ストーカー加害者に治療促すも…受診2割どまり
ストーカー事案の加害者に警察が精神科医による治療などを勧めた結果、受診したケースは2017年4~12月に2割強にとどまったことが25日、警察庁のまとめで分かった。取り組みを始めた16年の同期間の約25%を下回った。初めて行った追跡調査では治療を終えた加害者のつきまとい行為の再発はなく、同庁は医療関係者と連携して受診率向上を目指す。
警察庁は25日、被害の再発防止に向け、各都道府県警の担当者や医療関係者を交えた会議を東京都内で開いた。受診率の向上へ加害者に効果的なアプローチを進めるため出席した医師、臨床心理士らに協力を呼び掛けた。
治療やカウンセリングの対象はストーカー規制法に基づく禁止命令を受けたり、摘発されたりした加害者。全国の警察は16年度から地域の精神科医らに相談しながら、加害者に任意の自己負担による受診を働きかけている。
17年4~12月は522人に受診を勧めたが、7割が拒否。同意した162人のうち受診に至ったのは108人で、全体の20.7%だった。同意後に拒否に転じたケースもあり、24.9%だった前年同期を下回った。
16年度に受診を働きかけた405人を対象とした初の追跡調査では、治療を受けた93人のうち完了した33人は、つきまといなどの再発が17年9月までに確認されなかった。ただ治療中と治療が中断している間に計7人で再発があり、受診者の再発率は7.5%と未受診者の2.6%(312人中8人)を上回った。
この点について、警察庁の担当者は「(追跡調査は)母数が少なく、結果の評価は難しい」とする。その上で「加害当時は通常の精神状態ではないことが多く、根本的な心理に目を向けることが対策として必要。どのような人に働きかけるべきなのかなど、より効果的な方法を探りたい」と話している。
「加害者の自覚なし」4人に1人
つきまといをしていた当時は4人に1人が「ストーカー行為をしていると思っていない」――。静岡県警が16年6月~17年5月、加害者に被害者への気持ちを尋ねるアンケート調査(複数回答)をしたところ、加害者側には自覚のない状況が浮き彫りになった。
回答で最も多かったのは「元の関係に戻りたい」で41.3%。「自分を理解してほしい」(30.8%)、「憎しみや怒りがある」(26.9%)が続いた。
当時の自身の状況に関しては3人に1人が「寝付けない」「仕事(学業)に集中できない」「人間不信になった」などと回答。「自殺(自傷)を考えた」も2割いた。
調査は無記名で行い、県警がストーカー規制法に基づく警告などを行った117人のうち、104人が回答。男性が9割、女性が1割で、年代別では40代と20代がそれぞれ4分の1前後と多かった。被害者との関係は「交際相手(元交際相手を含む)」が半数近くを占め、「近隣・面識なし」も2割近くあった。