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鶏卵贈収賄「政策ゆがめず」 第三者委、透明性向上を―農水省会食265件

2021年06月03日09時34分

 吉川貴盛元農林水産相が鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)の前代表から現金500万円を受領したとして在宅起訴された贈収賄事件で、農水省は3日、同省が設置した第三者委員会(座長・井上宏弁護士)の報告書を公表した。報告書は、行政の透明性向上を求めたが、前代表から吉川元農水相への要望で「政策がゆがめられた事実は認められなかった」と結論付けた。
 農水省は同時に、アキタフーズ前代表から接待を受けていた幹部職員が処分された問題について、150人の職員を対象に行った追加調査の結果を発表。畜産事業者との会食が過去十年ほどで計265件、参加人数は延べ500人に上ることが判明した。ただ、利害関係者が費用を負担した違法な接待は確認できなかったとしている。
 第三者委の調査は、家畜を快適な環境で育てる「アニマルウェルフェア(動物福祉)」の国際基準案への対応が焦点となった。止まり木の設置などを義務付ける案は養鶏業者の負担が重いとして、前代表は吉川元農水相に反対するよう要請。農水省はその後、国際機関に反対意見を提出した。
 しかし、第三者委の報告書は「働き掛けにより政策方針の変更があったとは認められない」と指摘。前代表は日本政策金融公庫の融資条件緩和や補助事業の見直しも求めたが、いずれも「政策決定の公正性に関する問題点は認められなかった」とした。
 また、報告書は枝元真徹事務次官(当時生産局長)ら農水省幹部職員が前代表から飲食の接待を受けたことについて、「会食で政策に関する働き掛けはなかった」と認定。ただ、「自己負担せず政治家・利害関係者と会食すれば、行政をゆがめているのではないかとの疑念を招きかねないことに思いを致すべきだ」と強調した。
 その上で、報告書は「養鶏・鶏卵行政は政・官・業の距離が近く、政治や生産者からの働き掛けを受けやすい」として、意思決定の透明性を向上させる枠組みづくりを提言した。
 第三者委は弁護士や獣医師ら4人で構成。今年2月以降、農水省職員ら計約50人から聞き取り調査を実施した。ただ、今後の裁判に影響があるとして、吉川元農水相や前代表、両者と関係の深い西川公也元農水相には事情を聞いていない。

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