future×feature  vol. 1

Interview

『べっぴんさん』出演で強烈な印象を残した久保田紗友の“これまで”と“これから”

『べっぴんさん』出演で強烈な印象を残した久保田紗友の“これまで”と“これから”

多くのメディアが注目、これからの活躍が期待される俳優、女優を紹介する“future×feature”。記念すべき第1回に久保田紗友が登場!

NHK朝の連続テレビ小説『べっぴんさん』でヒロイン・すみれ(芳根京子)の娘・さくら(井頭愛海)の一つ年上で影響を与える五月役を演じた久保田紗友。2011年にソニー・ミュージックアーティスツが開催した、女優発掘オーディション「アクトレース」に合格し、「劇団ハーベスト」の立ち上げから劇団の一員として参加。高校進学を機に、家族とともに上京した。15年の年末にオンエアされたNTTドコモ「iPhone・iPad」CMへの起用を機に知名度が上昇し、昨年は7本のドラマと映画「疾風ロンド」への出演を果たし、朝ドラにも初参加。日増しに注目度が上がる中、今年の1月に17歳になったばかりの彼女の“これまで”と“これから”を聞いた。

取材・文 / 永堀アツオ 撮影:荻原大志


朝ドラ「べっぴんさん」で母親役を経験

朝ドラ「べっぴんさん」では母親になってましたね。

当たり前ですけど、今までにそんな体験したことないですし(笑)、自分のお母さんにもそういう話を聞いてこなかったので、いつか自分の子供ができるって考えるきっかけになりましたね。本当に想像でしかないんですけど、もしも自分に子供ができたらこういう感覚になるんだなっていうのを感じました。

それはどういう感覚でした? 

出産シーンの時に、生後11日目の赤ちゃんが現場に来たんですよ! 本当に可愛かったし、抱っこしてると、実際に自分のお腹から出て来た感覚になったんですよね。なんというか……生命って、本当に神秘的だなって改めて思いました。そのあとの放送では、1年9ヶ月の子を抱っこしたりしてるんですけど、生まれてくると、きっとそれまでの苦労は全部忘れるくらい幸せなんだろうなって思ったりもして。

出産シーンも初経験ですよね。

初めてです。出産シーンを撮影した当時は16歳だったので、16歳でそういう体験ができることをすごく誇りに思いました。スタッフの方や助産師さんをやられている方に赤ちゃんが生まれてくるときのことを聞いたり、自分の母親に私が生まれたときの感覚を聞いて。自分の中でそれを忠実に再現できるようにと思いながら現場に入ったんですけど、テストで、『それじゃ、生まれない』って言われたんですね。もっと力まないといけないのかと思って。次の日は撮影がなかったので、全部出し切ろうと思って、力いっぱいに叫んで、踏ん張って、やりました。すごく大変でしたね(笑)。

(笑)お母さんとはどんな話をしたんですか?

私の母親の話はそんなに参考にならなかったんですよね(笑)。自分が太っていくのが嫌だったらしくて、『早く生まれて欲しかった』っていう話しかしてくれなくて。なんでそんな話しかないんだろう?って思ったんですけど(笑)、『どんな痛みだった?』って聞いたら、『生まれた瞬間に痛みを忘れるから全然覚えてない』って言ってて。そこまでの喜びがあるんだなって思ったし、どんなに周りの子供が可愛くても、自分の子供が一番可愛く見えるって言ってたんですね。そうなんだなと思って、駅や電車に乗ってる時、小さい子供がいたら、その親子を観察したりするようにはなりました。

主役がやりたいと思っていなかった幼少期

今、生まれた時の話をお伺いしたので、改めて幼少期からここまでを振り返ってもらえますか?

小さい頃から『テレビに出たい』っていう思いは自分の中ではあったんですけど、周りには言わずにずっと秘めていたらしくて。テレビに出たいと思うような子って、みんな歌うことやダンスが好きじゃないですか。でも、私は、保育園や幼稚園のお遊戯会の映像を見たら、一番端っこで困った顔をして突っ立ってて。

ステージの真ん中に立つ主役がやりたいっていう子ではなかった?

なかったみたいですね。小学校2年生の時の学芸会でも、主役じゃなくて、トンビの役とかやってました(笑)。山と山が対決する物語で、そこにトンビが飛んで来て、セリフを言うっていう。今でも覚えてるんですけど、<東の山さ〜ん、西の山さ〜ん>っていうセリフ1つしかなかったんですね。そんな役しかやってなかったです。

それでも、心の中ではいつかテレビに出たいと思ってた?

