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絵筆を使わず手や指に直接絵の具をつけて描く独特のスタイルで海外を中心に評価が高まっている芸術家のロッカクアヤコさん(38)=千葉市出身。新型コロナウイルスの感染拡大で、世界を飛び回りながら制作してきた生活は一変したが、「自分の力を試す期間」と捉え、約半年間で160点以上の新作を描き上げた。「こんな時代だからこそ、ポジティブなエネルギーを込めて絵を描きたい」と話す。
本格的に絵を描き始めたのは2001年。03、06年に世界的な芸術家の村上隆氏が主宰するアートイベントで入賞。同年、オランダのギャラリーに所属した。10年にドイツ・ベルリンに拠点を置いてからは海外を中心にして制作に打ち込む。18年からはポルトガルの古都ポルトに移住し、約2カ月おきにオランダのアムステルダム、ベルリン、東京などを飛び回ってきた。
自身初となる国内での大規模な企画展を県立美術館(千葉市中央区)で行う準備のため、20年2月に帰国した。当時、欧州では新型コロナの感染が広がり始めていた。日本では大規模イベントの自粛要請が出され、3月に参加予定だった東京都内での展覧会は中止された。
多くの国への渡航中止勧告が出された。「いつヨーロッパに戻れるのか」「これまでは飛行機で別の国に行って新しい空気を入れることができたのに」と一抹の不安が頭をよぎった。一つのところに長期間とどまるのは、本格的に活動を始めてからなかったことだった。
ただ、「私には描くことしかできない。どうせなら自分の力を試す時間にしたい」。県立美術館での企画展は、これまでの作品を展示する回顧展ではなく、未発表の新作を中心とすることを決め、3月から都内のアトリエにこもった。
日本で制作する利点を生かし、伝統工芸品「静岡挽物(ひきもの)」職人が作った一輪挿しに絵を描くなど、新たな挑戦を続け、約半年で160点以上の作品を制作した。「これほどたくさんの作品を描き上げたことはない」と振り返る。
制作中は「見る人に少しでも明るい気持ちになってほしい」という思いだった。美術を志したのは内向的だった少女時代への反発でもあった。高校まではクラスメートの輪に入ることが難しかった。卒業後、デザイン専門学校に通い始めて少しずつ光が見えた。表現したかった明るい自分が、キャンバスを通じてならば伝えられることに気づいた。それからは「ポジティブなエネルギー」という思いを込めて描いている。
県立美術館での企画展は、一つの展示室を利用する予定だったが、作品を展示しきれないため、もう1室追加され、20年10月31日に始まった。企画展のタイトルは「魔法の手」。メインの展示室に入って目に飛び込んでくるのは、段ボールを組み合わせて作った高さ5メートル、幅7メートルのおにぎり型の巨大な作品。色彩の海の中で大きな手を広げた少女が圧倒的な存在感を示す「Magic Hand」。周囲にも明るい色遣いの作品が並び、この空間にはコロナ禍で社会を覆う閉塞(へいそく)感がない。同館によると、企画展開催中の来場者数は例年を大きく上回る見通しだという。
21年はドイツとオランダで企画展を計画しているが、新型コロナの影響でオランダでの日程は決まっていない。「ピンチはどんな時でも常にどこかにあるもので、今できることの中で一番面白いことに挑戦していきたい」。企画展は11日まで開かれている。【秋丸生帆】
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