郡山市が復元に成功 久米正雄撮影などの映像フィルム

2021/05/20 08:37

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久米正雄
久米正雄

 郡山市ゆかりの作家久米正雄が撮影などした映像フィルムの修復に取り組んでいた市は、試験的な調査で復元に成功した。久米をはじめ、作家の田山花袋(かたい)、里見●(とん)らの姿が確認され、映像資料の乏しい大正末期から昭和初期の文士を捉えた貴重なフィルムとして歴史的価値が証明された。

 復元したフィルムは市が一九九八(平成十)年に久米の親族から購入した十八本のうちの二本。大正末期から昭和初期ごろに久米が撮影などしたとみられ、経年劣化によるフィルムの固着などで全容を確認できていなかった。

 映像には多くの文学者の姿が確認され、久米の交友範囲の広さや、当時の文豪のコミュニティーを示している。中でも、文壇の重鎮だった田山の映像資料が確認されるのは初めてとみられている。関係者は「日本近代文学史としての価値にとどまらず、当時の風俗研究の資料としても高い価値がある」としている。

 市は同じく全容を把握できていない十本の修復も検討する。残りの六本は劣化前の一九七五(昭和五十)年に焼き直しされた。

 修復、調査は文化と芸術の振興を目的とした協定を結んでいる横浜市立大と取り組んでいる。市は映像と詳細な調査結果を二十六日に公表する。

※●は弓ヘンに享


 くめ・まさお 1891(明治24)年、長野県上田町(現上田市)生まれ。父の自殺を機に、母方の実家がある郡山に移り住んだ。県立安積中(現安積高)から第一高等学校に進み、芥川龍之介、菊池寛らと出会い、本格的な作家活動に入った。近代化と農村の衰退を描いた戯曲「阿武隈心中」など郡山にまつわる作品も発表している。1952(昭和27)年に60歳で死去した。