劇団スーパー・エキセントリック・シアター「Mr．カミナリ」乃木坂46 桜井玲香×衛藤美彩

台詞の掛け合いが楽しい！

──『Mr.カミナリ』の稽古が始まって１週間が経ちました。SETのみなさんと一緒に芝居をしてみての感想は？

桜井玲香： 私たちふたりはもう緊張してしまって、なかなか自分たちから話しかけることができなかったんですけど、みなさんすごくやさしくて、みなさんのほうから来てくださって。すごく温かい現場です。それでもまだ、緊張はしてるんですけど。

衛藤美彩： 初日の顔合せで本読みをしたときなんて、もうガチガチで。

桜井： 最近になってちょっとは楽しめるようになってきたかなって。

衛藤： 昨日だよね？

桜井： そう！昨日!!

衛藤： 私たち、乃木坂46として３年間ずっと一緒にいて、同じことをやってきたからか、ここでも気持ちがシンクロしていて。それで、昨日はすごく楽しめたなと思ったので、稽古が終わったあと玲香に「今日はどうだった？」って聞いたら、「楽しかった」って返ってきたんです。“緊張”から“楽しい”に変わるタイミング一緒でした(笑)。

──昨日の稽古に、それまでと違う何かがあったんでしょうか。

桜井： 今まで稽古してきたなかで、いちばんコメディ要素が強い場面だったからかな。

衛藤： 三宅(裕司)さんの世界全開っていう感じのお話のところだったもんね。

桜井： みんなの台詞の掛け合いが面白くて。

衛藤： そう。それまではひとりでしゃべってるところが多くて、みなさんとワーッと掛け合えたのが初めてだったから。それで楽しくなったんだと思います。

おじさまたちをメロメロにするんです(笑)

──ダブルキャストでおふたりが演じるのは、ヒロインの七音(どれみ)という女性です。どんな人だと捉えてますか？

桜井： 九州から東京の小学校に赴任してきたばかりの新任の音楽教師なんですけど、この物語の近未来の世界では歌うことが禁止されてて。「こんなにすばらしいものなのに、なんで教えちゃいけないの？」って疑問に思いつつ、反発できずに、自分をグッと抑えてるんですね。だから、すごく芯の通った子だと思ってます。

衛藤： あと、三宅さんや小倉(久寛)さんたちが演じる「Mr.カミナリ」さんたちと関わっていくことで、七音は歌の力を改めて学んでいくので。三宅さんたちから演技を学んでいる私たち自身と重なるので、共感できる部分も多いです。とくに私は、歌が好きで、歌手になりたくて大分から上京してきたので、初めての舞台で歌が大好きだという役を演じることは、運命だなと思ってます！

──サイボーグである「Mr.カミナリ」さんたちとは、どんなふうに関わっていくことになるんですか？

衛藤： 七音は少し天然で小悪魔なところがあって、知らない間に、「Mr.カミナリ」のおじさまたちをメロメロにさせちゃうんですよね(笑)。

桜井： そうなんです。だけど、メロメロ光線みたいなのを出すのが(笑)、すごく難しくて。

衛藤： ねぇ。鼻につくかわいさじゃなくて、無邪気なかわいらしさが出せたらいいなと思うんですけど。

桜井： 普段、ぶりっ子をしてみんなに「キモッ」と言われるキャラをやってる私には、もっと難しい(笑)。

衛藤： ほら、あのぶりっ子の顔、ここで見せてあげてよ(笑)。

桜井： やらないよ(笑)。ってふうに、いつもみんなに突っ込まれてるんです。だから、おじさまたちに本気で「かわいい！」って言われる役は、くすぐったいというか、「嘘でしょ!?」って思っちゃいます(笑)。

衛藤： でも、ここで嫌味のない小悪魔を追求できたら、これからのアイドル生活にも役に立つかなって思ってます(笑)。

──ちなみに、「Mr.カミナリ」は、“昭和のカミナリ親父”の働きをしてくれるサイボーグですが、そんな叱ってくれる存在は必要だと思います？

衛藤： 大分の地元には、“カミナリおばさま”がいたんです(笑)。今思うと、子どもたちを厳しい目で見てくれるやさしさのある人なんですけど、小学生の私にとってはめちゃくちゃ怖かったので、その家の前を避けていつも遠回りして帰ってました。でも、親以外の人に怒られるっていうのは、すごく大事な経験だったなって思います。

桜井： 私はそんな近所付き合いはなかったから、うらやましい。そもそも人の子を叱るなんて、愛がないとできないことじゃないですか。そんな人がいてくれること自体が貴重ですよね。

衛藤： そう思う。私もそういう愛のある大人になりたいです！

三宅さんがすべて笑いにしてくれる

――SETは＜ミュージカル・アクション・コメディー＞を追求してきた劇団。先ほども台詞の掛け合いが楽しいとおっしゃっていましたが、SETの芝居の面白さもつかめてきました？

