1970年に沖縄県八重瀬町で発見された約2万2千年前の旧石器時代の人骨「港川人」は現代日本人の「広義の祖先」であることが、東邦大学などによるDNA解析によって分かった。研究の中心となった同大の水野文月助教(古代ゲノム学)は「旧石器時代人から現代日本人への(母系における)遺伝的多様性には連続性がある」としている。

港川人骨1号の標本(全身)=県立博物館・美術館

港川人の模型(県立博物館・美術館提供)

港川人骨1号の標本(全身)=県立博物館・美術館 港川人の模型(県立博物館・美術館提供)

 東邦大や総合研究大学院大学などの研究チームは、港川人(1号人骨)の右大腿(だいたい)骨をDNA分析用試料としてサンプリング。縄文・弥生時代の人骨と現代人約2千人分のデータと比較した。国内の旧石器時代の人骨でミトコンドリアDNAの塩基の全配列の解読に成功したのは初めて。論文は13日、科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。

 水野助教によると、1号人骨のミトコンドリア配列は、縄文時代人、弥生時代人、現代日本人だけでなく、中国等の東アジアの人々に直系でつながる系統がないことが示された。一方、広義では東アジアを含む「ハプログループM系統」の祖先集団(基層集団)に属していると説明し、遺伝的多様性の連続性を指摘した。

 また、今回の研究で旧石器、縄文、弥生の各時代における日本列島人集団のミトコンドリアDNAの系統と遺伝的多様性が判明し、現代日本列島人集団のミトコンドリアDNA全塩基配列を用いたシミュレーションによって、過去に「人口」の大きな増加が複数回起きていたことが明らかになったと説明した。

 水野助教は「今後は港川1号の核ゲノム解析を行う予定。また、他の旧石器時代人の解析による検証が待たれるところだと思う」とコメントした。