お姉ちゃんが普段から活発で、テレビを見ながら歌ったり踊ったりしてて。物心つく前からそんな姿を見ていた影響もあると思うんですけど、本当にぼんやりとテレビに出てみたいっていう興味はあったんですよね。その思いを誰にも言ってなかったんですが…。自分では覚えてないんですけど、6歳の時にお母さんに突然、『テレビに出たい』って言ったらしくて。それまでは本当に無口で、心配されていたくらいだったので、お母さんはびっくりしたって言ってました。

小学4年生から通ったスクールで出会った仲間と描いた夢

その後、小学4年生の時に地元のミュージカルスクールに通うようになって。

ダンスや歌をやり始めたんですけど、その時はまだ、全然何も考えずにやってましたね。ただ、地元で同じような夢を見ている子と出会えたのが大きくて。今も北海道に帰ったら会うし、昨日もそのスクールで出会った子と連絡をとっていたので、今も、深いつながりがあるというか、自分の夢も応援してくれるような仲間と出会えたなと思います。

当時、歌やダンス、お芝居を学ぶ中で、お芝居を選んだのはどうしてですか?

その時も、友達と『どれが好き?』っていう話をした時に、はっきりとすぐにこれが好きだって答えられなくて。歌も好きだし、ダンスも好きだし、お芝居も好きだなっていう感じでしたね。本当にぼんやりしてたと思います。女優になりたいって思ったのは、今の事務所に入ってから明確になった感じでした。

そんな中、11歳でSMA主催の女優発掘オーディション「アクトレース」に参加したのはどうしてですか?

自分の夢だった芸能界に入れるっていう思いで参加しました。すごく緊張してて、合格した時は、あんまり実感がわかなくて。東京に通い始めてから、<劇団ハーベスト>が結成されたんですけど、メンバーと一緒にレッスンをして、旗揚げ公演をやって……。そのときは初めてのことだらけで、みんな必死にやっていて。舞台の稽古をしているときに、すごく楽しいなと思って。『私はこれを続けていくんだ!』っていう覚悟を決めました。

旗揚げ公演が12歳の春ですよね。もうそこで、「私は女優をやっていくんだ!」っていう覚悟を決めた? 覚悟という言葉に重みを感じます。

決めました。自分ができるのはこれしかないなって思いました。もちろん、芝居の中で踊ったり、歌ったりする機会があれば、やりたいなっていう思いもあります。

翌年の初主演ドラマ「神様のイタズラ」ではまさに主題歌も歌ってますよね。

そうですね。主題歌を歌うっていうことを知ったのは、現場に入った後で。映像のお仕事をここまでしっかりやるのは初めてに近い状態だったので、当時の細かい思い出というか、記憶はそこまで覚えてなくて。ただ目の前にあることを毎日、必死にやっていたっていう感じでしたね。

初主演作が一人5役という難しい役どころでした。ヤクザや中学生男子、それにインコにもなっていて。……今、思えば、トンビを演じた経験が生かされてる?

あはははは。確かに。実際は全然違う役柄だったんですけど、なんか繋がってますね。あの時は、周りの方に助けていただいてばかりでした。でも、お仕事ができるっていうこと自体が嬉しかったし、幸せに感じました。私、忙しい方が好きなんですよ。暇な時間があんまり好きじゃないです。

演じることは、私とは違うもう一人が自分に味方としてついてきてくれている感覚

急なお休みができたら何をします?

映画を観に行ったりとか、友達と会ったりしますね。でも、現場にいる方が好きです。

どうしてそんなに芝居というか。お仕事が好きなんだろう。

なんでなんでしょうね。最初は、目の前のことに必死なだけだったんですよ。最近、思うのは、仕事をしてる時って、普段の自分が考えなきゃいけないことを全部忘れて、仕事に没頭できるじゃないですか。それが楽しいのもあるし、演じるとなると、役でいられるので、私とは違うもう一人が自分に味方としてついてきてくれているような気持ちになるので、心強くなるんですよね。だから、作品が終わるごとに、その役の存在が自分の中からいなくなると、ちょっと寂しいなって思ったりします。

無我夢中な時期を過ぎて、役と一緒にいると思えるようになったのはいつ頃ですか?

本当に最近ですね。去年……15年の春に上京してきて、本格的に活動し始めた頃からです。

上京することに不安はなかったですか?

