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NATS 西宮 尼崎 豊中 吹田
労働相談相互利用 温暖化対策
府県境をまたいで中核市が4市も並ぶ、全国でも珍しい地域の吹田市と豊中市、兵庫県尼崎市、西宮市が連携を強めている。SNSを活用して市長同士が密接につながりながら、地域内で共通する課題の解決やサービス向上に向けた事業を次々展開。一般の市よりも大きな権限を持つ中核市からさらに踏み込んで、人口170万人の地域としてのまちづくりを目指す。(阿部健)
頭文字ちなみ
昨年4月に吹田市が中核市に移行し、西から順に西宮、尼崎、豊中、吹田と四つの中核市が並ぶことから、吹田市の後藤圭二市長が連携を提案。頭文字にちなみ、「
今年3月には、各市でそれぞれ開設する賃金や労災、雇用保険などに関する無料の労働相談窓口を、4市の住民ならどこでも利用できるサービスを開始。7月下旬には、尼崎市役所に4市長が集まり、地球温暖化対策で連携する基本協定を締結し、9月に給食での食品ロス対策を広域で推進することなどについて、国や両府県に提言した。
今後、〈1〉阪急電鉄の駅などに傘を配置するシェアリングサービス〈2〉分解して環境に優しいバイオマスプラスチック製のごみ袋の共同購入〈3〉環境学習の教材の共通化――なども検討する。
市長らSNS活用
新型コロナウイルス対策では昨年から、4市長が無料通信アプリ「LINE」で連絡を取り合い、公共施設の休業などについて情報交換し、各市の取り組みの参考にしたという。今後も保健所の専門職員らの人事交流などを進める方針だ。
石井登志郎・西宮市長は「神戸よりも大阪に行く人が多い生活圏域に即して、様々な施策を考える」と話し、長内繁樹・豊中市長は「中核市四つのパワーはすごく大きく、連携を広げたい」と意義を強調した。
競争から協調へ
北大阪で隣接する豊中、吹田両市は、千里ニュータウンを抱えるなど地域の特徴が似通うため、先行して協力を拡大し、施設運営や事業の共同化といった具体策を相次いで打ち出している。
両市はいずれも交通の利便性がよく、住みやすい環境などで人気の高いエリア。後藤市長によると、以前は行政レベルでライバル意識が強く、連携は乏しかったが、生活圏や住民性、課題などに共通点が多いことから、まずは市長同士で関係を密にすることで、協力を拡大させたという。
昨年8月、地球温暖化対策の連携協定を締結。吹田市が始めた、環境に優しい電力会社に切り替える市民を募るキャンペーンを豊中市も取り入れた。温室効果ガスの削減目標などを掲げた共同宣言も今年2月に取りまとめた。
また、豊中市の千里ニュータウン内にある柿ノ木配水場を両市で管理し、来春から吹田市域にも配水して、吹田市の別の配水場を停止する覚書を交わした。
後藤市長は「以前は自治体間の競争に勝ち、他市と差別化することが持てはやされたが、住民のためには良いサービスは他市にも広げ、協力できることは協力すべきだ」と話している。
<中核市> 地方自治法に基づき、政令市以外で人口20万人以上の要件を満たす62市が指定されている。一般の市では都道府県が担う保健所の設置、保育所の認可、飲食店営業の許可といった事務を移譲して権限を強化している。住民に身近な市が担う行政サービスを増やし、地域の活力を高める狙いがある。