4年前上回る大雨で平成以降5回目の浸水被害 千葉・茂原 台風被害1週間

大雨で冠水した市街地=8日午後、千葉県茂原市(斉藤佳憲撮影)
大雨で冠水した市街地=8日午後、千葉県茂原市(斉藤佳憲撮影)

台風13号の接近に伴う大雨で千葉県内各地に被害が生じてから、15日で1週間となる。多くの住宅が水につかった茂原市は、今回のほかにも平成以降で4回、浸水被害を経験している。県は4年前の令和元年の大雨を教訓に一宮川流域での治水対策を進めているが、当時を上回る大雨が短時間に降ったことで一宮川やその支流が氾濫し、広範囲の浸水被害がまた繰り返された。熊谷俊人知事が掲げる「『防災県』の確立」は道半ばだ。

大雨から一夜明けた9日。熊谷知事は、茂原市の田中豊彦市長とともに市内の被害状況を視察した。視察を終えた2人は記者団の取材に応じたが、この場で田中市長は「1メートル強、堤防をかさ上げしていれば、今回の水害をもう少し防げたんじゃないか。河口で難しい問題があるのは理解しているが、非常にショックを受けている」と語った。さらに、「(堤防のかさ上げを)県でできないのであれば市でやる用意があると提案してきた」と明かした。

これに対し、熊谷知事は「茂原市民にこれだけの影響が出ているので、気持ちは十分理解している」と述べた上で、「一宮川流域すべての被害を総合的に軽減するため、工事の内容や順番を分析して進めている。中流域をかさ上げすると、下流域に集中的に被害が出る」と理解を求めた。

令和元年の大雨による被害を踏まえ、一宮川を管理する県は翌2年、一宮川改修事務所を設立。茂原市内を含む中流域では3年秋以降、洪水時の水位を下げるために水が流れる面積を広くする工事や、護岸の勾配を急にして洪水を抑える工事に取り組んでおり、6年度末に完成する見込みだ。

氾濫を防ぐために水量が増加した河川の水をためる施設の整備にも取り組んでおり、同市内にある一宮川第2調節池では水をためる容量の増設を進めている。

これらの対策は途上だが、県が行ったシミュレーションによると、現時点で元年と同様の豪雨に見舞われても茂原市街地の浸水被害は抑えられるという。

しかし今回は、元年を大幅に上回る大雨が短時間に降った。元年のときは一宮川流域での最大の24時間降水量は長柄町の360ミリだったのに対し、今回の大雨では茂原市の407ミリ。一宮川改修事務所の担当者は「元年のときよりも短時間の雨量が多く、中流域に集中的に雨が降ったことが被害に影響しているのではないか」との見方を示す。

市によると、14日午前10時の時点で市内の床上浸水は206件、床下浸水は84件報告され、今後の調査でさらに増えるとみられる。

熊谷知事は13日の県議会の本会議で「4年前を上回る記録的な雨量により、新たに被害が生じた箇所もある」と述べ、治水対策を強化するとした。目標としている「全国屈指の防災県」の道のりは平坦(へいたん)ではない。(久原昂也)

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