韓国大統領側近の不正疑惑 釜山市長室を強制捜査

韓国大統領側近の不正疑惑 釜山市長室を強制捜査
韓国のムン・ジェイン(文在寅)大統領の側近をめぐり、この側近の娘が不正に大学に入学した疑惑のほか、不正に奨学金を受け取った疑惑もとりざたされていて、検察は29日、関係先としてプサン(釜山)市長の執務室を強制捜査しました。
韓国のムン・ジェイン大統領が法相に起用すると発表したチョ・グク氏をめぐっては、娘を名門のコリョ(高麗)大学に不正入学させた疑惑が持ち上り、検察が強制捜査に乗り出しています。

さらに、同じ娘がプサン大学の医療専門大学院では、奨学金を不正に受け取っていた疑惑が取り沙汰されていて、検察は29日午前、関係先の一つとしてプサンのオ・ゴドン(呉巨敦)市長の執務室を強制捜査しました。

オ市長は与党の元国会議員で、過去にはノ・ムヒョン(盧武鉉)政権で閣僚を務め、大統領府の高官だったムン大統領とともに当時の政権を支えました。

検察によりますと、奨学金の支給を決定した大学院の教授が、その後、オ市長によって市立病院の院長に任命されていて奨学金の支給との関連を調べているということです。

オ市長は29日、フェイスブックに「真実は明らかになる。市民の皆さんは心配しないでほしい」と投稿し、疑惑との関連を否定しました。

28日夜ソウルでは、大学生たちがチョ氏を批判する集会を開くなどムン政権への風当たりが強まっていて、今後の政権運営に影響を及ぼす可能性も指摘されています。

チョ・グク(※曹※国 ※2本の縦線が1本※)

チョ氏をめぐる疑惑とは

ムン大統領が新しい法相に起用すると発表したチョ氏をめぐっては、税金を逃れるために家族ぐるみで不透明な投資や資産隠しを行っていたとされるほか、娘が不正に大学に入学したり奨学金を受給したりしていたとされる疑惑が相次いで浮上しています。

とりわけ、厳しい学歴社会の韓国で若者を中心に批判が強まっているのが、チョ氏の娘に関する疑惑です。

韓国メディアによりますと、チョ氏の娘は高校生だった2008年に発表された医学論文で、共同執筆者の筆頭に名前を連ねていたことが明らかになり、この医学論文を業績として内申点を稼ぎ、2010年、名門のコリョ(高麗)大学に筆記試験なしで合格したということです。

また、この娘はその後、チョ氏の出身地にあるプサン大学の医療専門大学院に進み、在学中、3年間にわたって奨学金を不正に受け取っていた疑惑も取り沙汰されていて、韓国の検察が強制捜査に乗り出しています。

これに関連して、保守系の最大野党・自由韓国党のナ・ギョンウォン院内代表は、「祖国」という韓国語の発音が「チョグク」であることから「彼らのチョ・グクを守るため、われわれの祖国を捨てた」と述べ、ムン政権が側近のチョ氏をめぐる疑惑から国民の目をそらすために日本との軍事情報包括保護協定=「GSOMIA」の破棄を決めたと批判していました。

チョ・グク氏とは

ムン大統領が新しい法相に起用すると発表したチョ氏は、ムン大統領の信頼が厚い最側近の1人です。

チョ氏は、南部プサン出身の54歳。

名門ソウル大学の法学部を卒業し、大学院で博士号をとったあと、母校で教授として教べんをとりました。

そのかたわら、民主化運動に積極的に参加し、端正な顔だちと180センチの長身もあって、革新系の論客として若者を中心に人気を集めました。

おととし5月、ムン政権が発足すると、ソウル大学教授だったチョ氏は、大統領府で司法機関を統括する民情首席補佐官に就任しました。

民情首席補佐官は、かつてノ・ムヒョン政権でムン大統領も務めた重要ポストでチョ氏は先月まで2年余りにわたって大統領をそばで支えました。

チョ氏は、韓国への輸出管理を強化した日本政府を、インターネット上で厳しく批判し、「反撃」を呼びかけるなど、対日強硬派の一面も見せました。

ムン大統領は、みずからの公約である検察改革を進めるため、今月9日、ソウル大学教授に戻っていたチョ氏を新しい法相に起用すると発表し、2022年の大統領選挙に向けて「事実上の後継指名だ」とする見方も出ていました。