会長のコメントを発表しました。

「SORA-Qの挑戦について」と題したコメントの中では、「月着陸実証機SLIMのピンポイント着陸というミッションにおいて、『LEV-2(SORA-Q)』が大きな貢献を果たせた事を大変嬉しく思います。これによりSORA-Qは月面に着陸、撮影した日本最初のロボットになりました」としています。

そのうえで「プロジェクトの成功が、世界中の子どもたちが自然科学に対する興味や関心を持つきっかけになることを願うと同時に、難しい事や新しい事に挑戦していく事の大切さと、夢と希望を与え自分自身の未来を創り出す力を信じるきっかけとなることを期待しています。創業100周年を迎えるこの記念の年に、生業である“おもちゃ”の技術が今回の偉業の一翼を担えたことを誇りとし、私たちはこれからも『アソビ発』の新たな挑戦を続けてまいります」としています。