NHKの受信料名簿が特殊詐欺で使われた背景をもっと調査せよ!

NHK放送センター(写真:西村尚己/アフロ)

NHKの受信料名簿が特殊詐欺に使われていた!?

 共同通信名古屋支社のスクープだ。

NHK受信料名簿を基に詐欺か 逮捕の元委託先社長供述

 NHKから受信料の集金業務を委託されていた会社の社長の男が、愛知県警に窃盗容疑で逮捕され「契約者の名簿に載っていた個人情報を基に特殊詐欺をした」と供述していることが8日、捜査関係者への取材で分かった。

 男はNHK名古屋放送局・中央営業センターから集金業務を受託していた名古屋市昭和区の藤井亮佑容疑者(29)で、同県長久手市の無職大浦悟被告(21)=窃盗罪で起訴=と共謀。

 大浦被告は9月27日に警察官に成り済まして同県内の80代の女性宅を訪れ、キャッシュカード1枚を盗んだとされる。

 藤井容疑者は名簿記載の NHK個人情報を大浦被告に携帯電話のメッセージで伝えていた。

出典:47ニュース(地方紙と共同通信のよんななニュース)

 悪い冗談のような話だ。

 最近、NHKで放送された「サギデカ」や毎日放送の「スカム」など特殊詐欺の犯罪集団を登場させるドラマを見ると、「オレオレ詐欺」などの特殊詐欺のグループにとって、電話をかける相手の「名簿」がいかに詳しいものなのかは詐欺を成功させるかどうかを左右する重大なものだ。たとえば、毎日放送の「スカム」では、主人公の若者が特殊詐欺の片棒を担ぐうちに訪問介護の仕事をしている母親から訪問先の老人たちの「名簿」の提供を受けるようになって詐欺の成功率がぐんと上がっていく場面がある。

名前、住所、年齢、家族構成・・・。

 載っている「名簿」の情報がくわしければくわしいほど、詐欺の電話をかけた際に相手を巧妙にだますことができる。

 そんな構造があることを一連のドラマは教えてくれた。

 それなのに、あろうことかNHKの受信料「名簿」が委託先を通じて外部に漏れ、それが詐欺に使われていたのだという。

 NHKはニュース番組の中でも「ストップ!詐欺被害 私は騙されない」というキャンペーン放送を続けている。

 それなのに、「名簿」が外に流出したのだ。

 NHKは記者会見で「名簿」は「家族構成」なども含んだ受信料契約者の個人情報を含むと明かし、それが委託先の会社を通じて漏れていたと説明したのだという。

 NHKの受信料をめぐっては、「NHKから国民を守る党」が7月の参議院議員選挙で初めて国会の議席を獲得したばかりだ。

 「NHKを見ていないのに受信料を払わなきゃいけないのはおかしい」とする同党の主張は、荒唐無稽なパフォーマンスが話題を呼んだが、一定の有権者から得票を得たことで初めて政党要件を満たす結果につながった。ということは現状の「受信料」に対し、なんらかの違和感を抱えている有権者がそれなりに存在することになる。

 そうした中で起きてしまった、受信料の「名簿」が特殊詐欺に使われてしまった事件。

 これはけっして小さな問題ではない。

受信料の名簿が外に流出しないように、NHKは厳重な管理をしているのか?

 今後、大きく問われることになる。

 他にもある。

年齢や家族構成まで載ってる「名簿」は受信料の支払いでそもそも必要なのか?

 そういう問題もあるはずだ。 

 純粋に受信料を徴収するための「名簿」ならば、公共放送の受信料を払っているのか、払っていないのかだけでいいはずではないか。

 筆者はそれ以外に、自分の家の家族構成や家族のメンバーの年齢まで、あるいはひょっとしてその他の情報までNHKの受信料名簿に載っているのであれば、それはとても気持ち悪いことだと感じてしまう。

 そんな個人情報までNHKに把握してもらいたくはない。

なぜ、そうした個人情報がNHKの受信料の「名簿」に載っているのか?

国会議員は国会で追及して説明するようにしてもらいたい。

今回のように「NHKから受信料の集金業務を委託されている会社」はそもそも全国に何社あるのか?

 今回はそうした会社の社長が逮捕されたことで発覚したわけだが、同じような仕事をしている他の会社には問題ないと言えるのか?

それらの会社の経営者の「身体検査」はきちんと行われているのか?

 今回の事件で、実際に受信料の「名簿」はどのように使われたのか?

 これは放送や新聞などのメディアに明らかにしてもらいたい。

 さらに・・・

NHKこそが得意とする調査報道を駆使して、

「クローズアップ現代」や「NHKスペシャル」などで放送してほしい。

 そうでもしない限り、今回のことで視聴者の間に広がった不信感を拭い去ることは難しい。