大分市の高崎山自然動物園で、B群の雌ザル「ヤケイ」がボスザルや上位の雄ザルを押しのけて序列1位に認定された。雌ザルが群れの頂点に君臨するのは1953年の開園以来初めて。30日、同園で「就任式」が行われた。

　同園によると、9歳のヤケイは人間なら30歳前後。もとはおとなしい母ザルだった。2月末にB群2位のマクレーンに求愛されてから様子が一変。3月、B群の雌ザル1位だった自らの母ビケイと親子げんかの末、「雌頭（がしら）」の座を奪った。尻尾を上げて威嚇するように歩いたり、木に登って枝を揺らしたりするなど雄のような行動を取り、職員も「ひとたびスイッチが入ると恐ろしくなる」と驚くほどの迫力を見せ始めた。

　B群では、人間なら約100歳のナンチュウ（推定31歳）が17代目ボスを7年間務めてきた。そのナンチュウも6月末、ヤケイにかみつかれた子ザルを助けようとしたところをねじ伏せられ、悲鳴を上げて逃げ回った。その後約1カ月間、ヤケイの方が優位にある行動が見られたという。

　同園では現在、B群（677匹）、C群（362匹）のサルが餌場に姿を見せている。雄社会は年功序列で、下克上は珍しい。雌が雄の力を利用してのし上がることはあったが、1位に就いた例はなかった。

　同園によると、上位の雄ザルの高齢化が一因と考えられるが、明確な理由は分からないという。職員の下村忠俊さん（47）は「現時点で群れに大きな影響は見られない。ヤケイがどの程度強さを維持できるのか注視したい」と話している。（井中恵仁）