それまでずっと北海道から通っていたので、私は早く上京したかったんですよね。中学の卒業式の時に、寂しくなるかなって思ったけど、全然寂しくなくて。むしろ、すっごい前向きな気持ちで東京に来ることができました。家族も一緒についてきてくれたっていうのもあるんですけど、不安は特に感じなかった。もっと活動の幅が広がるなって思うと、すごくやる気に満ち溢れてましたね。

その年の12月にドコモのCMがオンエアされ話題になりました。

上京する直前から上京したあとの夏まで、オーディションでギリギリまで行ってダメだったっていうことが続いていて。自分の中でどうしたらいいんだろうっていう悩みがあったんですよ。そんな時にちょうど、ドコモのCMのオーディションを受けて。あ、今日もダメだったかなと思って、一人で帰ってたんです。だから、決まった時は本当に、全然実感がわかなかったですけど、オンエアされた後にいろんな現場で『CM見たよ』って言われるようになって初めて、嬉しいっていう気持ちになって。それまでに何度かオーディションに参加しては落ちてきたけど、続ける意味があるなって思いました。

作品に参加できる幸せと感謝

年が明けて2016年に入ってからは飛躍的に活動の場が広がりましたよね。「世にも奇妙な物語」や「運命に、似た恋」を始め、多数のドラマに出演しました。

ずっと役と向き合ってた1年だったので、常に誰かと一緒にいる感覚でしたね。だから、一人でいると……。

一人になる時間はなくてもいい?

スイッチのオン/オフはあるし、仕事が終わった後の時間は、好きなことしたりできるんですけど、頭の片隅に役があると落ち着くんですよね。いろんな作品に関わらせていただいているっていう充実感というか、幸せと感謝がずっとありました。

その仕事に対する貪欲さはどこから来るんですかね。じゃあ、これまで辛かった、苦しかったということはないですか?

うーん……現場で感じたことはないですね。オーディションでギリギリまで残って、やっぱりダメだったっていう時は悔しさを感じますね。あとは、その役の気持ちがわからなかったりすると苦しいけど、それはやりがいのある苦しさっていう感じですね。

では、逆にこれまでで一番嬉しかったことを挙げるとすると?

去年、初めて東京国際映画祭に出させていただいて、まさか、こんなに早くレッドカーペットを歩ける日が来るんだ!って思ったことが思い出として、すごく鮮明に残ってます。あとは、やっぱり、朝ドラに出ることが夢の1つでもあって。2016年が始まった時は、まさか出演できると思っていなかったので、年の最後に朝ドラの仕事を、山本五月という役をいただいた時は、この役と2016年が終われるっていう喜びがありました。

本当に演じることというか、お仕事が好きなんですね。

はい! 好きなんです(笑)。

(笑)自分が想像していたよりは早いチャンスでした?

そうですね。でも、本当に、思ってることって実現するんだなって感じました。朝ドラは、高校を卒業しないとヒロインのオーディションは受けられないので、10代のうちにチャンスがあればいいなと思っていて。いつかヒロインをやりたいけど、まだまだだなって思っていたので、心の準備ができてなかったんですよね。

ヒロインのオーディションを受ける前に現場が見れたことは貴重な経験になりましたね。

はい。すごく誇りに思っています。

五月として過ごした貴重な時間

2016年末から一緒にいた五月はどんな女の子でした?

人を思う優しさが強い、本当に大好きな子でした。常に自分のことよりも誰かのことを考えていて。優しいっていろんな種類があると思うんですけど、自分の望みや幸せを放り投げてでも、常に誰かのために動ける彼女は、私の中でいちばん優しい子だなって思うんです。だから、五月の強さは見習いたいなと思いました。

五月を演じる上で、役作りで何か心がけたことはありますか?

私のおばあちゃんの年代の話だったので、おばあちゃんの話を聞いたんです。おばあちゃんはすごく物腰が柔らかくて、いつもけろっとしているので、何も考えてないように見えてたんですよ。でも、実際に話を聞くと、小さい頃に戦争を体験しているし、すごく大変な思いをして今まで生きてきたんだなっていうことを知って。その話をさくら役の井頭愛海ちゃんとスタッフさんと共有しつつ、あとは少しでも大人っぽく見えるように、ママ役の江波さんの仕草をみて、常に尊敬しながら演じていました。

特に印象に残ってるシーンはありますか? ドア越しの二郎ちゃん(林遣都)とのシーンは泣けました。

そのシーンは、台本を読んでるだけですごい苦しくなりましたね。他の方がリハーサルをしていて待っている時に読んだんですけど、目を通しているだけなのに泣けてきちゃって。今は感情移入して読んだらダメだと思って、初見は無心で、何も考えずに読んでたんですけど、それでも目頭が熱くなっちゃいました。あとは、個人的に<絶対に忘れへん。こんなに優しくしてもらえたこと>って泣くシーンが印象に残っています。人の優しさに触れて、こんな気持ちがブワッて溢れて来るものなんだなって。嬉しくて泣けるんだって思いましたね。

朝ドラの現場はどんな雰囲気でした?