桜井： 掛け合いのテンポ感が上手く出せたときは、本当に面白いです。

衛藤： みなさんのテンポに乗っかって、頑張ってついていけば、楽しくなってくる。本当に会話しているみたいな感じになって。

桜井： そうそう。そもそも最初に、SETはアドリブの多い劇団ですっていうふうに聞かされてて、「私、アドリブなんか仕掛けられない……」って思ってたんですね。でも、アドリブといっても、突然変なことをするっていうことじゃなくて、演技のなかで本当に会話をしているから、毎回、微妙に言葉が変わったりしているっていうことなんだなと思って。

衛藤： 私、実は、アドリブとかお笑いというものに、ちょっと苦手意識を持って稽古に入ったんですね。というのも、乃木坂46でも１年に１回、『16人のプリンシパル』というオリジナルの舞台をやってるんですけど、今年2014年のテーマが“お笑い”で、かなり苦戦しまして(笑)。だけど、この稽古場でその苦手意識もなくなりそうです。もう、何をやっても三宅さんが全部拾ってくださって、笑いにしてくださるので。安心して、恐れずに稽古できるなって。

桜井： 三宅さん、偉大すぎるよね。

衛藤： うん。あの、七音が気絶するシーンがあるじゃない？私、気絶するのがすごくヘタクｿで(笑)、「(棒読みふうに)キャー！あ～れ～！」みたいな感じになっちゃうんですけど、それも、初めてやったときに三宅さんが「えらいゆっくり倒れるな」って言って笑いにしてくれたんですよ。だから、どんな倒れ方をしてもいいよねって思えて。あそこは毎公演、ちょっと遊べるよね(笑)｡

桜井： アハハハハハ！

衛藤： ふざけすぎるのもよくないと思うんですけど、三宅さんがいてくれるから。

桜井： うん。頼っちゃっていいと思う！

――ミュージカルという音楽の部分でも、乃木坂46でやっている音楽とは違う発見もありますか。

桜井： 同じところがまったくないぐらいです(笑)。

衛藤： まず声の出し方が違うよね。喉を使わないで歌う練習を、今頑張ってるところです。

桜井： しっかり身に付けて、新しい武器になるといいなって思います。

――稽古も見学させていただきましたが、みなさんのハーモニーがすでにとても美しかったですね。

衛藤： はい。みんなで歌うシーンがたくさんあるので、そのハーモニーがこのお芝居の大きな魅力だと思います。

SETファンにも、乃木坂ファンにも

――今はまさに、稽古でいろんなことを吸収している最中ですね。本番の舞台に立つときには、どんな自分になれていたらいいなと思いますか。

衛藤： たぶん、SETのファンのみなさんも、私たち乃木坂46のファンのみなさんも、観に来てくださる舞台になると思うんですけど、両方に受け入れてもらえるようなものをお見せできたらなと思うんです。乃木坂ファンの方には、いつもの私たちじゃなく、まず役として見えて、そのなかにふっと、「やっぱり玲香だ」「やっぱりみさみさだ」っていうところも感じてもらえたらいいなと思いますし。SETファンのみなさんには、アイドルとのコラボレーションを受け入れてもらえるのか不安なんですけど。でも、アイドルもすごいなって思ってもらえたらうれしいですね。

桜井： 私はとにかく、のびのびやっている自分を見てもらいたいなって思っているんです。乃木坂でやっている『16人のプリンシパル』は、毎日役が変わるのでいつも切羽詰まった状態なんですけど(笑)、今回はひとつの役を突き詰めていけるという点でも、のびのび演じられると思いますし。実際に今、自分としては、SETのみなさんと本当に楽しく演技ができているなって思うので。私が演技をやりたがっていたことを知ってくださっている乃木坂ファンの方にも、初めて私を見る方にも、「この子本当に演技が好きなんだな。楽しそうにやってるな」と思ってもらえるような芝居ができるように、頑張りたいなと思います。

(稽古場リポ)

真剣に笑いを生み出す稽古場
休憩の合間にお邪魔したというのに、稽古場は熱気であふれていた。どうやら、この直線に稽古した場面を、それぞれに復習しているようだ。ダブルキャストでヒロインを演じる乃木坂46の桜井玲香と衛藤美彩も、すぐに目に飛び込んできた。共演者の野添義弘がアドバイスしてくれる立ち方を、何度も繰り返して体に叩き込んでいる。稽古を再開する前には三宅裕司から台詞の変更が告げられた。が、次にはまた変更される。どうすれば面白くなるのか、その試行錯誤ぶりはハンパない。芝居のなかでも三宅が率先して変化を試みては、笑いが起こる。桜井と衛藤にとって、刺激的な創作の現場になっているに違いない。

取材・文：大内弓子