クルマ三昧

消えゆく軽スポーツカー「S660」 ホンダならではの新世代の後継モデルを (1/2ページ)

木下隆之
木下隆之

 ホンダ「S660」が生産終了になる。誕生は2015年3月。本田技術研究所設立50周年を記念した社内の商品企画イベントで大賞に輝いた「軽自動車のミッドシップスポーツ案」が形になったという、稀有な生誕の逸話を持つS660が消滅するのである。

 電動化の波に消えゆくマイクロスポーツカー

 S660の開発責任者は、当時社内応募した26歳の青年が担った。若い発想を大切にしたいという、いかにもホンダらしい体制でS660の開発はスタート。それが当時、話題をさらったことは、いまも記憶に新しい。

 今回試乗したのは、そのファイナル仕様である。生産中止をアナウンスした直後に注文が殺到、残りの生産可能台数を超えてしまった。つまりは「即完」である。したがってもう新車を手にすることはできない。

 ホンダはカーボンニュートラル(脱炭素)に突き進み、そのために電動化を推し進めると明言。たった660ccとはいえ電気の力を借りぬスポーツカーを生産している余裕はない。しかも、ホンダが掲げる電動化路線にはハイブリッドも含まない。ホンダが生産するクルマはすべてEVか水素燃料自動車であり、ハイブリッドも含めて内燃機関のすべてが否定されているのだ。したがって、ピュアな軽スポーツカーが生き残れるはずもない。

 加えて、衝突安全や環境規制への対応など、新車開発には超えなければならないハードルが山積である。後継モデルの噂はまだ聞こえてこない。となると、この希少なミッドシップ軽という、世界でも類を見ないマイクロスポーツカーはこれで絶版になることが決定している。

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