歴史のあるドラマなので、結構、厳しいのかなって思ってたんですよ。でも、実際に入ってみるとすごくアットホームで。関西だったので、皆さんノリが良くて、毎日、笑っている現場でした。私は、劇中でも一緒にいることが多い愛海ちゃんとずっと一緒にいました。休憩中もおしゃべりしたり、学校の他愛もない話をしたりして。本当に妹みたいな存在で、お昼も一緒に食べに行ったりしてました。

女優として生きていく覚悟

二郎(林遣都)と五月が出ていた時は、夢もテーマになってましたよね。大人になると忘れてしまいがちな夢や憧れ、やりたいことや好きなことがあるっていう…。

そうですね。私にとっては、夢は1つしかなくて。それは、この仕事でご飯を食べていきたいっていうことなんですけど。

ご飯を食べていきたいっていうのがすごいですよね(笑)。華やかな女優という仕事に憧れるというよりは、生涯の仕事として考えてる。でも、女優という夢はもう叶っているんじゃないですか?

いや、まだ叶ってないです。たぶん、一生、自分の仕事に満足するっていうのはないと思うんですよね。難しいからこそ、もっとやりたいもっとやりたいってなるんだなって思います。もちろん、今、いろんな役をやらせていただいているので、責任感は持ってるんですけど、自分で女優って言うのは、どこか申し訳ない気がしちゃいます。まだ学生でもあるので、高校を卒業したら変わるのかなって思いますね。

食べていく職業としては変わらないと思うんですが、今の夢じゃなく、目標を聞いてもいいですか?

1作品として同じ人に見えないような、芝居の振り幅が大きくて、自分にしかない味や雰囲気をしっかりと持ってる人になりたいです。

憧れの女優さんはいますか?

二階堂ふみさんです。二階堂さんにしかできない芝居や空気感、存在感がすごいなって思います。事務所の先輩なのでご挨拶させていただいたことがあるんですけど、実際に会ってみると、気さくに挨拶してくださるんですよね。でも、作品を見ているだけだと、闇を持った役もやっていたりして、私生活が全然想像できないじゃないですか。私もいつかそういう人になりたいし、役者冥利につきるような役をもっとやっていって、胸を張って『女優です!』って言えるように頑張りたいなと思います。

久保田 紗友(くぼた さゆ)

生年月日:2000年1月18日
出身地:北海道
身長:157㎝
体重:43㎏
靴:23.5㎝
趣味:DVD&音楽鑑賞
特技:ダンス、料理
オフィシャルサイト


4月8日(土)からスタートする土曜ドラマ「4号警備」に出演が決定。

【番組情報】
放送予定:NHK総合 毎週土曜 午後8時15分から8時43分
放送日時:2017年4月8日(土)放送開始 <連続7回>
作:宇田学(「ボーダーライン」「99.9-刑事専門弁護士-」)
出演:窪田正孝 北村一輝 阿部純子 濱田マリ 高木渉 神戸浩 久保田紗友
麿赤兒 木村多江 片岡鶴太郎 ほか


「べっぴんさん」スピンオフが5月6日(土)に放送決定。

【番組情報】
番組名:忘れられない忘れ物 ~ヨーソローの1日~
放送予定:BSプレミアム 5月6日(土)午後7時00分から7時59分
作:坂口理子
脚本監修:渡辺千穂
音楽・演奏:世武裕子
出演:芳根京子 谷村美月 百田夏菜子 土村芳 田中要次 山村紅葉 三倉茉奈 松下優也 古川雄輝 森永悠希 久保田紗友 宮田圭子 ほか


映画『ハローグッバイ』の情報はこちらhttps://www.facebook.com/HelloGoodbyeMovie/

『「春をみつめる」篇 SHORT MOVIE|アキュビュー® で変わろう』公開中!

関連書籍『べっぴんさん』

NHK連続テレビ小説 べっぴんさん 上
渡辺千穂 (作)
中川千英子 (ノベライズ)
NHK出版
vol.1
vol.2